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チュニジア、新憲法を承認、投票率は低迷

26日、チュニスで、チュニジア独立高等選挙機関の責任者が憲法改正の国民投票結果を発表する。(AP)
26日、チュニスで、チュニジア独立高等選挙機関の責任者が憲法改正の国民投票結果を発表する。(AP)
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28 Jul 2022 05:07:50 GMT9
28 Jul 2022 05:07:50 GMT9
  • チュニジア国民は投票で新憲法に賛成したが、評論家は大統領による権力強化の取り組みをさらに強固にする恐れがあると懸念している

チュニス:チュニジアの選挙管理委員会は、現在はカイス・サイード氏が務める大統領職に抑制の利かない権力を付与する新憲法が承認されたことを発表した。今回の国民投票では、有権者は新憲法に圧倒的な支持を示したが、投票率そのものは低かった。

サイード氏と対立する人たちは、サイード氏が牛耳る選挙管理委員会を「詐欺師」と非難し、25日に実施された同氏の国民投票は失敗に終わったと述べている。

26日夜、ファルーク・ブアスケル選挙管理委員長は、投票率30.5パーセント、有効投票のうち94.6パーセントが「賛成」だったとの暫定結果に基づき、「チュニジア共和国の新憲法草案が承認されたことを発表する」と記者発表した。

25日の投票は、2011年の「アラブの春」の蜂起から誕生した唯一の民主主義国に大きな打撃を与えた大統領による首相解任と議会停止から1年の節目に実施された。

チュニジア国民の一部にとっては、同大統領の行動は独裁体制に逆戻りするという懸念をかき立てるものであったが、高インフレと高失業率、政治腐敗、ほとんど改善をもたらさなかったとみなされている体制にうんざりしていたその他の国民からは歓迎されていた。

独立系世論調査機関シグマ・コンセイユの出口調査からも、「賛成」派が優勢であることはほぼ疑いがなかった。

サイード氏の対抗者のほとんどがボイコットを呼びかけ、投票率は低かったが、多くの人が予想していた一桁の投票率よりは高くなった。

投票締め切り後に、サイード氏は喜びに沸く支持者に向けて、「チュニジアは新たな段階に入った」と述べていた。

「チュニジア国民の行動は、世界への教訓であり、歴史の教訓が測られるような規模での歴史への教訓である」と同氏は述べていた。

しかし、米国務省は26日、「新憲法では抑制と均衡が弱められており、人権と基本的自由の保護が損なわれる恐れがあることを懸念している」との声明を出している。

チュニジアの野党連合「国民救済戦線」(NSF)は、選挙管理委員会が投票率の数字を偽って伝えていると非難した。

NSFを率いるアーメド・ナジーブ・チェビ氏は、発表された数字は「水増しされており、オブザーバーが現場で目にしたものと食い違っている」と述べた。

選挙管理委員会は「正直でも公平でもなく、あの数字は詐欺だ」と同氏は述べている。

64歳になる法学教授のサイード氏は、昨年7月25日に議会を解散し、司法と選挙管理委員会を掌握した。

反対者は大統領の行動について、独裁者であったジン・エル・アビディン・ベンアリ氏の失脚から10年以上を経て、独裁体制の確立を目指していると述べているが、支持者の側は、腐敗と政治的混乱が長年続いた後では必要だったとしている。

「10年に及ぶ失望と国家と経済の運営における完全な失敗を経て、チュニジア国民はどのような結果にせよ、古びたものを取り除き、あらたな歩みを始めたかった」と、執行吏のヌールディン・アル・レズギ氏は語った。

国営テレビが実施した調査では、「賛成」票を投じた人たちの主な投票動機は、「国の改革と状況の改善」と「カイス・サイード氏や同氏のプロジェクトへの支持」であったことが示唆されている。

「新憲法に納得した」との回答は13パーセントだった。

人権団体は、今回の憲法案によって、大統領が抑制の利かない巨大な権力を与えられ、サイード氏は議会の承認なしに内閣を任命できるようになり、同氏の罷免が事実上不可能になると警告している。

国際法律家委員会の地域ディレクターであるサイード・ベナルビア氏は、新憲法は「大統領にほぼすべての権力を付与し、その支配に対するいかなる抑制も取り除くものだ」とAFPに述べている。

そして、「手続きは不透明かつ違法であり、結果に正統性はない」と付け加えた。

サイード氏はこの数カ月、繰り返し敵対勢力を脅し、敵を名指しせずに「ばい菌」「ヘビ」「裏切り者」と呼んで痛烈に非難するビデオを公開していた。

25日、同氏は「国家に対する犯罪を犯したすべての者」の責任を追及することを約束した。

アナリストのアブデラティフ・ハンナシ氏は、今回の結果によって、サイード氏は「誰にも気兼ねせずに何でも好きなことができるようになった」と述べた。

「現時点における問題は、野党側の政党や組織の今後がどうなるかだ」

25日の投票は、政治制度の刷新であるとともに、チュニジア初の民主的な大統領直接選挙で地滑り的勝利を収めて以来ほぼ3年にわたる、政治のアウトサイダーだったサイード氏本人の人気を測るものとみなされていた。

チュニジアでは12月に、弱体化された議会の選挙が行われる予定だ。

それまでは「カイス・サイード氏は、ファラオや中世のカリフ、(オスマントルコの地方長官である)チュニス・ベイよりも大きな権力を握るだろう」と、政治学者のハマディ・レディッシ氏は語った。

2011年の革命以降、選挙の投票率は徐々に低下し、ベンアリ氏追放の数カ月後に実施された議会選挙では50パーセント強あったが、2019年は32パーセントだった。

AFP

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