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エルドアン大統領はウクライナ戦争を利用してシリアでの自らの目的を推し進める

2022年6月1日アンカラのトルコ大国民議会での党大会にて、トルコ大統領・公正発展党党首のレジェップ・タイップ・エルドアンが演説を行う。(AKP)
2022年6月1日アンカラのトルコ大国民議会での党大会にて、トルコ大統領・公正発展党党首のレジェップ・タイップ・エルドアンが演説を行う。(AKP)
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04 Jun 2022 08:06:05 GMT9
04 Jun 2022 08:06:05 GMT9
  • トルコによる大規模侵攻にはリスクと複雑な問題が伴い、トルコと米国・ロシア両国との関係を駄目にする恐れがある。

ベイルート:シリア北部、住民は新たな戦いに備えている。世界の関心がウクライナ戦争に向かう中、トルコ大統領は、シリアのクルド人兵士たちを押し戻し、国境地域に長く求められている緩衝地帯を設けるため、大規模な軍事作戦を計画していると発言した。

緊張感は高まっている。米国が支援するシリアのクルド人兵士たちと、トルコ軍とトルコが支援するシリアに対抗する武装勢力との間で、射撃・砲撃が交わされないまま1日が過ぎることはほぼない。

複数のアナリストによるとトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領はウクライナ戦争を利用して隣国のシリアでの自らの目的を推し進めている。トルコがNATO加盟国として、フィンランドとスウェーデンの同盟加入に対し、拒否権を持つことを潜在的な影響力として使うことさえある。

だがトルコによる大規模侵攻にはリスクと複雑な問題が伴い、トルコと米国・ロシア両国との関係を駄目にする恐れがある。

ダーイシュのグループがいまだに闇に潜む、戦争によって破壊された地域において、新しい移住の波を生み出すリスクも伴う。

現地の状況と鍵となるいくつかの問題を説明する。米国の支援を受けるシリアのクルド人兵士たちに対抗するための国境を越えた侵攻地を貫く形で、トルコの南部国境に沿ってシリア国内に30キロメートルの緩衝地帯を作るというトルコの活動を再開する計画の概略について、エルドアン大統領は先月述べた。

「我々はある夜突然、決定を下す。そしてそうしなければならないのだ」とエルドアン大統領は具体的な予定を示すことなく言った。

2016年以降、テロリスト組織で非合法的なクルド労働者党(PKK)の延長だとトルコが捉えているシリアのクルド人民兵組織クルド人民防衛隊(YPG)を標的として、トルコはシリア国内で3つの大きな軍事作戦を展開した。PKKは数十年にわたって、トルコ政府に対するトルコ国内の暴動に資金を供給してきた。

しかしYPGは、ダーイシュ戦闘員との戦いにおける米国主導部隊の根幹を成していて、シリア国内における米国協力者の実質的トップだ。

トルコは、シリアでこれまでに行った3つの軍事作戦を通じて、シリア領土の大部分(アフリン、タル・アブヤド、ジャラーブルスを含む)をすでに支配下に置いている。現在トルコにいる370万人のうち100万人のシリア難民を、確実に、トルコ政府が言う「自主的帰還」させるため、トルコ政府はそれらの地域に数千戸の住宅を建設しようと計画している。

テル・リファートと、M4として知られるシリアを東西に走る主要道路上の主な交差点にあるマンビジュを含む新たな地域をトルコ軍はいま奪おうとしていると、エルドアン大統領は1日述べた。

トルコ軍は戦略的な国境の町アイン・アル=アラブ(2015年に米軍とクルド人戦闘員がダーイシュを打倒するため初めて協力した町)に侵入するかもしれないという報告もある。その町はシリアのクルド人と、シリアのこの地で自治を行うことに対する熱望にとって、強烈な象徴的意味を持っている。

複数のアナリストが言うには、エルドアン大統領はシリアでの作戦をタイムリーなものにする国内外の状況が重なったと考えているのだろう。ロシアはウクライナでの戦争にかかりきりで、米国は、フィンランドとスウェーデンを加盟させるNATO拡大に対する反対意見をエルドアン大統領に取り下げてもらう必要がある。

「(トルコは)東側諸国から譲歩を引き出しうる好機だと感じている」とフィラデルフィアの外交政策研究所のアーロン・ステイン研究責任者は言う。

トルコ経済が落ち込み73.5%のインフレが進行している時に、トルコの民族主義者の有権者を集結させるためにもシリアへの攻撃は利用されうる。トルコは来年、大統領選と議員選挙を行うことになっているが、YPGを追い払うための前回のシリア侵攻は過去の投票でエルドアン大統領への支持を広げた。

ここまで即時侵攻を示す動員の兆候は見られていないが、トルコ軍はかなり迅速に召集されうる。しかしシリアのクルド人戦闘員は、トルコの最近の脅威を深刻に受け止めていて、潜在的な攻撃に対し準備をしている。

ダーイシュとの継続中の戦闘およびダーイシュが領地を失った3年前から数千人の過激派(その多くは外国人)が収容されているシリア北部の刑務所の守備能力に、侵攻は影響を及ぼしうるとクルド人戦闘員は警告している。

大規模な軍事行動は大きなリスクをはらんでいて、北部シリアで軍事的な存在感を示す米国とロシア両国を怒らせる可能性が高い。

シリアでの11年の紛争において、トルコとロシアはそれぞれ敵対する勢力を支持しているが、シリア北部では両国は緊密に協調している。公式には見解を述べていないが、シリアの反政府活動家によると、ロシアは戦闘機と攻撃ヘリコプターをここ数日のうちにトルコとの国境近くの基地に供与した。

2011年にアラブの春の騒乱の中で始まったシリア紛争の潮目を、バッシャール・アル・アサド大統領に有利になるよう変える上で、シリアと最も近しい同盟国ロシアのシリアでの役割は最も重要だった。シリア人の反体制派戦闘員はトルコの影響下にある北西の飛び地に追いやられた。

しかしロシアはウクライナに注力しており、トルコの南の国境に沿った単なる細長い土地について、ウラジーミル・プーチン大統領がエルドアン大統領の代理を務めることはあまり考えられない。

AP

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