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20周年を迎えたアル・アラビーヤに感謝と謝罪を

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04 Mar 2023 03:03:03 GMT9
04 Mar 2023 03:03:03 GMT9

20年前のその日のことをよく覚えている。私はレバノンの今はもうないフューチャー・テレビジョンで記者として働き始めたばかりで、アル・アラビーヤは待望の新興メディアだった。

それは、米国同時多発テロ事件でイスラムの最も醜い一面が世界にさらされた2年後だった。数日前に起きた米国主導のイラク侵攻はその後何年も地域のニュースを独占することになる。中でも「その後の世界」に対する連立政権の不始末の報道でもちきりだった。それはアブグレイブ刑務所の恐怖、イランの介入、ダーイシュの台頭につながり、イラクの状況はサダム・フセインの時代よりもはるかに悪化したことは間違いない。

さらに重要なのは、カタールがアルジャジーラを設立してから7年後にサウジが支援するアル・アラビーヤが誕生したということである。今ではよく知られているが、アルジャジーラは論争の絶えない24時間ニュースネットワークとして一気に名を上げ、カルト的な支持を集めた。特に競合もなく、ドーハの政権の資金にアクセスすることもできる。

数年後に普及するインターネットとソーシャルメディアに対する反応と同様、アルジャジーラは当初、言論の自由と真剣な議論の旗手として歓迎されたが、すぐにその暗部も明らかになった。事実、長くムスリム同胞団の支持者に支配されていた同チャンネルが、2001年9月の攻撃の加害者であるアルカイダと故オサマ・ビンラディンの代弁者とみなされるまでにそれほど時間はかからなかった。

アルジャジーラは、世界の最重要指名手配犯のテロリストとの怪しい関係を業務上の関係やジャーナリズムのスクープに位置づけ、ビンラディンのテープを次から次へと放映した。これらの映像は無批判、無修正で流され、西側諸国や非イスラム圏、サウジアラビアを煽るような報道と完全に同調していた。宗教色を薄め、米国の外交政策の道具であるかのように描いたのだ。

元アル=アラビーヤのゼネラルマネージャー、アブドゥルラフマン・アル・ラーシド氏。 (提供画像)

「シャリーアと人生」(司会はヘイト伝道師の故ユースフ・アル・カラダーウィー氏)や「オープン・プラットフォーム」などのアルジャジーラの人気番組は、毎時のニュース速報とともに、1 日 4,000万人以上という驚異的な数のアラブ人視聴者に過激思想を広めた。先日、クウェートの新聞からドーハにそのようなコンテンツを統制する機能はあるかと質問され、元カタール首相で外務大臣のシェイク・ハマド・ビン・ジャベル・アルサーニ氏は、カタールはアルジャジーラを制御できず、実際に在任中は大きな頭痛の種だったと述べた。同氏がカタールで2番目の権力の地位にある人物ではなく、スカンジナビアの小さな町で選ばれた一役人であったなら、この弁明はもっと問題視されたかもしれない。

このような背景の中、2003年3月3日にアル・アラビーヤがドバイを拠点に始動したことは大歓迎だった。親会社であり運営企業でもあるMBCのオーナー、シェイク・ワリード・アル・イブラヒム氏がメディアの立ち位置を決めるまでに数カ月を要した。同氏が2005年にニューヨーク・タイムズに語ったように、その目標は、「アルジャジーラをフォックスニュースとするなら、アル・アラビーヤはCNNのようなメディアでありたい。冷静沈着なプロの報道機関として、声高に意見を拡散するのではなく、客観的な報道で知られるようにする」ことだ。

目標達成には時間がかかったが、アッシャルク・アウサトの元編集長で反過激派の見解で有名なアブドゥルラフマン・アル・ラーシド氏がゼネラルマネージャーに任命され、全速力で始動した。それは、宗教を政治目的に利用し、過激主義を広め、アラブの視聴者の知性を侮辱することに反対する声を渇望する私たちにとって特に朗報だった。

ニュースチャンネルの経営を原子炉の管理になぞらえ、平和目的に使用してエネルギーを生成することも、兵器に変えることもできると述べている。

アブドゥルラフマン・アル・ラーシド氏

たとえば、アルジャジーラは、「アラビア半島から異教徒を追放する」というアルカイダの方針に従い、クウェート解放に貢献した米国の英雄を迎え入れたサウジアラビアに対し扇動を行った。しかし、同じばかげた理由から、アル・ウデイドに中東最大の米軍基地を擁する自国政府を批判することはなかった。(ちなみに、同基地は後にイラクの爆撃に使われた。しかも、アルジャジーラの視聴者は米国の「占領」に注目するよう誘導された。)

アル・アラビーヤは努力を惜しまず、時間を無駄にしなかった。メディア史研究者は、その有名な「テロリズムに宗教はない」キャンペーンや、テロ集団の背後にある邪悪なイデオロギーを深く掘り下げて暴露した「デス・メイキング」などの勇敢で啓発的な番組をこのチャンネルの功績として認めるだろう。また、激しく批判されるリスクを引き受け、自爆テロ犯を「殉教者」と呼ぶ慣行を廃止した。

アル・ラーシド氏は、ニュースチャンネルの経営を原子炉の管理になぞらえ、平和目的に使用してエネルギーを生成することも、兵器に変えることもできると述べている。

アル・ラーシド氏はニューヨーク・タイムズの2005年のインタビューで、「テレビでは過激主義がもてはやされるので、人々は急進的になっている」と答えている。「モスクで過激派のメッセージを流せば50人に届く。しかし、テレビのメッセージならどれだけの人に売れるか知っているだろうか」

プラトンの洞窟の比喩のように、多くの視聴者はただ無知に縛りつけられ、「詳しく知る」

ファイサル・アッバス

アル・アラビーヤの奮闘はアルカイダを軍事的に打倒することを狙うサウジ政府の安全保障作戦と手を携えていたが、イデオロギー戦争の真の終結は、10年以上がたち、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が登場して初めて実現したとも言える。「ビジョン2030」のもとで、MBSはヘイトの説教者たちに対する大胆な改革と断固たる措置を推し進めた。そして2017年にはサウジアラビアは「過激思想にかかわりあってさらに30年を無駄にすることはない」ことを明確にした。

物理的な戦いとイデオロギーの戦いの間にギャップがあるのは、リヤドからの支援と保護にもかかわらず、アル・アラビーヤは過激思想に対して敢然とした立場をとり、プロのジャーナリストの基準を順守することに膨大な犠牲を払ったということである。残念ながら、若きイラク特派員のアトワル・バジャト氏、彼女の同僚のアドナン・アル・デュライミ氏、ハリド・アル・フェラヒ氏をはじめ、多くのジャーナリストがイラクの戦争報道で命を落とした。BBCのフランク・ガードナー氏と同様に、特派員のジャワド・カゼム氏はバグダッドで過激派の銃撃を受け、不随になった。アル・アラビーヤの元東南アジア特派員(現在はアラブニュース・パキスタン支局長)のベイカー・アティヤニ氏は、2012年から2013年までの18カ月間、フィリピン人テロリストのアブ・サヤフ氏に誘拐されていた。

イラクで取材中の、殺害されたアル=アラビーヤのアトワル・バジャト記者。(アーカイブ)

以上の事件はすべて外的要因によるものだが、何よりも厳しかったのは内部からの「誤爆」だった。過去20年間、アル・アラビーヤは過激派による脅迫と絶え間ない中傷に直面してきた。その多くはサウジアラビア国内にいる人で、同社をヘブライ語でイスラエルの主張寄りであることを暗示する「アル・エブリーヤ」などと呼んで攻撃した。

私は、プロの仕事を果たすことに伴う結果を目の当たりにして、2012年から2016年までアル・アラビーヤの英語ニュースサイトの編集長を務めたことを誇りに思った。本社への爆破予告や、邪悪な過激派の聖職者を自由の戦士だと主張するために雇われた英国の弁護士による英国の法廷での訴訟もあった。元サウジメディア大臣のアーデル・アル・トライフィ氏、大使のトゥルキ・アル・ダキール氏、アシャルクニュースの現在のゼネラルマネージャーであるナビール・アル・ハティーブ氏ら、私の同僚や上司は何年も個人的にネット上で嫌がらせを受けた。

現在のアラブ首長国連邦のサウジアラビア大使である元アル=アラビーヤのゼネラルマネージャー、トルキ・アル・ダキール氏にインタビューを受けるサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(左)。(アーカイブ)

事実に基づく根拠を見つけることができない中傷者はニュースのプレゼンター、プロデューサー、レポーターの人格を攻撃した。性別、宗教的信念、国籍に対する侮辱もあった(サウジアラビア所有だが、アル・アラビーヤはスタッフの国際的な多様性とプロフェッショナリズムに誇りを持っていた)。このような個人攻撃は特に恥ずべきものである。なぜなら、過激派の思想に目がくらんだ同じ社会の一員が加害者になり、先述のように、賢明で暴力の少ないアラブ世界の大義のために命を危険にさらした同僚を狙ったからだ。

サウジアラビア人、アラブ人、イスラム教徒として、アル・アラビーヤに感謝するだけでなく謝罪しなければならないのは、その目的に向かう献身的な姿勢ゆえだ。プラトンの洞窟の比喩のように、多くの視聴者はただ無知に縛りつけられ、「詳しく知る」ことを拒否した(「詳しく知る」はアル・アラビーヤのスローガンである)。賢明でダイナミックで決断力のあるリーダーシップのおかげで、私たち社会は不寛容に対する寛容さをようやく埋没させた。喜ぼうではないか。もう二度とメッセンジャーを罵ることはない。

ツイッター:@FaisalJAbbas

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