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苦境のチュニジア 憲法改正に多くの国民は希望を託す

憲法改正案の国民投票での承認を祝うカイス・サイード大統領の支持者たち。(AP)
憲法改正案の国民投票での承認を祝うカイス・サイード大統領の支持者たち。(AP)
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30 Jul 2022 04:07:07 GMT9
30 Jul 2022 04:07:07 GMT9
  • 反対勢力は一連の動きを「クーデター」と揶揄したが、多くのチュニジア人は政治的エリートへの不満や長年の経済的停滞から大統領の行動を支持した

チュニス:チュニジアの有権者は、国民投票で大統領にさらなる権限を与える憲法改正案を承認した。苦境にある同国で、多くの人々に希望をもたらす一歩となる。

今週、AP通信のインタビューに応じたチュニジアの人々の一部は、25日の国民投票での承認を祝い、改憲への動きの先頭に立ち、改正文面も自ら用意したカイス・サイード大統領への支持を表明した。
しかし、この憲法改正がこの国の民主主義の将来にどう影響するのか心配だという人々もいる。

改正案は、大統領に広範な行政権を与え、立法府と司法府の影響力を弱めている。

政治的報復を恐れて姓を明かさなかった、配管業を営むアデルさん(51)は、サイード大統領を支持しているが、改正案が行政部門に力を与えすぎていると感じ、25日の国民投票には参加しなかったという。

「大統領によるこの改正は、長期的な影響を考えたものではないと思います。彼の後に大統領になる人たちは、責任を問われることなく好き勝手なことができてしまうことになります」とアデルさんは語った。

サイード氏は2019年、70%以上の得票率で大統領に就任した。その後も広く大衆の支持を受け続けており、最近の世論調査でも支持率は50%を大きく超えている。

今回の国民投票は、サイード大統領がチュニジアの議会を停止し、政府を解体してから1年を経て実施されたものだ。反対勢力は一連の動きを「クーデター」と揶揄したが、多くのチュニジア人は政治的エリートへの不満や長年の経済的停滞から大統領の行動を支持した。

同様に、憲法改正が長年の政治的行き詰まりを解消し、最大政党アンナハダの影響力を低下させると考える国民も少なくない。

また、改正案に賛成票を投じることはサイード大統領に投票することであり、自分たちの運命を変えていく出来事なのだと考える人々もいる。

改正案に賛成したチュニス郊外のファーストフード販売業、サイダ・マソウディさん(49)は、改正が経済改革と生活コスト低減への道を開くことを願っていると語った。

「私たちはただ、この国が良くなり、改革されることを望んでいるだけなのです。ですから、国が以前の状態にまた戻れるようにと、投票をしてきました」とマソウディさんは話し、チュニジアの人々の暮らしはベン・アリ前大統領時代の方が今よりも良かったと思っている、と付け加えた。

しかし、アムネスティ・インターナショナル地域ディレクターのヘバ・モラエフ氏は、今回の改正案の承認を「深く憂慮すべき」結果だとしている。

モラエフ地域ディレクターは声明の中で、改正案はサイード大統領が管理する非公開の作業により作成されたものだと指摘した。

「改正憲法は、司法の独立を保証するものの多くを排除し、軍事裁判からの民間人の保護を廃止し、宗教の名の下に人権を制限したり国際的な人権問題への対処を無視したりする権限を当局に与えるものです」とモラエフ氏は述べている。

公式の速報値によると、今回の国民投票では登録有権者の約3分の1が投票し、94.6%が改正案に賛成した。

反対勢力の指導者たちは、国民投票までのプロセスに欠陥があるとして、投票のボイコットを呼びかけていた。彼らは、投票率の低さはチュニジアの政府システムの変更に対する国民の不快感を反映したものだと主張している。

「今回の国民投票には当初から不正があり、参加基準も定められていませんでした」と国際法律家委員会の地域ディレクター、サイド・ベナルビア氏は語っている。

「改正案の承認は、低い投票率と、不透明で違法なプロセスによって実現したものであり、大統領にはチュニジアの憲法秩序を変更する権限も正当性もないのです」

AP通信が取材した中にも、国民投票に行かなかったという人は何人かいた。

投票しなかった人の中には、政治に興味がないと言う人たちもいれば、憲法改正は自分たちの生活にはほとんど影響がないと言う人たちもいた。また、改正がどのような変化をもたらすのかをそもそも理解していない人たちもいた。

DJのハリル・リアヒさん(26)は、「今度の憲法改正のことには何も興味がないので投票には行きませんでした」と話す。

「カイス・サイードがやっても、他の誰かがやっても、私には同じに思えます。何も変わらないのではないでしょうか」

ニューヨーク大学(NYU)アブダビ校のモニカ・マークス教授(中東政治学)は、近年多くのチュニジア人が、消耗し、幻滅し、冷笑的になっているが、彼らも「政治体制の完全な崩壊を求めたことは決してありません」と指摘する。

「彼らが何年もの間求めているのは、日常生活に具体的な変化をもたらし、彼らが必死に取り組んでいる経済的課題を解決してくれる、政府の効果的なリーダーシップなのです」とマークス教授は語り、多くの人が「たった一人の人間が、システム全体を引き受け、壊し、そしておそらく修復することもできる」という考えにとらわれているのだと説明した。

「チュニジアの人たちの中には、サイード大統領が『ミスター・フィックス・イット(すべてを直してくれる人)』だと信じている人がまだ大勢いるのです。大統領が1年間命令権を独占して国を治めてきたにもかかわらず、国民の生活に目に見えるような変化は起きていないというのに、彼こそがすべてを正してくれる人物だと信じているのです」

AP

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