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パレスチナ自治政府に試練の年

ヨルダン川西岸地区のラマッラー市郊外、パレスチナ自治政府の新庁舎、8月28日撮影。(AP通信)
ヨルダン川西岸地区のラマッラー市郊外、パレスチナ自治政府の新庁舎、8月28日撮影。(AP通信)
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02 Jan 2023 12:01:59 GMT9
02 Jan 2023 12:01:59 GMT9

モハメッド・ナジブ

ラマッラー: パレスチナ自治政府は、重大な問題と深刻な存続の危機に直面していると、複数のパレスチナ当局者やパレスチナ問題の専門家がアラブニュースに語った。

極右の閣僚たち、そして、パレスチナ人の権利の否定と既に不安定なパレスチナ自治政府の弱体化を政策とする総理大臣からなるイスラエル新政権を最も懸念すべき脅威であると当局者たちと専門家たちは指摘した。

パレスチナ自治政府は、パレスチナ解放機構とイスラエルによるオスロ合意の調印後、1994年に設立された。ヨルダン川西岸地区とガザ地区で暮らす約500万人のパレスチナ人の政府機能と、東エルサレムとその地区の35万人に対する限定的な公務についてパレスチナ自治政府は責任を負っている。

しかし、パレスチナ自治政府は、近年では、ガザをハマスに奪われ、選挙を中止し、地域内や派閥間の対立により分裂してしまっている。現在87歳となるマフムード・アッバース大統領を中心とした無力な執行部はパレスチナの人々の助けとなることをほとんど何もしていない、と複数の当局者たちが匿名を条件に語った。

ファタハ党内の分派の指導者たちが高齢のアッバース大統領の公認争いを行っている状況に、議会も選挙も不在のパレスチナで法的に、憲法上、そして政治的にどのように対応すべきかは誰にとっても不明だ。結果、暴力的な権力の移行の恐れが高まっている。

政治評論家で元閣僚のガッサン・ハティーブ氏は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、イタマル・ベン・グヴィル氏、ベザレル・スモトリッチ氏が、イスラエルが代行徴収したパレスチナの税金からさらに大きい金額を差し引くかもしれないと、アラブニュースに語った。

これが実行された場合、パレスチナ自治政府の支出能力が弱まり、市民に対する責務の遂行と17万人の公務員と軍人の給与の80%の支払いが妨げられると、ハティーブ氏は述べた。

ハティーブ氏は、さらに、パレスチナ自治政府の弱点と地域内において財政的義務を果たす能力の欠如によりヨルダン川西岸地区の治安悪化は加速してしまうはずだと言った。

ヨルダン川西岸地区と東エルサレム地区のおいて段階的に増加しているイスラエルの圧力、アル・アクサへの侵攻、入植地での建設ラッシュもパレスチナ自治政府の権威失墜の要因となっている。

パレスチナ自治政府の役割は、衝突発生時の傍観者に過ぎない。自治政府の有する保安関連部局には何も出来ないのだ。

最近2年間でパレスチナ自治政府の能力と影響力は極端に低下したと考えていると、ハティーブ氏は言った。

開発プロジェクトや新しいインフラの整備、道路の舗装工事と、パレスチナ自治政府は何一つして完遂できず、パレスチナ市民の信望を失いかけている。

ハティーブ氏は、以前、パレスチナ自治政府の計画・労働大臣を務めていた。

パレスチナ自治政府の実務能力は低く、アルダス東部地区とヨルダン川西岸地区の民間病院に対する債務や、請負業者、民間企業の当局へのサービス提供への対価支払義務を果たしていない。

パレスチナの新社会人を雇用吸収することも自治政府は出来ていない。

一方、パレスチナ当局者の一部は、イスラエルにとっても被害甚大となり得る安全保障上の全面的な混乱が発生することを鑑みると、自治政府を崩壊するがままにすることはイスラエルや米国、EUにとって利益にならないはずだと考えている。

パレスチナのアーメド・マジダラニ社会開発大臣は、パレスチナ自治政府は、「イスラエルが財政的、政治的、軍事的、経済的な戦いを我々に仕掛けて来たとしても、次の段階では必要な手段を講じて、課題に立向かうだろう」と、アラブニュースに対して述べた。

マジダラニ大臣は、パレスチナ自治政府が直面する最大の課題は、「パレスチナの大義に関連する地域的・国際的な優先事項の変化」であると語った。

イスラエルは、その一方で、ハーグの国際司法裁判所にイスラエルによるパレスチナ自治区の占領に関連した法的課題について判断を下すことを求めた国連総会決議を受けて、パレスチナの人々への制裁を計画している。

イスラエルの情報筋によれば、イスラエルはパレスチナ自治政府執行部に対する制裁リストを準備しており、その中には、当局関係者に対するVIP許可70件の取り消しも含まれているという。

こうしたことが、最近準備されているパレスチナ自治政府に対する制裁の一部となるだろうと同情報筋は付け加えた。

制裁についての決定は、イスラエルのネタニヤフ首相、ヨアフ・ガラント国防相、エリ・コーヘン外相が治安当局者と調整の後、政治レベルで下される見通しである。

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