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放置されるイラクの「グリーンベルト」、気候変動との闘いは弱体化

写真にはイラク中央部の都市カルバラーの「グリーンベルト」地帯に植えられたヤシとオリーブの林が写っている。2022年4月18日撮影。(AFP)
写真にはイラク中央部の都市カルバラーの「グリーンベルト」地帯に植えられたヤシとオリーブの林が写っている。2022年4月18日撮影。(AFP)
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20 Apr 2022 05:04:40 GMT9
20 Apr 2022 05:04:40 GMT9

カルバラー:悪化する砂漠化と砂嵐に対抗する緑豊かな要塞として構想されたイラクのカルバラーの「グリーンベルト」が、挫折した失敗作として放置されている。

構想が始まってから16年経つが、76キロ(47マイル)に及ぶこの三日月型の緑地帯は、ほんの一部しか実現されなかった。しかし、深刻化する環境問題から防御することの必要性の大きさは、ここ数年で証明されている。
イラク中央部のこの都市の周りに何万本もの木で緑の保護盾を形成する計画の一環として、ユーカリ、オリーブ、ナツメヤシの木が最初に根付いたのは、2006年のことだった。

「グリーンベルトは砂塵に対する効果的な防護手段になると思われたので、とても嬉しかった」と、カルバラーで生まれ育ったハティフ・サバン・アル・カザリさんは言う。カルバラーはイラクのシーア派の聖地の一つで、毎年数百万人もの巡礼者が訪れる。

イラクでは、干ばつや砂漠化など多数の環境問題が、国中で水へのアクセスや生活を脅かしている。

しかし現在、カルバラーの緑地帯の南軸は約26kmしかなく、幅100m(328フィート)の北軸は22kmと、さらに短い。

灌漑もまばらである。雑草を抜く人もいなくなった。イラクの象徴であるナツメヤシの木々の間に、発育不良のオリーブの枝が揺れている。

「建設が中止された」と、カルバラー地方評議会の元委員ナセル・アル・カザリさんは言う。
アル・カザリさんは、「中央政府と地方当局の関心の低さ」を非難し、「資金が続かなかった」と述べた。
当初予算160億ディナールだったものが、北軸には90億ディナール(600万ドル)しか費やされなかったという。

ハティフ・サバン・アル・カザリさんは、グリーンベルトプロジェクトの悲運を「怠慢」と説明する。

これは、「ずさんな財政管理」と並んで、多くのイラク人が頻繁に口にする言葉である。また、2019年にほぼ全国で起こり、同国を揺るがした、接待、崩壊した公共サービス、失業に対する抗議運動を牽引した要因でもあった。

イラクは「トランスペアレンシー・インターナショナル」による腐敗認識指数の得点が常に低く、昨年は国家機関の腐敗レベルの認識で、180カ国中157位に位置付けられた。

同国を覆い隠す頻繁な砂嵐の緩衝材となるはずだったものが、砂嵐の影響をほとんど和らげていない。
4月初めには、1週間足らずの間に2回も砂嵐がイラクを覆い隠し、飛行機が飛べなくなったり、呼吸器系の問題で何十人もが入院したりした。

イラク気象庁のアメール・アル・ジャブリ長官によると、砂塵嵐は今後さらに頻発することが予想されるという。

同長官は発生増加の原因として、「干ばつ、砂漠化、降雨量の減少」に加え、緑地がないことを挙げた。

イラクは気候変動に対して特に脆弱であり、近年ではすでに記録的な少雨と高温に直面している。

11月には世界銀行が、イラクでは気候変動により2050年までに水資源が20%減少する可能性があると警告した。

隣国のトルコやイランでは、上流に建設されたダムのせいで、水不足がさらに悪化している。

それらの水不足と、それに伴う土壌の劣化は、耕作可能な土地の激減を招いた。

イラクは「毎年約10万ドゥナム(約250平方キロメートル、または97平方マイル)の農地を失っている」と、スウェーデンのルレア工科大学で水資源を専門に研究するナディール・アル・アンサリ氏は指摘する。

「この土地は次に砂漠へと姿を変える」と同氏は述べ、イラクで「砂嵐が増えることが予想され」、農業と公衆衛生に悲惨な結果をもたらすかもしれないと警告した。

アンサリ氏はこの事態を、イラク政府と 「水計画の不在」のせいであるとする。

同国で前回の砂嵐が起こった時、農務省はイラクにおける「植生被覆の回復」に取り組んでいると断言した。

昨年、水資源省の当局者が、グリーンベルトに植樹するための「いくつかの取り組み」に言及したものの、「残念ながらこれらのベルトは維持されていない」と述べたと、国営INA通信が報じている。

この当局者はカルバラーをその一例として挙げた。カルバラーではハティフ・サバン・アル・カザリさんが、この都市のグリーンベルトが「犯罪組織と野良犬」の巣窟になっているのを見て絶望している。

AFP

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