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アラブの現代アートを特に今、日本で紹介する重要性

2020年7月、東京のBlock Houseで展開された「East-East UAE meets Japan」第4弾の「キュリオショップ」。(提供写真)
2020年7月、東京のBlock Houseで展開された「East-East UAE meets Japan」第4弾の「キュリオショップ」。(提供写真)
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11 Aug 2022 07:08:34 GMT9
11 Aug 2022 07:08:34 GMT9

私は、今年始めにドバイのシンクタンク、Fiker Instituteから出版されたエッセイ集の執筆のため、アラブ首長国連邦(UAE)在住のアーティストが日本で開く展覧会を調査するようになった。予想していた通り、2012年に東京の森美術館で開催されたアラブ現代美術の大規模な展覧会「アラブ・エクスプレス展: アラブ美術の今を知る」(Arab Express: The Latest Art from the Arab World)以降、UAEの現代アートシーンを紹介する単独の展覧会は僅かしか開かれていないことが分かった。

欧米と比べて日本では、UAEやアラビア湾岸地域全体のアーティストの展覧会は広く行われてはこなかった。これは、UAEの多くの美術施設が、欧米のアーティストの感性や制度的認識を優先するという、21世紀のグローバルな現代美術の枠組みと関連している可能性がある。また、アラブ人アーティストの日本での展示会が少ないのは、アラブ世界の現代美術に対する知識が希薄であることにも起因している。東京を拠点とするアーティストやキュレーターと交流する中で私が感じたのは、アブダビ、ドバイ、シャルジャの現代アートシーンを知っている人がほとんどいないということだ。Fiker Instituteの調査によると、日本にはアラブ近・現代美術を専門に研究する教授がほとんどいない。このことも、この地域のアートに対する日本人の関心の低さに拍車をかけている。

UAEと日本の国交樹立50周年を記念して、UAEのアーティストによる現代アートを日本で大々的に紹介することは、かつてないほどに重要な意味を持つ。UAEのアーティストたちは日本での展示を強く望んでおり、日本の新しいアートフェスティバルやギャラリースペースも、とりわけアラビア湾岸地域の国際的アーティストを展示するというアイデアを積極的に受け入れようとしている。

私は昨年、東京で開催された「East-East:UAE meets Japan」展シリーズの第4弾で、15人のアーティストとコラボレーションを実施した。この展覧会は自費で行われため、私は新進アーティストとDIY精神にあふれたキュレーションを優先させた。アブダビやドバイからDHLで東京に直送される無数の作品を展示するため、アーティストが自ら運営するスペースやアートギャラリーの地下室が私の担当領域となった。私が東京藝術大学在学中に知り合った有望な日本人アーティストの作品と並んで、私が望んでいた“キュリオショップ”(骨董品店)には絵画、オブジェ、彫刻が展示された。その展示は、各種の影響、色、異文化間の対話が混じり合い、「エキゾチック」という概念が交差するような内容となった。このプロセスを通じて、多くのアーティスト、キュレーター、クリエイターが、東京に行きたいという希望を私に伝えてくれた。日本でのレジデンスの完結を望むアーティストも増えており、日本とUAEの大衆文化の架け橋になるという考え方が、特に若いUAEのアーティストたちの間で広まってきている。

今年、私は、東京の南に位置する海辺の町、熱海にある1973年に建てられた17階建ての歴史あるホテル、「ACAO Spa & Resort」(ACAO スパ&リゾート)で行われる「アタミアートグラント」の毎年恒例の芸術祭の一部として行われる、「East-East」の第5弾のキュレーションを行っている。アタミアートグラントは、静岡県熱海市の活性化を目的とした複数の会場からなるアートプロジェクト「プロジェクト熱海」の一環として、官民一体となった支援を受けている。今年のテーマは、「サステナビリティ」と「シミュレーション」だ。アーティストたちがどのように自然環境や人工環境をシミュレート(模擬的に表現)し、それをサステナブルな手段で実現するのか、が問われる。完成された作品だけでなく、その調査・研究の過程も重要なテーマとなる。

UAEと日本の外交関係樹立50周年を記念して、UAEのアーティストによる現代アートを日本で大々的に紹介することは、かつてないほどに重要な意味を持っている。

ソフィー・マユコ・アルニ

ACAOリゾートを訪れて、私は2000年代以前にUAEで建てられた宮殿や財団、立法機関の建築物をすぐに思い出した。素材の革新的な使い方、サステナビリティ(持続可能性)の実践、そしてUAEの急速な変化を示す詩的な姿は、観光産業がパンデミックに見舞われた後、同様に変革の過程にある熱海の町と重なり合うことだろう。輝かしいリゾート地としての地位を確立しつつ、現在は休眠状態の観光地としての熱海の物語は、UAEの建築開発の状況と共鳴する可能性があるのだ。人々がUAEの海岸にある大規模なホテルリゾートの寿命と将来について疑問に思うことはないにしても、アタミアートグラントとプロジェクト熱海が展開されるACAOリゾートは、それらの構造物の将来に対するインスピレーションの源となり得るのだ。

サステナビリティとは高尚な試みであり、日本とUAEは、それを語るのに特に適した位置づけにあると考えている。この “東洋 “の二つの主要国を結ぶ橋を架けるには、より含蓄のある物語が語られる必要がある。キュレーターの仕事とは、誰にも見えないところに架け橋を見出し、アーティストのアイデアを新しい空間で具現化し、同時にオーディエンスを教育することなのかもしれない。

  • ソフィー・マユコ・アルニ氏は、東京拠点活動するキュレーター兼編集者、「East-EastUAE meets Japan」展シリーズ2016年~現在)のキュレーターをめる東京藝術大学大学院グローバルアーツ研究科キュラトリアルプラクティス専攻修士課程修了、ニューヨーク大学アブダビ校美術史専攻学士号取得。

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