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アラブ人世論調査、ロシアとウクライナの紛争に過半数が意見示さず

ハリコフ北部のサルチフカ地区で、甚大な被害を受けた住宅建物の前を歩く女性。(AFP通信)
ハリコフ北部のサルチフカ地区で、甚大な被害を受けた住宅建物の前を歩く女性。(AFP通信)
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31 May 2022 02:05:02 GMT9
31 May 2022 02:05:02 GMT9

リーン・フアド

ロンドン―アラブニュースとYouGovが行った世論調査によると、アラブ世界の過半数の人は、ロシアとウクライナの紛争に対し、いかなる立場も示していないことが分かった。この地域は紛争から直接、経済的な影響を受けているだけに、驚きを与える結果となった。

アラブ世界の計7,835人の回答者のうち、66%がロシアとウクライナの紛争に対する意見を示さなかった。18%はウクライナ側、16%がロシア側をそれぞれ支持した。

「世論について言えば、人々は日々の生活に高い関心を示し、ウクライナ紛争は遠い国の問題だと捉えている。この紛争は、重要で切実な問題とは到底ならないのだ」。英国王立防衛安全保障研究所の研究員で中東問題の専門家であるトビアス・ブロック氏は、アラブニュースの取材にこう話した。

「そもそもウクライナ紛争は、シリアやイエメン、リビアの紛争、そしてイスラエルとパレスチナ人との間で現在起きていることに比べれば、地理的にみてずっと遠い場所の話となっている」。ブロック氏はこのように続けた。

同氏は最近、ジャック・セノグレス氏と共同で、ロシア、ウクライナ間の戦争と中東・北アフリカ諸国との関係性についての論文を執筆した。この論文の中で、著者である両氏は、「中東のほとんどの国々では、ロシアとロシアが起こした戦争に対する自分たちの立場を明確化するのに時間がかかっている」と説明している。

専門家らは、アラブ地域における一般的な意見は、それぞれの国の政府見解をなぞったものである可能性がある。中東の各国政府は、ウクライナでの戦争をあくまでも欧州での紛争とみている。

今回の調査では、ロシアを支持するとした回答者の過半数が、主に調査対象の14ヵ国のうち4ヵ国の人々だったと判明した。その4ヵ国とは、アルジェリア(ロシア支持19%)、オマーン(同19%)、カタール(19%)、チュニジア(18%)だ。

その一方、ヨルダンでは、ロシア、ウクライナのいずれかを支持する立場を示した回答者は、ロシアとウクライナが同じ13%ずつの割合で分かれた。

ウクライナとロシアともに、世界の小麦輸出量の上位(合わせてシェア約29%)を占めており、アラブ地域の多くの国が小麦輸入について両国に依存している。例えば、小麦需要の85%をロシアとウクライナから輸入しているエジプトの人々は、紛争自体に対して強く我意を主張する傾向があると推測される。

アラビア湾周辺諸国では、回答者の22%がウクライナを支持し、15%がロシアを支持した。その差はあまり大きくはないが、オマーンとカタールの2ヵ国がロシアをより強く支持しており、両国ではそれぞれ回答者の19%がロシアへの支持を示した。

オマーン政府が西側以外の主要国との多様な関係を築こうと模索する中、オマーンとロシアは特にここ数年間、良好な二国関係を築いてきた。両国間の貿易量も大きく伸びており、現在は2018年と比較して62%増となっている。

5月初め、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、貿易について協議するためオマーンを訪れた。両国は、相互のビザ免除プログラムを含めた広範な領域をカバーする二国間合意を結んだと発表した。

他のアラブ諸国と同様、オマーンは、ロシアとウクライナの紛争に対して具体的な見解を示さず、紛争当事国の両国が対話を通して政治的、外交的解決を見出すべきだとの立場を明確にした。

国家の考え方が、紛争における一般市民の支持傾向を必ずしも決定づけるわけではないが、専門家は、一般市民の意見が時に、国家の姿勢を映し出すことがあるとみている。そのことは、オマーンがロシアとウクライナの紛争について示している、平均よりもやや明確な国家的立場を説明している可能性がある。

 

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