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国連専門家、イラクに強制失踪の調査と防止法の制定を要請

イラク政府筋は、25万人から100万人以上が行方不明になっていると推定している。(AFP/ファイル)
イラク政府筋は、25万人から100万人以上が行方不明になっていると推定している。(AFP/ファイル)
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05 Apr 2023 07:04:37 GMT9
05 Apr 2023 07:04:37 GMT9
  • 強制失踪問題の調査委員会メンバーが、最近のイラク訪問に関する報告書を発表した。
  • 過去50年にわたるイラクの暴力の波の中で、最大100万人のイラク人が行方不明となったと推定されている。

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク市: 国連の専門家らは4日、イラク各地における強制失踪の広まりに強い懸念を表明した。

イラクでは、過去50年間に最大100万人が行方不明になったと推定されており、専門家らは、処罰がなされず、「再被害」の文化が今もまん延する中、失踪が続いていると述べた。

国連の強制失踪委員会は、「イラクにおける強制失踪の次元、範囲、多様性を鑑みると、イラク政府、近隣諸国、および国際社会による緊急かつ協調的な介入が必要である」と述べた。

同委員会はイラク当局に対し、失踪事件を迅速に調査し、「この凶悪犯罪を防止し、根絶し、回復を図る」ための法律を導入するよう促した。

委員会のメンバーは、国連の「強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約」の履行を監視する独立的立場の専門家で、4月4日に、2022年11月に行われたイラク訪問の報告書を発表した。

バグダッド当局の協力を歓迎し、訪問は「条約を最初に批准した国のひとつであるイラクと同委員会の相互関係の新たなステップ」を構成すると述べつつも、すべきことがまだ多く残っていると付け加えた。

委員会メンバーは訪問期間中、現在も続いているという失踪の被害者たちからの証言を得た。

あるイラク人の母親の証言は、専門家たちが「典型的な、進行中のパターン」と述べる状況を際立たせる、次のようなものだった。「息子がいとこに会いに出かけたときのことです。息子が家を出てすぐ、甥に食べさようと持たせたはずのパンを置き忘れていたで、電話しました。息子は検問所にいて、制服の男たちに検査されていると答え、終わったらすぐ電話すると言いましたが、それきり連絡が途絶えました」

「それ以来、あらゆる場所で、刑務所も全部あたって、あらゆる当局者たちと一緒に息子を探しましたが、情報はまったく出てきませんでした」

専門家によると、特定可能な別のパターンは、母親がダーイシュのキャンプで性的暴行を受けた後に生まれた、ヤジディ教徒の子どもたちの強制失踪だという。報告書によると、ある場合、母親たちはイラクに戻った後に子どもを孤児院に置いていくよう強制され、後ほど家に連れて帰るため迎えに行くと、子どもは他の家族のところに「里子に出された」と言われた。これらには国家の直接的関与があったとされている。

何百人もの家族が、外界との接触が不可能な、トルコ、シリア、イランのキャンプに収容されていると思われる愛する人を探していると、委員会は述べている。

1968年以降、紛争や政治的暴力の結果として行方不明となったイラク人の公式推定人数は、25万人から100万人である。

これ以上厳密な人数の特定は不可能だが、これらの被害者は、過去50年間の失踪の「5つの波」の間に行方不明になったと、委員会のメンバーは述べた。

サダム・フセイン大統領による「イラクのクルド人大量虐殺作戦」の一環として、1968年から2003年の間に、クルド人10万人を含む最大29万人が強制失踪の犠牲となった。

2003年のイラク侵攻とその後数年間の占領期間中、米軍主導の軍隊は少なくとも20万人のイラク人を捕らえ、そのうち9万6千人は米国が管理する刑務所に収容された。国連の専門家によると、拘束された人々の中には、反政府活動への関与が疑われ、令状なしに逮捕された人も、単に「たまたまそこにいた民間人」も含まれていた。

報告書によると、ダーイシュがイラクの一部を支配していた2014年から2017年の間にも、イラク人兵士や治安部隊のメンバーの拉致や大量虐殺の波が発生した。さらに、人民動員隊がダーイシュから主要都市の支配権を奪還するための軍事作戦を開始した際、親政府軍は主に男性と少年のスンニ派アラブ人数千人を強制失踪させたと付け加えている。

別の強制失踪の波は2018年から2020年にかけて、あらゆる宗教的、民族的背景の人々による抗議活動の際に、発生したと報告書は述べている。

国連の専門家たちはイラク当局に対し、強制失踪を直ちに特定犯罪に分類するよう促し、「いまだに同国の国内法に独立した犯罪として列挙されておらず、訴追できない」と指摘した。

また、政府に対し、「すべての失踪事件に対する包括的な捜索、捜査戦略を確立し、すべての被害者が遺体発掘プロセスや法医学サービスを利用できるよう、国の法医学能力を強化、拡大する」ことを求めた。

報告はまた、イラク当局はさらに、「すべての被拘禁者の名前ごとに拉致発生場所の登録を系統的に照合する」、独立したタスクフォースを直ちに立ち上げるべきで、同タスクフォースは、すべての被拘禁者が登録され、その所在が親族たちに正当に知らされるようにしなければならない」と付け加えた。

委員会のメンバーはイラク当局に対し、当局が否定する秘密拘禁の根強い疑惑に対処するため、「衛星写真やドローンなどのあらゆる技術手段により、秘密の拘禁場所の有無を検証する、事実調査任務を遂行する独立委員会」を立ち上げるよう指示した。

被害者のニーズと権利の問題に対処するため、委員会はイラク当局に対し、「失踪の直接的な結果として被害を受けた個人が、公式に被害者と認定され、条約で定められた権利を得られるようにするための、立法、司法措置」を実施するよう求めた。

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