• ナセル・アブ・ハミド氏の遺体はイスラエル人捕虜の返還のための交渉材料としてイスラエル側に保持される見通し
• アブ・ハミド氏（50）はパレスチナのマムフード・アッバース大統領率いるファタハ党傘下の武装組織の元指導者だった

エルサレム：イスラエルの国防大臣は21日、20日に肺がんにより死去したパレスチナ人囚人の遺体を埋葬のために引き渡すことはしないと発表した。

ベニー・ガンツ国防相の事務所は、「アル・アクサ殉教者旅団」創設者の一人だったナセル・アブ・ハミド氏の遺体は、ガザ地区で過激派組織のハマスに捕らえられているイスラエル人やイスラエル兵の遺体の奪還のための交渉材料として留め置くことになると発表した。

アブ・ハミド氏（50）は、パレスチナのマフムード・アッバース大統領率いる政党「ファタハ」傘下の武装組織の元指導者だった。

アブ・ハミド氏は、2000年代初頭に起きたイスラエルの占領に対する民衆蜂起「第2次インティファーダ」でイスラエル人7人の死亡に関わったとして有罪判決を受け、2002年以降、複数回分の終身刑に服していた。

パレスチナ市民は20日、アブ・ハミド氏の死に抗議をするためヨルダン川西岸地区でデモ行進をし、多くの店舗が休業した。

イスラエルはしばしば、攻撃の実行中と思われる最中に死亡したパレスチナ人の遺体をそのまま留め置くことがある。

イスラエルは、その方針が新たな攻撃の抑止力として機能し、囚人交換のためのカードとして使えると説明するが、人権団体などは同措置が悲嘆に暮れる家族に科される一種の連座であるとして非難する。

ハマス側は現在、2人のイスラエル人捕虜と、2014年のガザ侵攻で死亡した2人のイスラエル人の遺体を保持している。

ハマスに捕らえられている4人のイスラエル人の家族と遺族は21日、バチカンでローマ教皇フランシスコと面談をし、教皇は「4人の家族、特に母親の苦しみに対して深い連帯を表明した」と、イスラエル外務省は伝えた。

パレスチナ当局はここ数ヶ月、アブ・ハミド氏の健康状態が悪化しているとして同氏の解放を求めていたが、20日にアブ・ハミド氏が死亡したことでイスラエル政府を非難した。

ガンツ国防相は、イスラエルがアブ・ハミド氏の死に関与したとする主張を全面的に否定した。

ここ数十年で最多の死者を出したイスラエル・パレスチナ紛争の内の1年も暮に近づき、交渉による二国家解決の可能性がますます遠のく中で、アブ・ハミド氏が死去することとなった。

AP