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国連事務総長、23年のウクライナ戦争終結を強く望む

国連のアントニオ・グテーレス事務総長。(AFP)
国連のアントニオ・グテーレス事務総長。(AFP)
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20 Dec 2022 02:12:17 GMT9
20 Dec 2022 02:12:17 GMT9
  • グテーレス事務総長は、国連とトルコによる仲介のもとで結ばれたウクライナからの穀物輸出とロシアからのその他の輸出の再開合意は「変化をもたらしている」と言う

ロンドン:国連事務総長は19日、2023年にウクライナ戦争が終結することを強く望むと表明した。また、他の世界各地の紛争地域については、イラン政府によるデモ弾圧を非難し、極右勢力によるテロの脅威に立ち向かうよう全ての国に求め、イスラエルの新たな右派政権に対し「二国間解決以外の選択肢はない」と伝えるよう国際社会に呼びかけた。

アントニオ・グテーレス事務総長は今年最後の記者会見を開き、多岐にわたる話題に触れた。その中で、ウクライナ戦争については近い将来の停戦協議は見通せず、既にエスカレートしている軍事的衝突が続くことが予想されるとしつつも、欧州で第二次世界大戦以降最も壊滅的なものとなっている紛争を2023年末までに終結させるためにあらゆる可能な手段をつくすよう呼びかけ、自身もその終結を強く望むと述べた。

他の問題にも触れた。アフガニスタンのタリバン政権に対しては、政府内にあらゆる民族集団を受け入れ、女性があらゆるレベルの教育を受ける権利や働く権利を回復させ、領内での全てのテロ活動を止めるよう求めた。また、朝鮮半島の非核化の推進に向けた国連の決意を改めて表明したうえで、「東アジアおよび世界の平和と安全の基礎となる」この目標を国際社会も追求しなければならないと述べた。

また、ツイッターを含むあらゆるソーシャルメディアプラットフォームの管理者に対してもいくつか提言を行った。「あなた方には、報道の自由を守る責任があるのと同時に、ネオナチズムや白人至上主義などの過激主義的見解やヘイトスピーチがプラットフォームに掲載されないようにする責任がある」

グテーレス事務総長は2022年を振り返り、「絶望する理由はたくさんあるかもしれない」と述べた。世界的問題の解決を不可能とは言わないまでも困難にしている地政学的分断、生活費の危機的高騰、格差拡大、そして債務返済額が数十年で最大となる前年比35%もの増加を見せる中で世界最貧国の大半が「債務超過とデフォルトの深淵を覗いている」現状などだ。

しかし今年も終わりを迎えようとしている今、「我々は絶望に抵抗し、幻滅に対抗し、真の解決策を見出そうと努めている」

グテーレス事務総長は、世界の陸地と海洋の保護についての歴史的な合意が19日に結ばれたことで開発途上国の生物多様性保全のための重要な資金の提供が可能になったことに言及し、「我々はようやく自然との和平協定を結び始めた」と述べた。

また、いくつかの紛争についての「一定の進展」を列挙した。

エチオピアでは、「アフリカ連合の和平調停努力は希望を持っていい理由だ」。コンゴでは、アンゴラと東アフリカ共同体が主導する外交努力により、鉱物資源が豊富な同国東部における危機の終結に向けた「政治的対話の枠組み」が作られた。イエメンでは、6ヶ月間の停戦が「人々に現実的な平和の配当をもたらし」、停戦は更新されなかったものの「大きな軍事作戦は行われておらず」、航空便や燃料・食料供給は継続している。

ウクライナでも、国連とトルコの仲介のもとで7月に結ばれたウクライナからの穀物輸出とロシアからの食料・肥料輸出の再開合意が「変化をもたらしている」

グテーレス事務総長は、当面は停戦協議が見通せない中で国連は現在このイニシアティブに努力を集中していると述べた。このイニシアティブのもとで輸出と検査を増やしたことで、黒海の3つの港から1400万メートルトン以上のウクライナ産穀物が出荷されたという。

また、ロシアからの小麦輸出は「3倍に増加した」と指摘し、国連は黒海の港からロシア産アンモニア(切実に必要とされている肥料の主原料)を輸出する可能性についても検討していると述べた。

国連は、ウクライナとロシアが1月に祝う正教のクリスマスまでに両国間の捕虜交換を加速することにも大きな関心を寄せているという。

グテーレス事務総長はテロと関連して、欧米諸国や世界のその他の地域にけるネオナチズム、白人至上主義、反ユダヤ主義、反イスラム主義などのあらゆる形態の過激主義を非難するよう求めた。

「これは明確な脅威であり、我々は相当な決意を持ってその脅威と闘わなければならない」

さらに、世界の民主主義社会に対する脅威の一例として、先日ドイツでクーデターとされる計画が摘発され極右運動とつながりのある20人以上が拘束された事件に言及した。

グテーレス事務総長は、イランの平和的デモに対する体制の弾圧についても厳しく批判した。このデモは、22歳の女性がヘッドスカーフを適切に着用していないとして道徳警察に拘束された後に死亡した事件をきっかけに9月に発生したものだ。このデモを監視している団体「ヒューマン・ライツ・アクティビスト・イン・イラン」によると、弾圧により450人以上が殺害され1万8000人が拘束されている。

グテーレス事務総長は、「我々が目の当たりにしているのは大規模な人権侵害であり、強く非難する」としたうえで、イラン政府の対応は「全く容認できない」ものだと述べた。また、9月にイランの大統領に対してこの問題を提起したことを明らかにし、国連はイランへの抗議を続けているとした。

2015年にイランと主要6ヶ国との間に結ばれ、2018年にドナルド・トランプ前大統領の米国が離脱した核合意(JCPOA)については、合意が消滅「しないようにするために、限られた範囲の信頼に基づいてできることは全て行うつもりだ」と述べた。

この核合意はイランの核開発の抑制と引き換えに制裁を緩和したものだが、米国の復帰に向けた交渉は行き詰まっている。「現時点ではJCPOA消滅の深刻なリスクに直面している。私の意見では、これは地域内外における平和と安定にとって非常に悲観的な要因だ」

数十年来のイスラエル・パレスチナ紛争については、今年になって約200人以上のパレスチナ人が殺されておりその大半が民間人であることについて、また、イスラエルでパレスチナ国家に反対する者を含む史上最も右寄りの政権が選出されたことについて、グテーレス事務総長はコメントを求められた。

テーレス事務総長は、国連はパレスチナ人への暴力を非常に明確に非難するとともに懸念を抱いていると述べた。「二国間解決に次ぐプランBはないと信じるからだ。その点に関するイスラエルの次期政権の動きについて非常に懸念している」

「国際社会全体がイスラエル政府に対し、二国間解決以外の選択肢はないこと、また二国間解決を疑問視するような一方的な行動を取るべきではないことを明確に説明することが非常に重要だと考える」

AP

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