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92歳のアル・シスターニ師が、戦争に逆戻りするイラクを静かに食い止めた方法

シーア派聖職者の大アヤトラ・アリ・シスターニ師。(AFP)
シーア派聖職者の大アヤトラ・アリ・シスターニ師。(AFP)
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04 Sep 2022 06:09:43 GMT9
04 Sep 2022 06:09:43 GMT9
  • 危機を食い止めたのは、大アヤトラの裏方としての姿勢だったと、関係者は語る

バグダッド:先週、イランの宗教学者であるアル・サドル師の声明がイラクを内戦の寸前に追いやった時、それを止めることができたのはたった一人の人物だけであった。92歳のイラクのシーア派聖職者であり、彼が自国において最も強力な人物であることを再び証明したのだ。

大アヤトラ・アリ・シスターニ師は、イラクの街角で勃発した騒乱について、公の場では何も語らなかった。しかし、政府高官やシーア派関係者によれば、破綻を食い止めたのは、裏でアリ・シスターニ師のスタンスがあったからだという。

このおよそ3年間で最も血生臭いイラクの1週間のストーリーは、戦争を始めたり止めたりする権限が聖職者(多くは隣国のシーア派神権国家イランとの結びつきが曖昧)にある国での伝統政治の限界を示すものだ。

この暴力事件は、イランに拠点を置く聖職者がイラクで最も人気のある政治家、モクタダ・アル・サドル師を非難し、アル・サドル師自身を含む自身の支持者にイランの最高指導者の指導を仰ぐように指示したことから始まったものだ。

アル・サドル師の支持者たちは、政府の建物を襲撃しようとした。夕方までに、彼らは機関銃やバズーカを振り回しながら、ピックアップトラックでバグダッドを車で走り抜けた。

親イラン派の民兵とみられる武装した男たちが、投石したサドル派のデモ隊に発砲した。少なくとも30人が死亡した。

そして、24時間以内に、事件は始まったと同時に突然終わった。アル・サドル師は放送に復帰し、鎮静化を呼びかけた。サドル師の武装した支持者と非武装の支持者が通りから離れ始め、軍は夜間外出禁止令を解除し、首都にはかない平穏が訪れた。

ロイターは、騒乱の発生経緯とどのように鎮圧されたのかを理解するため、イラク政府、アル・サドル師派、親イランとされるシーア派対立派から20名近い関係者に取材した。関係者らの大半は匿名を条件に取材に応じた。

アリ・シスターニ師は、イラクで正式な政治的役職に就いたことはないが、イラクのシーア派宗教の中心地であるナジャフで最も影響力のある学者を務めている。

関係者によると、アリ・シスターニ師の事務所は、アル・サドル師が支持者による暴力を止めない限り、アリ・シスターニ師がこの騒動を糾弾すると理解するよう促したという。

「アリ・シスターニ師はアル・サドル師に、もし彼が暴力を止めなければ、アリ・シスターニ師は戦闘停止を求める声明を発表せざるを得なくなるだろう、そうなればアル・サドル師は弱く見え、あたかも彼がイラクで流血事件を引き起こしたように見えるだろう、というメッセージを送りました」とイラク政府当局者は述べた。

ナジャフに拠点を置き、アリ・シスターニ師に近いシーア派の人物3名は、アリ・シスターニ師の事務所がアル・サドル師に明確なメッセージを送ったことは確認しようとしなかった。しかし、彼らは、アル・サドル師が騒乱を中止しない限り、アリ・シスターニ師がすぐに発言することは明らかであっただろうと語った。

イラン系の現地関係者は、もしアリ・シスターニ師の事務所がなければ、戦闘を停止させた「モクタダ・アル・サドル師の記者会見は行われなかっただろう」と述べた。

アリ・シスターニ師の介入は、今のところさらなる流血を避けることができたかもしれない。しかし、イランと密接な関係を持つ聖職者を含むシーア派聖職者が政治体制の外で大きな力を持つこの国の平穏を守るという問題を解決することはできない。

フセインを倒した米国の侵攻以来、イラクの歴史の重要な局面で決定的な介入をしてきたアリ・シスターニ師には、目立った後継者がいない。アリ・シスターニ師は高齢にもかかわらず、同氏の健康状態について公にはほとんど知られていない。

一方、アル・サドル師自身の経歴における様々な時期も含め、最も影響力のあるシーア派の人物の多くが、イランで学び、暮らし、働いてきた。イランは、聖職者の影響力を国家権力から切り離そうとはしない神政国家である。

先週の暴力事件は、イラク出身でイランに何十年も住んでいるシーア派聖職者のトップであるカゼム・アル・ハエリ師が、高齢のため政財界から引退し、事務所を閉鎖すると発表したことから始まった。このような動きは、シーア派イスラム教の1,300年の歴史において事実上、前例がなく、トップクラスの聖職者は通常、亡くなるまで崇拝される。

アル・ハエリ師は、アル・サドル師の父親からアル・サドル師が率いる運動の宗教的助言者に任命されており、父親自身、尊敬されていた聖職者で、1999年にサダム・フセイン政権によって暗殺された人物である。

アル・ハエリ師は自身の辞任を発表する際、シーア派の間に亀裂を生じさせたとしてアル・サドル師を非難し、宗教問題についてはイラン国家を統治するアヤトラ・アリ・ハメネイ師から今後の指導を受けるよう自身の支持者らに呼び掛けた。

ロイター

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