
ヨルダン川西岸地区、ハワラ:占領地ヨルダン川西岸地区で27日、銃を持ったパレスチナ人の容疑者が、車に乗っていたイスラエル系米国人を殺害した。その前に、ユダヤ人入植者がパレスチナの村で暴動を起こしていた。それは、安全保障に関する双方の協力を促す米国の取り組みを無視する暴力の噴出だった。
その最新の事件では、エリコの近くの幹線道路で複数のパレスチナ人が、走行中の車から数回発砲し、車内にいたイスラエル人を殺害して逃走した、とイスラエル当局は発表した。米国務省は、殺害された人物は米国民でもあったと発表した。
パレスチナの組織はまだ犯行声明を出していない。米国務省は殺害された人物の身元を特定していない。
ユダヤ人入植地に住む兄弟2人が26日に射殺された後、イスラエルはヨルダン川西岸地区の守備隊を強化した。その事件がきっかけとなり、入植者による暴動が起きた。パレスチナ人1人が殺され、多くの人が負傷し、数十台の車と住宅が放火された。
イスラム教の断食月ラマダンとユダヤ教の祝祭「過越(すぎこし)の祭り」を数週間後に控えて、仲介国は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が極右連合の長として返り咲いた後に高まった緊張を鎮めようと努力している。
これらの事件は、恒久的和解を求める米国政府と、パレスチナ人の攻撃に対する厳しい措置を求める強硬派の入植者がいるイスラエル政府との間で綱渡り外交をするネタニヤフ氏の能力に疑念を投げかけている。
定例記者会見でネッド・プライス米国務省報道官は、双方による攻撃を非難し、プライス氏が言うところの「(入植者による)自警団的暴力行為」の停止を求めるネタニヤフ氏の声明を歓迎した。
「イスラエル政府が、失われた家や財産の補償に加えて、これらの攻撃の責任者の完全な責任と訴追を確保することを我々は期待している」とプライス氏は述べた。
26日、ヨルダンは米国特使とともに異例の会議を主催した。その会議でイスラエル高官とパレスチナ高官は、ネタニヤフ政権がユダヤ人入植地を発表するペースを落とすことを約束し、過去の和平合意を再確認した。
外交は2014年に行き詰まった。イスラエルは現在、ヨルダン川西岸地区をパレスチナに引き渡すことはないと主張している。パレスチナ自体も、国際的に支持されているマフムード・アッバース大統領政権と、和平に反対するイスラム主義者に分かれている。
イスラム過激派組織ハマスは、アブデル・ラティフ・アル・カヌア報道官を通じて、27日の攻撃はイスラエルの攻撃に対する当然の対応だと発表した。
「占領軍や入植者集団が行う犯罪には、刺傷、銃撃、車での体当たりで対応する」とカヌア氏は声明で述べた。
「困難な日々」
イスラエルのヨアブ・ガラント国防相は、厳重な警備の下、26日に起きた暴動事件の現場であるハワラ村の人通りがまばらな通りを視察し、「我々の前には困難な日々が待っている」と記者団に語った。
アッバース氏は、イスラエル政府のせいでハワラの暴動が起きたと主張した。
パレスチナ人の少女、ラマー・アブサリーズさん(10)は、彼女の家は入植者に放火された家の一つだと話した。「安全な場所がなかったので、母は私たちを隅に移動させました。私たちが中にいたときに、彼らは全ての窓を割りました」
イスラエル警察はこの暴動事件で2人を逮捕したと発表した。ネタニヤフ氏は国会で、治安部隊がイスラエル人兄弟を殺害した銃撃犯を追跡していると述べた。
26日から、追加の陸軍大隊4個と国境警備中隊2個が、増援としてヨルダン川西岸地区に配置された。イスラエル軍が発表した。
「落ち着きを取り戻すよう皆に求める」とガラント氏は述べた。「市民が私刑を加えるような状況は許されない」
パレスチナ当局によると、2023年にイスラエル軍によって殺されたパレスチナ人は、武装勢力や民間人を含めて63人。パレスチナ人の攻撃でイスラエル人13人(1人は警察官)とウクライナ人観光客が死亡した、とイスラエルは発表している。
ロイター