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パレスチナ人移民が海で遭難する「人道的悲劇」への懸念が高まる

海で亡くなったパレスチナ人移民2人のうち1人の遺体の周りに集まって悲しむ人々。(AFP)
海で亡くなったパレスチナ人移民2人のうち1人の遺体の周りに集まって悲しむ人々。(AFP)
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18 Nov 2022 05:11:38 GMT9
18 Nov 2022 05:11:38 GMT9

モハメッド・ナジブ

パレスチナ人がより良い生活を求めて欧州に渡ろうと違法かつ危険な航海に出て海で命を失う悲劇が相次いで数十人が死亡しており、本国で悲しむ家族を苦しめている。当局者が語った。

彼らはより良い仕事の機会や生活条件の改善を求めて本国を後にする。ところが、途中で溺れてしまったり、目的地に着いても沿岸警備隊に拘束されたりする。そして結局は、生き残った人の多くは元いた場所に送還されてしまう。

パレスチナ外相の政治顧問であるアフマド・アル・ディーク氏がアラブニュースに対し語ったところによると、ギリシャの海岸に到達しようと危険な旅に出る人々は密入国斡旋業者に7000ドルから1万ドルを支払って、老朽化しているうえに人を乗せ過ぎているため航海には適さないボートで運んでもらう。移民にはガザ地区の人もいれば、シリアやレバノンのパレスチナ人もいる。

約10人の乗客用に設計されているボートに40~50人もの人が乗ることもあり、転覆や沈没の危険の主な要因となっているという。主にトルコやリビアから出航するボートの場合だが、密入国斡旋業者間のいざこざにより故意に沈没させられることもある。

アル・ディーク氏は次のように語った。「人身売買業者や人間の臓器(の密輸業者)がこの人道的悲劇の背後にいる。我々はそれをパレスチナの世論の問題にしようと取り組んでいる。子供たちがこのような死の旅に出るのを家族が止められるように」

遭難したボートは密入国斡旋業者が秘密にするため何日も発見されないことが多い。こういった業者は切羽詰まった乗客から金を巻き上げたうえ、被害者の証言によれば、彼らを脅したり場合によっては殴ったり虐待したりするという。ギリシャの警備隊に捕まった時には特に残酷になると同氏は付け加えた。

同氏は、外務省内に特別部署を設置し、海で行方不明となったパレスチナ人の情報収集のほか、彼らの家族および溺死事故が発生した国のパレスチナ大使館、当局、沿岸警備隊との意思疎通を行っていると語った。

この部署はパレスチナ情報機関と協力して犠牲者数の把握や悲劇を引き起こした組織の特定も行っている。また、拘束下あるいは救護施設にいる生存者に連絡を取って家族に彼らの近況を伝えたり、遺族が犠牲者の遺体を送還してもらうのを支援したりしている。

ガザ地区を統治しているハマス当局の関係者は、過去5年間に危険な航海で溺死したパレスチナ人の数はおそらく約40人だと語る。別の関係者によると実際には360人にも上る可能性があるという。

ガザ地区のアル・アズハル大学の政治学教授であムハイメル・アブ・サアダ氏はアラブニュースに対し、同地区における高い失業率や大学卒業生の就職難に起因する経済的圧力から、20代の若者がより良い生活を求めて危険な渡航をしようとするのだと指摘した。

「ガザ地区の若者の失業率は45%、大卒者では65%に達している」と同氏は語った。「ガザ地区の政府の職の大半はハマス運動のメンバーで占められているのだ」

ハマスに続いて2番目に大きい雇用者とされている国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は人員削減を行い、現在は契約職員のみ募集しているという。

一方、パレスチナ自治政府は2007年にガザ地区の大学卒業生の採用を停止しているうえ、イスラエルでの就労許可の取得手続きも複雑だとアブ・サアダ氏は指摘する。

2006年以降イスラエルによって全面的に封鎖されているガザ地区には200万人が暮らしている。

ガザ地区のハマス政治局トップのバシム・ナイム氏がアラブニュースに対し語ったところによると、ハマスはモスクでの金曜説教やラジオ・テレビのトーク番組を通して、違法な渡航を行おうと考えないよう市民を教育することに取り組んでいるほか、多くのアラブ・非アラブ諸国にガザ地区の大学卒業生に職を提供して受け入れるよう呼びかけているのだという。

パレスチナ情報筋はアラブニュースに対し、パレスチナ移民を乗せてリビア、チュニジア、トルコの海岸から出航したボートが沈没して数人の命が失われる事故が発生しない週はほとんどないと語った。また、強欲な密入国斡旋業者が、エンジンが一つしかなく船長もいない不適当なゴムボートを使用しているうえ、許可された乗客数の少なくとも2倍の人数を乗せているという生存者の証言に言及した。

これらの業者は、乗客の一人にボートの操縦方法について最低限の訓練をするという。しかし、航海の正しい手順や波などの危険への対処法を教わらないため、悲劇がしばしば起こるのだ。

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