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5月の選挙を目前にして、新戦略を模索するトルコの野党

アンカラで行われた会合で、共和人民党の市長らと写真撮影に応じる同等のケマル・クルチダルオール党首。目前に迫った選挙には、まだいくつもの不確定要素が残っている。(ロイター通信)
アンカラで行われた会合で、共和人民党の市長らと写真撮影に応じる同等のケマル・クルチダルオール党首。目前に迫った選挙には、まだいくつもの不確定要素が残っている。(ロイター通信)
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05 Mar 2023 10:03:28 GMT9
05 Mar 2023 10:03:28 GMT9
  • 優良党の野党連合からの離脱は、エルドアン大統領の立場の強化に繋がる

メネクセ・トキャイ

アンカラ:5月14日の国政選挙が数週間後に迫る中、トルコの中道右派の民族主義政党である「優良党」は、金曜日、連合を組んでいた5野党と決裂した。その後、土曜日に、野党連合の指導者らは会合を開いた。

国民野党連合で2番目の多数政党であった優良党が、他の5野党が大統領候補として推した最大野党「共和人民党(CHP)」のケマル・クルチダルオール党首を支持しなかったため、この決裂が発生した。

優良党は、現在エルドアン大統領の主要な支援勢力である極右政党の民族主義者行動党出身の政治家グループによって2017年に設立された。

優良党のメラル・アクセナー党首は、クルチダルオールCHP党首の代わりに、CHPに所属するイスタンブールのエクレム・イマモグル市長とアンカラのマンスール・ヤバス市長を大統領候補として提案している。アクセナー優良党党首は、これら2人の市長にクルチダルオールCHP党首のみならず、所属するCHP自体に反旗を翻し、自分たちで立候補者の擁立を進めることを呼びかけている。

両市長は、しかし、クルチダルオールCHP党首を支持することと、大統領になる意思は無いことを言明している。

「結束と連帯は死以外のすべてに打ち勝ちます」と、クルチダルオールCHP党首は金曜日にツイートした。クルチダルオール党首は、土曜日に、ヤバス市長とイマモグル市長と面談した。

野党連合からの優良党の離脱は、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領に対抗する統一勢力を形成しようとうする野党の長期にわたる取り組みにとって大きな痛手である。

しかし、トルコでは、深刻化する経済危機や、公式発表では45,000人越えの死亡者を出し行方不明者も依然多数の先月の大震災に対する政府の対応に、国民の不満が現在も広がり続けている。

潜在的候補者たちの中で最有力視されるクルチダルオールCHP党首は、支持拡大の努力を継続している。同党首は金曜日に、2つの左翼系政党と会談した。

ロンドンを拠点とするテネオ・インテリジェンス社の共同社長であるヴォルファンゴ・ピコリ氏は、「CHPとその同盟政党がクルド系有権者に対する訴求力を首尾よく得られるかどうかはまだ分かりません。優良党の離脱の可能性が高く、国民野党連合にいずれの党が残存するのであれば、理屈の上では、クルド系有権者への働きかけは容易になるはずです」と、アラブニュースに語った。

「過去20年間と同じく、野党がエルドアン大統領にとって最大の資産となってしまう展開のようです。主要な野党連合が混乱を来したことで、5月の選挙での勝利に向けて、現況、エルドアン大統領の立場は強化されたように見受けられます」

政権寄りのメディアと政府当局者は、最近の決裂は国政を担当するための結束が欠けていることを示していると、既に野党連合に対する攻撃を開始している。

イスタンブールに拠点を置くシンクタンクの常務理事で政治学者のセレン・セルヴィン・コルクマズ氏は、「エルドアン大統領にとって主要な脅威となり得るのは、野党の結束です。そして、エルドアン大統領は、野党は団結して政権運営することなど出来ないのだと人々に思わせるように仕向けてきました」と語り、優良党のアクセナー党首が野党連合から離脱する決定を下したことにより、エルドアン大統領は「ナラティブ優勢」を得たと付け加えた。

専門家たちは、トルコ政府が市民の関心を逸らし策を弄する余地を作るための絶好の機会を得たと強調している。

「大震災の結果、エルドアン大統領は厳しい状況に立たされました。しかし、市民が震災被害の因果関係や政府の責任について話し合うべき時に、政府も野党も共に目前にせまった選挙と連合の立ち上げに夢中になっています」と、コルクマズ氏は述べた。

「これは、野党にとっては、選挙で勝つことが困難な状況です。選挙に向けて野党は新しい筋書を創らなければならなくなったからです。野党はその共闘のための連合の形成について考え直さなければならなくなりました。連合を組む対象を広げ、選挙に勝てるという印象を与え得る新しい心理的オーラを創出する必要が出てきたのです」と、コルクマズ氏は付け加えた。

親クルド派の「人民の民主主義党(HDP)」は、自勢力に都合の良い候補者を野党連合が推薦するのであれば、別途大統領候補を指名しないだろうとコルクマズ氏は予想している。

優良党は、HDPとのいかなる戦略的同盟にも強く反対をしている。アクセナー優良党党首は、9月に、HDPが参加するならば共同歩調を取らないと語った。

現況、いずれの陣営も50%の票を確保できないため、HDPの立場は選挙においてこの上なく重要だと考えられている。HDPの中央執行委員会も土曜日に召集され、最新の状況についての協議が行われた。この会議に続いて、HDPの共同議長ミタート・サンジャー氏は、「HDPはその責任を自覚しています…誰も絶望してはいけません」と述べた。

しかし、ピコリ氏は、いかなる形であれHDPと共闘関係を結ぶことは、クルチダルオールCHP党首とその同盟者たちにさらなる批判が浴びせられることに繋がると考えている。HDPは非合法組織のクルディスタン労働者党と繋がりがあると考えられているからである。野党連合は、HDPに関連する動きを起こすのであれば、それが何であれ注意深く検討する必要があると、ピコリ氏は考えている。

迫り来る選挙には依然いくつもの不確定要素が残っているものの、確かなことが1つある。この選挙は、20年に及ぶエルドアン政権の歴史の中で最大の激戦になるということだ。

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