Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • バイデン氏のイスラエル、サウジ訪問、迫りくる核武装したイランの脅威に焦点

バイデン氏のイスラエル、サウジ訪問、迫りくる核武装したイランの脅威に焦点

イランのブシェール市の南東に位置する、ブシェール原子力発電所。(資料写真)
イランのブシェール市の南東に位置する、ブシェール原子力発電所。(資料写真)
Short Url:
13 Jul 2022 10:07:53 GMT9
13 Jul 2022 10:07:53 GMT9
  • パートナーとの協議を通じて米国は包括的戦略を構築できると政策立案者
  • 核開発問題が持ち上がる前からアラブ諸国はイランが突きつける脅威を感じていた

エファレム・コッセイフィ

ニューヨーク:今週、リヤドでジョー・バイデン米大統領と会談するアラブ諸国の指導者たちが取り上げたいと強く願っている話題の一つは間違いなく、イランが突きつける脅威や、イランの核開発の野心をどのように挫くあるいは封じ込めるかという問題だろう。

2020年、バイデン氏は大統領候補を選出する予備選挙の際に、2015年のイランとの核合意を再締結することを約束した。2018年に前任者であるドナルド・トランプ氏が「十分な進展がなかった」として離脱した合意だ。

バラク・オバマ元大統領の副大統領として取りまとめに貢献したこの合意の復活に熱心なバイデン氏だが、それ以降急増しているとアナリストが指摘する、地域におけるイランの悪意ある行動を考慮に入れ、同合意を現状に合ったものにする必要があると語った。

サウジアラビアなど地域の同盟国と緊密に協議し、それに米国とその同盟国のための統合防空ミサイル防衛システムを組み合わせることで、より包括的な対イラン政策の策定に向けて大きく前進するだろう、と政策立案者は指摘している。

核開発問題が持ち上がる前から長期間にわたって、地域諸国はイランが突きつける脅威を感じていた。実際、イランの弾道ミサイル計画、ドローンや軍艦の活動、地域全体に及ぶ代理民兵への支援は、大きな混乱を生み出している。

イラクの武装集団への支援や、レバノンのヒズボラへの長年の支援から、シリアのアサド政権を支えるための傭兵の活用や、イエメンのフーシ派への武器援助に至るまで、イランの行動は地域の安定を脅かすに留まらず、航行の自由やより広範囲の世界経済にも脅威となっている、と専門家は指摘している。

また、イランによる外国への侵略行為は、国内での弾圧と一貫していると考えられている。2019年11月の大規模抗議に対して体制側が行った弾圧により、1,500人もの死者が出て、数千人が投獄された。

それにもかかわらず、ウィーンで、また最近はドーハで、正式には包括的共同行動計画(JCPOA)と呼ばれる核合意の復活を目指す協議が行われており、イランの国外活動と国内での弾圧が脇に追いやられているように見える。欧州と米国の交渉担当者はそれらを脇に置いて、イランの核問題一本に絞っている、と批評家は指摘する。

ワシントンにある超党派のシンクタンク、民主主義防衛財団のシニアフェローであるベーナム・ベン・タレブル氏は、「JCPOAの最大の問題の一つは、その内容ではなく、合意が生まれる道筋である」と考えている。

「交渉したオバマ政権でも、離脱したトランプ政権でも、なんとしてでも取り戻そうとするバイデン政権でも、核関連以外の対イラン政策の企画立案は完全に視野の外に追いやられざるを得なかった」と、ベン・タレブル氏はアラブニュースに語った。

「イスラム共和国の対外政策や安全保障政策が突きつける脅威は、常に核問題単独よりもはるかに大きかった」のであり、恥ずべきことだと同氏は語る。

一部の交渉担当者は不可能を可能にしようと試みてきたが、「すべての交渉担当者が最終的には『合意できるか合意できないかでその中間はない』という方針をとった。バイデン大統領もそうだった」

この数カ月、バイデン政権はイランに対して石油や石油化学製品の制裁を積極的に実施し、要求を吊り上げたようだった。6月、米国は欧州のパートナーの支援を得て、国際原子力機関の理事会でイランに対する非難決議を採択した。

これらの動きはあまりにささやかだし、あまりに遅いのかもしれないとベン・タレブル氏は考えているが、政権の対イラン政策の根本的変化の兆しであるかもしれない。

「ゲームの流れ全体からするとこれほど遅い時期にバイデン氏がこのように圧力政策を採用した理由を、私なりに推測するとしたらこういうことだろう。より首尾一貫しているように見える計画に関して、サウジアラビアや地域のその他の国を含むパートナー国や同盟国との対話に向けた地ならしを始めようとしているのではないか。また、事態が進展した際に(同盟国に)この同じ思いを味わわせようとしているのかもしれない」

ジョー・バイデン氏の米国大統領就任後の4月17日、2015年イラン核合意の復活を目指す協議が再開した。(AFP資料写真)

また、中東でより統合された防空ミサイル防衛システムを構築する計画も示唆されている。「だが、これまでのところは単なる協議に過ぎない」と、ベン・タレブル氏は述べた。「(バイデン氏の中東)訪問後に、現実になることを期待しよう」

保守派は、バイデン氏にはイスラム共和国に対する弱さ(「心の中にあるイランへの渇望」)が明らかに見て取れる、と主張している。擁護派は、バイデン氏の上院における記録は入り混じっているとしている。バイデン氏はイラン問題で何度も投票し、時に関与政策を支持したが、圧力政策の支持者であることが多かったという。

ベン・タレブル氏は、「バイデン氏の記録からイスラム共和国に対する肯定的あるいは否定的なある種の感情を皮相的に理論づけ、過度な推測を加えようとするのは賢明ではない」と考えている。

おそらくより参考になるのは、大統領就任後の、核合意への復帰に向けた試みの分析だろう。

2014年1月20日のこの写真は、IAEAの査察官とイランの技術者が、ナタンツにあるイランの核研究施設でのウラン生産の停止に関する暫定合意を発効させた際のものである。(AFP/資料によるIRNA)

「このアプローチに基づくと、バイデン政権はイランの優先順位を下げ、ほぼ核問題に絞り込んだように見える」と、ベン・タレブル氏は述べた。

「また、この政権は総じて外交に関心がないといえる。すべての危機を管理することに関心がある。2008年時点のオバマ政権のごく初期の発想に似ているように思える。前政権から引き継いだ政治の方向性を変えようとしているように見えてさえいれば、世界は歓迎してくれる、という考え方だ。

「だが、イランのような国は、こうした譲歩や友好的な施策をちゃっかり受け取った上で、さらに脅威をエスカレートさせる傾向がある」

ベン・タレブル氏は、何が実際にイランに対する抑止になるのかを把握する上で、このような理解が重要なステップになると述べた。この抑止については、米国とその同盟国は実現できなかった、と多くの人が主張している。

当初2015年にオバマ政権が実現したこの合意から、ドナルド・トランプ政権下の米国は離脱した。

ベン・タレブル氏によると、最近の3つの米政権は、抑止の問題を「1回限りの、白か黒かの問題」とみなしたが、実際の抑止は「非常に流動的」な性質を帯びている。

「抑止は相互作用的な面が非常に強い。常に変化し続ける。なぜなら、敵は外交を安っぽいものであるとみなしており、非対称の武器を使用してグレーゾーンで戦い、生命の価値を我々より低くとらえているようであり、多くのさまざまな代理勢力を通じて非常に長期間にわたって外国で戦い続けているからだ」

2022年3月11日、核合意に向けたウィーンでの会合に臨む、イランの核交渉責任者アリ・バゲリ・カーニ氏(左)。(AFP)

「そのため、この体制は、机上の考察では従来、政治、経済、軍事的に弱体であるとされているが、実際にはさまざまな多くの強みを持っている。抑止の失敗は部分的には、このことを理解しなかったためだと考えている」

このことをよく理解すれば、たとえばUAEに対するドローン攻撃が行われた際に、米国がどのように対応すべきかについてより明確な指針が与えられるかもしれない。実際、米国は以前に、サウジアラビアの石油施設や民間インフラにイランの支援を受けた攻撃が行われ、対応に窮したことがある。

「そして、イランはこうした状況を注視している。(イランが)アラブ世界に、UAEに、サウジアラビアに手を出そうとするのはそのためだ。米国のパートナーが現在心地よく感じているかどうか、どの点を不快に感じているかを評価する目的で、この種の外交手段がとられることが予想される。米国のパートナーが、何かあったときには米国が助けてくれるとどの程度信頼しているかを確かめる目的で、イランはそれらの国にこの種の外交手段を用いようとするからだ」と、ベン・タレブル氏は述べた。

「そのため、この地域を訪問する準備を進めているバイデン氏は、この問題に関して全当事者が共通認識を持てるようにする必要があると思う」

イランの原子炉の監視活動で国際原子力機関が使用しているカメラを見せる、同機関のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長。(AFP資料)

だが、バイデン政権は、イランが核開発計画を抑制する見返りに制裁緩和を約束する、JCPOAへの復帰を中心に対イラン政策を策定しているようだ。イランはその種の活動を停止するどころか、現時点で既に核兵器の製造に十分な量の核分裂性物質を保有している。

正しい出発点は、バイデン氏が古い枠組みをすっかり捨て去り、米国のパートナーとより緊密に協力して「共通プランB」に取り組むことである、とベン・タレブル氏は考えている。

実際、近年のサウジと米国の関係は浮き沈みが激しいにもかかわらず、ベン・タレブル氏は、両国が中東の安全保障で同一歩調をとっていることにほぼ疑いはないと考えている。

「現在は非常に、非常に明確になっていると思う。たとえば、航行の自由、エネルギー安全保障、制裁の遵守、テロ対策の支援のいずれについても、中東における米国主導の地域秩序に対する基本的な支持、イラン・イスラム共和国への対抗、イエメンでの戦争におけるフーシ派を押し返す支援と、このすべての前線でサウジアラビアは米国と利害を共有している」

特に人気
オススメ

return to top