ガザ市：昨年、ガザ地区のイスラム支配層が輸出入税を増税したことで、他地域から分断されて貧困状態にある地区で事業を営む人々の不満が高まっている。

今年3月、地区を統治するハマスが輸入果物と輸出魚類に新たな税金を課した。

業者がストライキを実施したことで果物への課税は後日撤回されたが、海産物には今でも課税されている。税金の支払いを拒否している業者は、検問所で生鮮品が留め置かれるリスクに晒されている。

海に面するガザ地区を出入りする品物には新たな税金が次々と課せられているが、今回の増税はその最新の例だ。同地区では230万人のパレスチナ人が必死な毎日を送っている。

ハマスは2022年7月、ミネラルウォーターや特定の衣類など、24の品の税額を上げた。消費者は価格上昇に対応できず、結果として一部の商品が市場撤退を余儀なくされた。

食品の輸出入業を手掛け、ガザの商工会議所の会員でもあるワッシム・アル・ヒルさんは「ガザの住人にはすでにイスラエルへの税が課されている」と話す。イスラエルは、パレスチナ自治政府（PA）に代わって様々な税金を徴収している。

イスラエルの占領下にあるヨルダン川西岸地区を統治するPAとハマスは反目状態にあり、税制を巡ってしばしば衝突している。ヒルさんは、新たな課税は「すでに疲弊している地区の経済」を痛めつけていると語る。

ハマス（米国やEU、イスラエルから「テロ組織」に指定されている）が2007年に権力を掌握して以来、ガザ地区はイスラエルの封鎖措置を受け、機能不全に陥っている。

パレスチナ中央統計局によると、貧困率は53%に上る。一方、国際通貨基金（IMF）は失業率45%に達していると報告している。

昨年10月、ガザの数十の業者が増税に対して訴訟を起こしたが、裁判は中断され、判決は出ていない。

しかし、スーパーマーケットでは業者はすでに輸入品への依存を減らしている、と商工会議所のリヤド・サワフィリ氏は言う。

地区内では飲用水が不足しているため、住民はミネラルウォーターに依存しており、輸入を欠かすことはできない。だが、輸入量は今では半減した。

ガザの経済省で計画責任者を務めるオサマ・ノファル氏は、税金は「地元生産者を支援」するよう消費者に促す目的があるとし、飲用水をつくっている脱塩プラントに言及した。

輸入ミネラルウォーターへの課税が始まってから、一括購入での消費者価格は1本当たり1.67シェケル（0.36ドル）から2.17シェケルに急上昇した。

粉ミルクも昨年の増税から値上がりした品物の１つだ。ガザ地区のある薬剤師は、特定の商品が1箱1シェケルから9シェケルに値上がりしたとAFP通信に語った。

ガザ地区の経済学者マゼン・アル・アジラー氏は、新たな課税は「違法だ」と主張する。

住民はすでに経済的に苦しんでいるため、政権は輸入された原材料の税額を下げ、工場に無料で電気を提供すべきだと同氏は述べている。

増税時には業者が2週間のストライキを実施し、果物への課税は撤回された。

だが、当局は海産物の税金については譲らず、4500人程度が働いている業界に影響が出ている。

エジプト産の魚類が西岸地区へ輸出された場合、1キロ当たりの税額は6シェケル。ガザ地区の沖合で収穫された魚には1キロ当たり3シェケル課税される。

しかし、影響を受けているのは生鮮品だけではない。一部の衣類に新たに10シェケル課税されることになり、業者から非難の声が上がっている。

衣類業者の連盟で書記を務めるナヘド・アル・ソウダ氏は「最終的に妥協点が見出され、年間60万着のジーンズと15万着のアバーヤの輸入が非課税となった」と語る。

同氏は「業界の取引量を考えると、こうした免税措置は極めて小規模」と述べ、新たな課税は不当だと訴えた。

経済学者のアジラー氏いわく、税金の押し付けは支配層の「恣意的な」状況評価に原因があるという。

「プロ意識の欠如を反映しており、脅し行為と言えるでしょう」と同氏は言う。

AFP