• 専門家はアラブニュースに対し、エチオピアは同ダムの運用をめぐりエジプト、スーダンと合意に達することが早急に必要で、米国の支援が助けとなると語る
• 米大統領は今月のサウジアラビア訪問中、湾岸諸国およびエジプトの指導者と会談し多岐にわたる重要課題を議論する予定

モハメド・アル・シャマア

カイロ：エジプト外務省と米外務省は2021年11月、ワシントンで行われた両国間の戦略的対話の終了に際して共同声明を発表した。エチオピアのルネッサンスダムの運用をめぐる交渉の早期再開を求める内容だった。

同声明は、国連安全保障理事会が2021年9月15日に発表した大統領声明や、エジプト、エチオピア、スーダンが2015年に署名した原則合意宣言に沿って、同ダムをめぐる協議はアフリカ連合の後援のもとで行われる必要があると述べている。

2021年11月の声明は、ジョー・バイデン米大統領がエジプトの水安全保障を支持していることを強調しているが、交渉を行き詰まらせているエチオピアの非妥協的姿勢や同国が続ける一方的な行動に対する米国の立場を明確にする米国政府からのさらなるコメントはない。

バイデン大統領は今月のリヤド訪問中、湾岸諸国およびエジプトの指導者と会談し多岐にわたる重要課題を議論する予定だが、アラブニュースが取材した専門家らによると、ルネッサンスダムが議題に上る可能性があるという。

エジプトの元駐中国大使で元アフリカ担当副外相のアリ・アル・ハフニー氏は、ルネッサンスダムの問題は、特にエチオピアが先月セレシ・ベケレ氏を交渉責任者に任命した後であるため、バイデン大統領訪問中に議論される必要があると語る。

同氏によると、同ダムは現在エチオピア当局にとって主要な問題であり、ベケレ氏の任務の一つはそれに対する同国の立場を米国の意思決定者に対して説明することだという。

同氏によると、ドナルド・トランプ前大統領の政権下では米国とエチオピアの関係は緊張状態にあった。同政権は、エジプトとの取引においては柔軟だったが、エチオピアに対しては同国政府とティグライ地域との内戦をめぐり制裁を課していたという。米連邦議員の多くはこの内戦をジェノサイドだと非難していた。

エジプトの元水資源相であるモハメド・ナスル・アラム氏はアラブニュースに対し、ルネッサンスダムに関する米国とエジプトの協議は適切なコミュニケーション経路を通して行われるだろうし、そのような協議は公にされないとしても確実に行われるだろうと語った。

同氏は、エジプトは米国と国際社会に対し、スーダンと協力して、両国がナイル川の水の公平なシェアを得られることを保証するような、また既存のダムの運用と安全性に影響を与えないような、同ダムの貯水と運用のためのルールに関する合意を、国際法に沿った形で提案しなけらばならないと強調する。

同氏はまた、エジプトとスーダンは、同ダムの貯水と運用のためのこれらのルールに対する両国およびエチオピアの関与に必要な法的枠組み（三国間の合意への違反事案に対して取られる法的措置など）も、国際社会と地域の後援のもとで、米国に対して確認しなければならないと付け加える。

同氏は、技術的・法的合意は全て世界に対し公式に発表される必要があり、それらに対するエチオピアによる正式な見解の提出に6週間以内の期限を設け、それが守られなければ合意は拘束力を持つとみなされるべきだと語る。それ以降は、同国による合意へのいかなる違反も他の二国への公的な侵略行為とみなされることになるという。

同氏は、同ダムの問題については刻々と時が迫っているにもかかわらず、エチオピアの（同氏の言い方では「奇妙な」）行動から米国をはじめとする国際社会は目を背けていると指摘する。

2010年5月、いずれも同ダムの上流に位置するエチオピア、ウガンダ、ルワンダ、タンザニアがエンテベ協定に署名した。下流に位置するエジプトとスーダンは、ナイル川の水の歴史ある共有権を否定することになるとして反対した。

エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は5月、米国のジェイク・サリバン国家安全保障担当補佐官と会談し、エジプトの水安全保障を保全しエジプト、スーダン、エチオピアの共通の利益を実現するような形で同ダムの貯水と運用に関する拘束力のある法的合意に達する必要があるというエジプトの確固たる立場を強調した。しかし、同ダムをめぐる交渉はしばらく停止している。