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シリア・アレッポ中央刑務所の写真が開く「古傷」

政府の刑務所から解放された被収容者。アレッポ南部のアルエイス交差点に到着した際に、反体制派戦闘員と抱擁する様子=2018年7月19日(写真:AP通信)
政府の刑務所から解放された被収容者。アレッポ南部のアルエイス交差点に到着した際に、反体制派戦闘員と抱擁する様子=2018年7月19日(写真:AP通信)
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16 Sep 2022 06:09:43 GMT9
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  • シリアのウェブサイト「ザマン・アル・ワスル」は、シリア軍従軍カメラマンから、2014年に撮影された写真(カメラマンは後に亡命)の全ポートフォリオを受け取ったことを公表した

ベイルート/イドリブ、シリア:マフムード・アル・カラフ氏が父親を最後に目にしたのは10年近くも前のことだ。だが、彼がネット上で出回っていた生々しい写真に写る、あざだらけのやつれた顔を見たとき、一目でそれが自身の父親だとわかった。

写真は、2013年夏にシリア北部のアレッポ中央刑務所に収容され死亡したシリア国民を撮影したとされる800枚の写真のうち公開された4枚のサンプルの一つであった。

ロイターでは、シリアのウェブサイト「ザマン・アル・ワスル」が公開したこの4枚の真正性を直ちに確認することはできなかった。シリア政府はコメントの要請に応じていない。

「ザマン・アル・ワスル」は、シリア軍従軍カメラマンから、2014年に撮影された写真(カメラマンは後に亡命)の全ポートフォリオを受け取ったことを公表した。カメラマンの名前は明かさなかった。

同様の写真はそれ以前にも別のシリア軍従軍カメラマン(「シーザー」というコードネーム呼ばれており、2013年に亡命した)によって撮影されていた。2014年にその一部が公開され、外交的騒動に発展した。戦争犯罪の元捜査関係者らによれば、写真は組織的な拷問と大量殺戮の明確な証拠だという。

米国では2020年にシリアへの厳しい制裁を科す法律が発動された。法律は写真家にちなんで「シーザー法」と称されている。

「ザマン・アル・ワスル」は、最新の写真800枚を「シーザー2」と呼んでおり、「シーザー」による写真と同様にシリア治安部隊の問題行動に光を当てる可能性があることを示唆している。

以前の写真と同様に、「シーザー2」の写真では、皮膚が黒ずんだ遺体が収められており、一部の胴体には傷が認められ、目の周りにあざがあるものもあった。

カラフ氏によると、父親の顔はあざだらけで面影があったのは一部分だけだったという。

「写真を見て、彼らが父にしたことを見るのはとても辛かった」とカラフ氏はロイターに話した。同氏は2014年に母と4人の兄弟と共にトルコに逃れている。

父親が逮捕されたのはシリア内戦が勃発した2011年のことで、それ以来、音信不通になっていたという。

「父はまだ生きているという一縷の望みがあった。今まで消息について公式の通知はなかった」とカラフ氏は話す。

「ザマン・アル・ワスル」のファティ・ブユド編集長はロイターに対し、少なくとももう1件の家族についても写真の中に親族を認めた者がいたと述べている。

2011年以降、何万人もの行方不明者がシリアの刑務所に収容されたと推計されており、残された国内外の家族は行方不明になった親族について消息をつかめずにいる。

国連事務局は先月、「シリア・アラブ共和国内で行方不明であると合理的に認められる人物の状況と所在を明らかにするための…新たな国際機関」の設立を勧告した。

カラフ氏のように数々の家族がこれまで、このような機構の助けなく、行方不明となった身内の行方を探してきた。そのために、おびただしい数の写真や、シリア当局から死後数年後に発行された死亡証明書、あるいは恩赦によって生きて解放された元被収容者が調べられた。

シリア人女性のヤスミン・マシャーン氏は2015年に、政府の拘束下で弟が死亡したことを知った。SNSの「フェイスブック」で出回っていたシーザーによる写真に関して、別のユーザーからタグ付けされたことが発端だった。

「怒りと悲しみから、ただ天に向かって叫びたい気持ちだ。と同時に、『弟がこれ以上拷問されずに済んでよかった』とも思っている」と42歳の彼女はロイターに語った。

マシャーン氏は現在、シーザー家族協会で、政府の強制によって失踪した他のシリア人親族らのために活動している。アレッポ中央刑務所の写真の数々については「古傷が再び開かれた」と話した。

協会は、今年初めに行った調査で、メディアがこうした画像を無節操に公開することで家族に「多くの痛み」を与えていると報告している。

シリア内戦中の犯罪に対する正義を求める団体「シリア・キャンペーン」の事務局長ライラ・キキ氏は、「シーザー2」を可能であれば国際刑事手続きで検証し使用できるようにシリアの人権団体や独立調査機関に渡すべきだとしている。

キキ氏はロイターに対し、「シリアで行方不明になり拘束された人々の家族は、報道を通して彼らの死を知らされるべきではない。また、親族の状況を明らかにするために、拷問され傷つけられた遺体の悲惨な画像をネット上で探すことを強いられることもあってはならない」と述べた。

国際正義説明責任委員会(CIJA)は、「シーザー2」の閲覧を求めなかったものの、他の人権侵害についての主張を「おそらくは裏付けている」としている。

CIJAの渉外部長Nerma Jelacic氏は、「写真は、多くが命を落としたアレッポ中央刑務所の被収容者らの境遇を明らかにする手がかりになるだろう。また、将来、国の司法関係者によって裁判で使用される可能性もある」と言う。

国連の「シリア・アラブ共和国に関する調査委員会」に所属する戦争犯罪の捜査関係者らは、「報告されている写真の出現」は、シリア国内の行方不明者らの状況を明らかにする国際的な機構が「緊急に必要である」ことを改めて示していると発言した。

バッシャール・アサド大統領は最初のシーザーの写真について、2015年のインタビューで「証拠のない疑惑」として否定して以来、直接コメントしたことはない。

ロイター

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