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レバノンの痛みが増す中、モルヒネが手に入らず苦しむがん患者たち

2021年3月の世界保健機関(WHO)の報告によれば、レバノンでは過去5年間に28764人のがん患者の数が記録されている。(ロイター/ファイル写真)
2021年3月の世界保健機関(WHO)の報告によれば、レバノンでは過去5年間に28764人のがん患者の数が記録されている。(ロイター/ファイル写真)
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10 Apr 2022 07:04:48 GMT9
10 Apr 2022 07:04:48 GMT9
  • 難病やがんの治療薬には、まだ国から補助金が出るが、経済破綻のなか、ほとんどの薬の在庫が尽きつつある

ナジャ・フーサリ

ベイルート: レバノンでは病院やがん患者に必要なモルヒネとモルヒネ誘導体が不足している。

エルシー・アウン氏のアル・ナハル紙上での訴えが、金曜、ネット上で拡散された。この若い女性はがん患者の兄弟が必要な薬を見つけることができずにおり、痛みを緩和するための唯一の薬も底を尽きつつある現状を伝えた。「10日分のモルヒネしか残っていない。その後は、いったいどうしたらいいのか」

2021年3月の世界保健機関(WHO)の報告によれば、レバノンでは過去5年間に28764人のがん患者の数が記録されており、そのうち、11600件が2020年だけで発生しているという。

難病やがんの治療薬には、まだ国から補助金が出るが、ここ数年レバノンで起こっている経済破綻のなか、ほとんどの薬の在庫が尽きつつある。

保健省は金曜、2ヶ月前にモルヒネを輸入する前に補助金は承認されているが、中央銀行からの次の承認が遅れていると発表した。

「我々は輸入会社と連絡を取り、中央銀行の承認を待たずに手続きを開始することに同意した」と、同省は述べ、1週間以内にモルヒネが市場に出回るようになるはずだと付け足した。

レバノンでは445の抗がん剤が登録されている。ジャミル・ジャバク前保健相によれば、がん患者の治療費は「年間約2億ドルで、4億ドルに達するかもしれない」という。

レバノン血液・輸血学会会長のアーメッド・イブラヒム博士は、こう語る。「毎年、すでに治療を受けるか定期的な観察を行っている数千人に加えて、2500~3000人の血液がん患者が新たに登録されている」

「様々な治療には費用がかかるが、治癒率は60~80%で、世界的な実績に近い。現在、必要な治療法が不足しているために患者を治療できない可能性に直面している。残念だが、多くの患者が死亡する結果になるかもしれない」

匿名を希望したベイルートの病院の薬剤師は、アラブニュースの取材に対してこう語った。「病院の薬局でも、すべての薬が手に入るわけではない。モルヒネはステージ4のがん患者の痛みを和らげるために病院で日常的に必要とされる薬だ。月にだいたい150本から200本ほどのモルヒネが必要だが、患者の様態によって需要は増減する。モルヒネの代用品がすべて同じくらい有効なわけではない」

彼女はまた、「患者やその家族は、薬を探すのに苦労している。闇市で手に入るものもあるが、それを買えるのは一部の裕福な人々だけだ。保健省の補助で治療を受けている患者はひどい悲劇に直面している。最近では、内部の知り合いがいないと薬が手に入らないのでなおさらだ」と、付け足した。

「モルヒネは危険性の高い薬物として分類されており、患者に投与する針には医師と看護師2名が署名し、投与した物質の量と何滴無駄にしたかを明記しなくてはならない」

「モルヒネは他の医薬品と異なり、1社のみが輸入している。輸入会社が1社だけであることで、確保するための交渉がしやすくなる」

保健省は、モルヒネの輸入手続きを迅速に進めるためにあらゆる努力をしており、関係者にはこの問題を最優先とするよう要請しているという。

医師であり、元国会議員のイスマイル・スッカリエ氏は、自身が議長を務める国家保健局を通じて保健分野の汚職と闘ってきたが、同分野は現在、混沌状態だという。

「確かに抗がん剤にはまだ補助金が出るが、それはもう机上の空論となっている。薬は手に入らない。その解決の鍵を握るのは中央銀行だ。コーヒーには補助金を出しているのに、病気の回復に必要な薬に補助金が出ないのはばかげている。コーヒーは人命より大切だというのだろうか?」と、スッカリエ氏は語った。

また、「中央銀行だけでなく、強欲な医薬品業者も問題だ。医薬品を倉庫に隠し、違法な利益を得ている。誰もこれらの業者に対処しようとしていない。保健省も国会の保健委員会もだ」と、付け足した。

スッカリエ氏は、医師は日々、悲惨な状況を目の当たりにしていると話した。「病院に足を踏み入れた途端に、患者やその家族が私を引き留め、薬が欲しいと訴える。がん患者を治療している同僚の医師たちさえも、この悲劇を目の前に何もできずにいる。安定した治療ができないために患者の死を早めているのが現状だ。こんなふうに人の命を縮める権利が誰にあるのだろうか?」

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