アラブニュース

アンカラ:トルコとイランのメディアは、両国間の深く根ざした緊張関係が再浮上する中、非難の応酬を続けている。トルコの国営アナドル通信は、シリアを巡るイランとの緊張を批判的に論じた意見記事を発表した。

 意見記事は、次のように述べている：「地域の発展と統合に関するトルコのビジョンは、地政学的な勝利に重点を置くイランの地域戦略に反するものだ」

「「平和の泉作戦（Operation Peace Spring）」を遂行する中での、テロリズムとの戦いに関わるトルコ政府の懸念を無視して、イラン側は現在、トルコに対する措置としてシーア派民兵を実地に配置しつつある。人道危機を防ぐために積極的に努力しているトルコに対してだ。」

「アイドリフ戦線、イランの対外作戦能力の弱体化」と題されたこの論説記事は、アンカラのイラン研究センターの研究者であるハディ・コダバンデ・ルイ氏によるものだ。

シリアの内戦を通じて、トルコはバシャールアサド大統領を追放しようとする反政府勢力を支援し、イランはアサド政権を支持した。しかし、両国は紛争の政治的解決に向けて現在協力しているところだ。

イランの強硬派の新聞エンテカブ（Entekhab）が掲載したある論説記事は、シリアでのトルコの軍事行動を、イスラエルの親アサド軍への爆撃を比較してみせた。この記事は、両方の脅威に対してイランが攻撃的な対応を取る可能性を、トルコ政府に警告するものだった。

イスラエルの軍用機は、2月初旬にシリアの首都ダマスカス付近の標的にミサイルを発射した。ミサイルはシリア軍とイランが支援する民兵陣地に命中し、23人が死亡したと報じられている。.

シリア紛争を終わらせることを目的とする、アスタナ和平プロセスの保証国にも名を連ねているトルコとイラン。だが、両国は既に2019年10月、トルコがシリア内に軍事ポストを設置する動きを、シリアの尊厳に敬意を払うことの重要さを強調するイランが批判した時に、お互いとの関係のもろさを理解もしている。

その後、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、シリア北部でのシリアのクルド人勢力「人民防衛部隊」（YPG）に対するトルコの作戦をイラン政府が非難したことを受けてすぐに、両国間のコンセンサスを裏切ったとしてイランを非難した。

2018年3月、イランのテヘラン・タイムズ紙は、アフリンにおけるシリアのクルド人人民防衛部隊の民兵に対する国境を越えた軍事作戦を「侵略」と言い切った。その記事の見出しには、「トルコ軍、シリアのアフリンを占領」と大きく書かれていた。

過去数週間にわたりトルコ政府は、アサド政権、イランの支援を受けた民兵組織およびロシアが、シリアの反政府勢力が支配するイドリブ県における停戦合意に違反し、トルコ軍を標的にした攻撃を頻繁に行っていると批判の声を上げている。

オックスフォード大学の中東アナリストであるサミュエル・ラマニ氏は、アサド大統領派の軍が圧倒的に優位に立っており、抵抗するトルコ側の戦闘能力は大幅に低下していると見ている。

「アサド政権派の部隊は西アレッポの支配を強化し、イドリブでは着実に進撃しています。トルコは、特にイランのメディアが、トルコは過激派をかくまってソチ合意の条件を破った、と主張してアサド政権側を正当化していることもあり、イランからのシリアにおける調停の申し出を信用していません。トルコとしては、ロシアこそアサド政権の攻撃を支援することでソチ合意に違反していると主張するわけです」とララマニ氏はアラブニュースに語った。

トルコとイランのメディア同士の対立に関して、ラマニ氏は、両国がシリアを巡る情報戦に深入りしてしまっており、お互いに相手を侵略者として位置づけようと腐心している状態だと捉えている。

「両国におけるこのようなやり方は、アサド側とトルコ側の代理勢力同士にとどまらない、トルコとイランの軍隊が実際に直接戦闘を行うほどに軍事的対立が激化した場合に、より挑戦的な姿勢で国民の支持を集めようと用いられるような種類の方法と言えるでしょう」とラマニ氏は語った。