Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • フランクリー・スピーキング:サウジはアメリカに失望したと感じている トルキ・アル・ファイサル王子

フランクリー・スピーキング:サウジはアメリカに失望したと感じている トルキ・アル・ファイサル王子

Short Url:
02 May 2022 11:05:58 GMT9
02 May 2022 11:05:58 GMT9
  • 元サウジアラビア情報長官兼大使が、米国のエネルギー不足の原因はバイデン大統領の政策にあるとし、サウジはロシア・ウクライナ紛争の調停役を望んでいるだけだと述べた
  • サウジアラビアとトルコの関係は、貿易や国境を越えた投資など、「両国に利益をもたらす最良の関係の一つであるべきだ」と述べた
  • アラブ諸国への攻撃を行ったイスラエルに対し、「侵略は侵略である」と延べ、制裁を行うべきだと語った

アラブニュース

ジェッダ:サウジアラビアの前情報局長であり、英国と米国大使も務めたトゥルキ・アル・ファイサル王子は、湾岸地域の安定と安全に対する脅威に米国とサウジアラビアが共に直面すべき今、サウジアラビア人は失望を感じていると、アラブニュースに語った。

彼はその脅威をこう定義する。「それは、イエメンにおけるイランの影響力である。フーシ派をサウジアラビアの不安定化に利用するだけではなく、紅海、湾岸、アラビア海に沿った国際シーレーンの安全性と安定性に影響を与える道具として利用することである」

「バイデン大統領がフーシ派をテロ組織リストから除外したことで彼らは増長し、サウジアラビアやUAEへの攻撃をより積極的に行うようになった」とトゥルキ王子はアラブニュースの『フランクリー・スピーキング』の新司会者、ケイティ・ジェンセンに語っている。王子が指しているのは、2021年2月12日、米国民主党新政権が同イラン系武装集団の外国テロ組織としての指定を取り消した決定である。

フランクリー・スピーキングは、主要な政策立案者やビジネスリーダーにインタビューし、中東や世界各地のニュースを生み出す最大のヘッドラインに深く切り込んでいく番組である。この動画番組に出演したトゥルキ王子は、米国とサウジアラビアの関係、ロシアとウクライナの戦争、原油価格の上昇と外交的緊張の中で常に変化する中東の地政学的ダイナミクスについて見解を述べた。

「米国との関係は、常に戦略的なものだと考えている」。サウジアラビア人の多くは、最も親しい同盟国のひとつに裏切られたと感じているのではないかという質問に対して王子はこう答えた。

「特に、アメリカ大統領が選挙キャンペーンで、サウジアラビアを排除する意向を表明して以来、そう考えるに至った。そしてもちろん、大統領は自分が説いたことを実践している。第一に、イエメンのフーシ派が率いるイエメン人に対する反乱に対処するために、サウジアラビアと行っていた共同作戦を米国側が停止したことである。そして第二に、他にも同様の行動はあるが、中でも皇太子と会わないことを公言したこと。また、ある段階では、ミサイルやドローンといったイランの装備を使ったフーシ派の攻撃が激化している状況の中で、米国は王国から対空ミサイル砲台を撤退させたことだ」

サウジアラビアは、「常に……イエメン内戦の平和的解決を呼びかけてきた」とトゥルキ王子は指摘し、次のように述べた。「残念ながら、フーシ派は常にその呼びかけに応じないか、単に無視するか、否定してきた。そして現在、国連が定めた停戦状態にあるはずが、フーシ派はその合意を侵害し続け、停戦を利用して軍の再配置や補給を行っている」

「基本的に、今はこのような状況にある」と、米国とサウジの関係の現状に言及した上で、次のように述べた。「これまでの多くの関係悪化を乗り越えたように、この状況も乗り越えられると期待したい」

米国は王国とのコミュニケーションチャンネルを電話や高官の訪問でオープンにすることにはかなり熱心に見える。しかしトゥルキ王子によると、「そう単純な話ではない」という。

「これは一般的な外交上のトーンだと受け止めている。例えば米国、あるいはその高官は、サウジアラビアを支持し、外部の侵略からサウジアラビアの防衛を助けるなどと宣言している。そういった発言はありがたいが、両首脳の関係という点ではもっと注意深く見る必要がある」

米国が抱える石油問題に関連し、サウジアラビアは動いていないという主張に対しトゥルキ王子は、「ワシントン自身のエネルギー政策が招いた状況だ」と反論し、一蹴した。

「バイデン大統領は、石油・ガス産業と呼ばれるものとのつながりを一切断つことを米国政府の方針とした。彼は石油生産とガス生産を縮小したのだ。米国はここ数年、この2つのエネルギー源の最大の生産国であったにもかかわらず、である」

この米国のエネルギー生産の抑制は、新型コロナウイルスによる難局の後に成立したOPECプラスの協定とともに、原油価格の上昇の一因になったと言う。「生産削減に関する協定は、関係各国の利益と原油価格の安定のためのものであった」

トゥルキ王子は、サウジアラビアは「石油価格を不安定にする道具や理由にはなりたくない」と強調し、1973年の禁輸措置のような行為は過去のものであることを示した。

「そのため、サウジアラビアは、他のOPEC加盟国やOPECプラス加盟国とともに、自ら設定した生産枠を守っている。OPECプラスが最近、協定が有効な間は石油の生産を段階的に増やすことを決めたのは、人々がエネルギー分野で抱えている困難に対応するためだと私は考えている。また、安全保障の問題、ウクライナ戦争の結果もたらされた高い保険料率、さらに欧米によるロシアの石油産業への抑制、制裁も、これらすべてが原油価格の上昇に拍車をかけている」

これに関連して王子は、ヒラリー・クリントン元米国務長官がNBCの番組「ミート・ザ・プレス」で語った内容に強い不快感を表明した。彼女は、彼女が「存立危機事態」と呼ぶこの時期に、サウジアラビアに対して「飴と鞭(人参と棒)」と用いて、石油生産比率を上げさせ、価格を下げさせる趣旨の発言を行った。

サウジアラビア人全員を代表して発言することはできないと前置きし、トゥルキ王子は次のように述べた。「我々は、人参と棒で扱われるような小学生ではない。我々は主権国家であり、公正かつ正当に扱われれば、我々もそのように対応する。どこの国であろうと、政治家がこのような発言をすることは残念なことだ。王室と米国の関係が、そのような原則の上に成り立っていないことを望む」

同様にトゥルキ王子は、ウクライナ紛争でリヤドがモスクワ側についたという非難を否定し、「王国は国連総会で可決されたウクライナへの侵略を非難することを公に宣言し、投票した」と指摘した。

また、サウジアラビアがロシアとウクライナの仲介を申し出たことを指摘し、こう述べた。「仲介者として、双方とのつながりと対話能力を維持しなければならない。我々は長年にわたって両国と良好な関係を保ってきた。原則として王国は、先ほど申し上げたように、ウクライナへの侵略には反対している。また、最近では、国連が設立した、ヨーロッパ各国に逃れたウクライナ人難民を支援する基金に寄付している。つまり、それが王国の立ち位置である」

王子はサウジアラビアの仲介を、「友人であるウクライナとロシアの両方に対しての申し出」と表現し、両国とは過去に素晴らしい関係を築いてきたとした。

ロシアとウクライナの紛争によって露呈した国際的な偽善について、トゥルキ王子は次のように述べた。「ウクライナからの難民は西洋と一体、ヨーロッパと一体などと表現され、文明的な扱いをされている。まるで中東や他の地域からの難民がウクライナ人と同等の人間ではないかのように言われていることが、その証明となっている。それが、特に欧米のメディアが難民問題を描く際の一つの矛盾点である」

「もうひとつの偽善の例は、もちろんイスラエルの侵略だ。国連は、ウクライナを侵略したロシアには制裁を科しているが、イスラエルが数年前にアラブ諸国を侵略したときには制裁など科していない。このようなダブルスタンダードや不正は、長年にわたって行われてきたと考えている」

イスラエルはロシアと同等に扱われるべきかという質問に対して、トゥルキ王子は手加減しなかった。「その通りだ。この2つの間にどんな違いがあるのか、私にはわからない」

「ロシアがやろうが、イスラエルがやろうが、侵略は侵略だ」

さらに、エジプト、ヨルダン、UAE、バーレーンなど多くのアラブ諸国が採用している、イスラエルとの関係正常化がより生産的な政策になるという説に疑問を投げかけた。「そのような証拠を見たことがない。パレスチナ人はいまだに占領され、イスラエル政府によって投獄されている。パレスチナ人に対する攻撃や暗殺は、ほとんど毎日のように行われている。イスラエルはUAEとの和平協定の締結合意にサインしたのにもにもかかわらず、同国によるパレスチナの土地の窃盗は続いている。つまり、イスラエルとの融和を進めても、彼らの態度が変わる様子はまったくないのだ」

身近な問題では、最近のトルコ大統領によるサウジアラビア訪問を、トゥルキ王子は肯定的にとらえている。「トルコの指導者たちは、これまでの王国に対する敵意が、誰の幸福や目的にも、特にトルコ国民のためにもなっていないことを理解するようになったと思う」と、近年の紛争や意見の相違に言及した。

「地理的な面だけでなく、歴史的なつながりも、私たちとトルコを結び付けている。それは両国の人間関係や家族の絆の面でも言える。私自身、祖母はトルコ系のチェルケス人だ」

今後、この関係は「両国に利益をもたらす最高のものとなるはずだ」と王子は述べ、貿易、建設、開発プロジェクト、サウジアラビアとトルコによる投資といった分野を挙げた。

「また、サウジアラビアとトルコの関係が正常に戻った今、それらのすべてが回復することを願っている」、と付け加えた。

彼は、最近締結されたリヤド合意とラマダンの停戦に基づき、イエメンの永続的な和平交渉の可能性についても同様に慎重な楽観論を示した。

「私は、国連が試みた停戦合意、特にイエメンに関する停戦合意には、成功につながらない一つの重要な側面が欠けていると常に主張してきた、それは停戦を実施するメカニズムである」

「2016年にクウェートで行われた和平交渉の後、停戦が行われたが、それはどこにもつながらない事を我々は目の当たりにした。そして、2018年にもスウェーデン主導の停戦の試みがあったが、同様に目覚ましい成果はなかった。近年のサウジアラビア自身の一方的な停戦の努力は、停戦を実施するメカニズムがなかったため、どこにも行き着いていない」

それでも、トゥルキ王子は、イエメンでの戦闘を終わらせるための新たな国際的な原動力により、停戦条件を守らない当事者は国際社会から公に不名誉を被らされる、何らかの手段を実行できることに希望を示した。

「それはまだ実現していない。私は、国連が『フーシ派が停戦を守っていない』と言うのをまだ見たことがない」と述べ、さらにこう付け加えた。「しかし、私は彼らが勇気と道徳的な信念を持ち、誰がこの地で過ちを犯しているかを宣言するために立ち上がることを望んでいる」

特に人気
オススメ

return to top