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イランの反体制派ジャーナリストのモラディ氏、トルコで「拉致」される

2019年のマスード・モウラヴィー・バルダンジャーニ氏の殺害は「明らかに敵対的行為であり、対抗措置が取られた」(ロイター)
2019年のマスード・モウラヴィー・バルダンジャーニ氏の殺害は「明らかに敵対的行為であり、対抗措置が取られた」(ロイター)
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06 Jun 2022 05:06:41 GMT9
06 Jun 2022 05:06:41 GMT9
  • 同氏の失踪のニュースは、イラン外相のアンカラ訪問に複雑さを加える可能性がある

メネクセ・トキャイ

アンカラ:9年前にトルコに避難したイランの反体制派ジャーナリストであるモハメド・バゲル・モラディ氏の失踪により、トルコで活発に行われているイラン諜報機関による拉致工作の新たな犠牲者ではないかとの懸念が高まっている。

モラディ氏は、批判的な報道をめぐる裁判中にイランを逃れトルコに亡命を求めたが、5月30日に失踪した。彼の父親は、息子が首都アンカラでしばらくイラン諜報機関に尾行されていたことから、イランの工作員によって拉致されたと信じている。彼の家族はトルコの地元検察庁に刑事告訴した。

2013年、サラエ・アフル・エ・ガラム(作家協会)のメンバーだったモラディ氏は、「国家の安全に反する違法な集会および共謀」の罪で5年の実刑判決を受けていた。

イランの反体制派にとって、トルコは安全な避難場所、あるいは法的地位が不明確な場合にヨーロッパ諸国へ行くための中継点となっている。

イランとトルコの間の相互ビザなし渡航制度により、イラン国民はトルコで最大90日間は自由に滞在・移動できる。

モハメド・バゲル・モラディ氏。(提供写真)

 

しかし、このことにイラン諜報機関の工作員が気付いた。工作員は、人身売買やテロを防止するために協力するという二国間の約束にもかかわらず、トルコにスパイ網を張り巡らし、反体制派の拉致や暗殺を行った。

防衛・安全保障アナリストのウバイ・シャーバンダル氏は、イラン諜報機関工作員が依然としてトルコを標的にテロや拉致工作を行っていることは明白だと考えている。

「(反体制派の)マスード・モウラヴィー・バルダンジャーニ氏が2019年にイスタンブールの繁華街の真ん中で暗殺されたことは、明らかに敵対的行為であり、対抗措置が取られた。イラン人が未だに恥知らずな攻撃を行っているという事実は、イラン政府が国際規範や主権の尊重を軽視していることを示している」と、同氏はアラブニュースに語る。

トルコ当局は、イラン諜報機関の元工作員であるバルダンジャーニ氏との関連で数人の容疑者を逮捕した。

この中には、2021年2月に拘束されたモハメド・レザ・ナセルザデ容疑者というイスタンブールのイラン領事館の職員も含まれていたが、イラン政府は殺害への関与を否定した。

バルダンジャーニ氏は、イスタンブールで射殺される前、イラン当局の腐敗についての暴露をSNSに投稿し始めていた。

昨年、2018年にトルコに避難したイラン軍の高官パイロットが、何者かがイラン諜報機関に引き渡すために彼と配偶者を数回にわたって拉致しようとしたとトルコ当局に訴えた。2021年9月には、この事件に関連して8人が逮捕された。

今年にはトルコ諜報機関が、イスラエル系トルコ人のビジネスパーソンをイランの命令で殺害しようとしたイラン人の工作員による別の計画を阻止した。

イスタンブールを拠点とする75才の財界の大物であり、トルコの機械・防衛産業に投資していたヤイル・ゲラー氏は、イランの核科学者モフセン・ファクリザデ氏の暗殺(イランはイスラエルの作戦だと主張)を受けてイラン諜報機関によって集められた9人のネットワークによって標的にされた。

トルコ諜報機関による1ヶ月にわたる監視作戦により、この計画は失敗した。

イラン核兵器抵抗連合の政策担当者であるジェイソン・ブロツキー氏はアラブニュースに対し、モラディ氏の事件は、イランが長年にわたってトルコを発射台として利用してイラン反体制派を標的にしてきたことの新たな一例に過ぎないと語る。

しかし同氏は、この工作自体の主な動機がトルコによるイスラエルとの関係修復だとは考えていない。

「むしろ、イランが活動が許容される環境をトルコに見つけたということだ。イランの治安部隊が標的を迅速にイラン領内に連れ去ることができるという地理的な利点は言うまでもない」とブロツキー氏は語る。

イスラエルの国家安全保障会議は先週、トルコおよび近隣諸国には「イランのテロリスト工作員」によるイスラエル人に対する具体的な脅威が存在するとして、トルコへの渡航警告を発した。

ブロツキー氏によると、イスラエルが最近出した国民に対するトルコへの渡航警告は、イラン諜報機関がトルコに潜入していることを示す新たな例であるという。

「これらの事実は、月曜日のイラン外相による就任後初のトルコ訪問に先立って明らかになった。イランがトルコ国内に手を伸ばしているにもかかわらず、水問題や、イランが支援する民兵組織がイラクにおいてトルコ軍を標的にしている問題など、二国間関係には依然として対立の種が存在する。モラディ事件のニュースは、イラン外相による訪問中にさらなる複雑さを加えるだろう」と彼は続ける。

2月には、イラン反体制派を国内に連れ戻すうえでイラン諜報機関と関係を持ったとして、あるネットワークに所属する16人の容疑者が逮捕された。このネットワークは、トルコ諜報機関による詳細な調査により発見された。

彼らは政治的・軍事的スパイ行為および拉致の罪で告発された。

このネットワークは、トルコにおける以前の工作において、別のイラン反体制派であるマシャリ・フィルーズ元大佐をイランに連れ戻した。一方、元海軍将校のモハメド・レザイ氏とエコノミストのシャフナム・ゴルシャニ氏の拉致工作は失敗した。

トルコにおけるイラン工作員による拉致工作のタイミングについては、決して無作為ではないとシャーバンダル氏は言う。

「経済が崩壊し抗議行動が国内にさらに広がる中でのイランの自暴自棄の現れだ」と同氏は言う。

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