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スーダン軍が勝利を収めることが必要不可欠だ

2019年6月22日、スーダンのハルツームから60キロの位置にあるAprag村で、支援者らに挨拶するモハメド・ハムダン・ダガロ中将。 (ロイター)
2019年6月22日、スーダンのハルツームから60キロの位置にあるAprag村で、支援者らに挨拶するモハメド・ハムダン・ダガロ中将。 (ロイター)
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20 Apr 2023 03:04:48 GMT9
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今月、文民政権へ権力の座を譲る政治協定の署名・承認が予定されていた中、渋々パートナー同士となってこの4年間スーダンを共同支配してきた2人が互いに戦う運命となることは、ほぼ不可避だった。しかし、主権評議会議長で陸軍最高司令官のアブドゥルファッターフ・アル・ブルハン将軍と、悪名高い民兵組織「即応支援部隊(RSF)」のトップであるモハメド・ハムダン・ダガロ将軍の対決は、民主主義の回復やスーダンの人々の数十年にわたる苦境の終結とはほとんど無関係だ。この対決は実際のところ、権力闘争であり、長年の独裁者オマル・バシール氏に対し2019年に軍事クーデターを起こした勢力の間での戦いである。

スーダンの人々にとって、どちらの人物にも共感できる面はほとんどない。アル・ブルハン氏とダガロ氏は、文民統治の回復に向けたこれまでの試みを頓挫させており、昨年12月の枠組み合意への署名は大きな進展であったものの、RSFの正規軍への統合のタイムフレームについてダガロ氏が但し書きをつけたことが、交渉決裂の原因となることは最初から明らかだった。両氏にとってのその他の問題には、経済活動からの軍の切り離しや、軍による民間人虐待への調査に関する合意条項などがあった。

多くの血が流れた今週の衝突がどのように始まったのかも、戦場からの最新情報についてはどちらを信じればいいのかも分からない。両者ともに大きな戦果を収めたと主張しているが、17日夜までに、どちらも優位に立っておらず、軍司令部などの首都の要所や全国各地で小規模な戦闘が行われていることが明らかになった。

戦闘機や重機甲部隊の支援を受ける、装備が充実した約25万人の正規軍が最終的には、およそ10万人といわれる軽装備のRSFを打ち負かすと考えるのが普通だろう。しかし、RSFはダルフールで4年にわたって戦闘を行ってきた歴戦の部隊であり、バシール氏が自身の直属民兵組織とするために選出したエリート部隊である。実際、ダガロ氏が自身のボスに反抗して軍事クーデターを支持する決断をしたことが、バシール政権打倒の助けとなったと考えられている。

アル・ブルハン氏自身は文民統治の回復を監督する人物として信頼できないが、この対決においてスーダン軍が勝者となることは必要不可欠である。想像するのは難しいが、軍が敗北すれば、スーダンと同国の領土保全にとって破滅的な事態となる。悲惨な経済・社会的状況を別にしても、分裂と内戦の影が同国に付きまとい続ける。経済的に重要な東部地域の各部族は不安定になってきており、分離を求める声が再び響きわたっている。ダルフールとスーダン南部の和平の未来も懸かっている。長引く軍事衝突は国内のさまざまな地域における部族戦争をも引き起こす可能性がある。

今までのところ、アル・ブルハン氏もダガロ氏も、持続的停戦や和平交渉に合意していない。アル・ブルハン氏はRSFの解散やダガロ氏を反逆者とする宣言によって事態をエスカレートさせた。一方のダガロ氏は、アル・ブルハン氏をバシールの支持者たちと結び付けようと目論み、同氏がイスラム主義者による国の乗っ取りを先導していると非難している。このような非難には、スーダンの国内情勢に既得権益を有する地域および世界の第三者に暗号めいたメッセージを送る意図がある。

2月にハルツームを訪問したイスラエルのエリ・コーヘン外相が、イスラム過激派のスーダンへの浸透について警鐘を鳴らし、イスラエルはスーダンにおける事態の沈静化を図ろうとしていると明言したことは興味深い。アル・ブルハン氏もダガロ氏もイスラエル政府高官と会談しており、両国の関係の正常化を公式に支援している。

ダガロ氏は地域におけるコネクションを持っており、RSFの戦闘員は傭兵としてスーダン国外の戦闘に派遣されてきた。おそらくこれが、アル・ブルハン氏が外国勢力に現在の危機に介入しないよういち早く警告した理由だ。

想像するのは難しいが、軍が敗北すれば、スーダンと同国の領土保全にとって破滅的な事態となる。

オサマ・アル・シャリフ

スーダンの国内状況は隣接地域の安定にとって非常に重要だ。米国、ロシア、エジプト、イスラエルはそろって事態の進展に利害関係を有している。心配なのは、どちらも迅速に勝利をものにできそうにないという点だ。現在の内戦は数週間、数か月と長引くかもしれない。もしダガロ氏が首都から退くことを余儀なくされた場合、ダルフールへと退却し、軍を相手に都市においてゲリラ戦を仕掛ける可能性がある。いずれにしても、スーダンは混乱に陥り、すぐに人道的危機が起こるだろう。

膠着状態となり、決定的な終結が訪れなければ、調停者が両者を交渉のテーブルにつかせることができるかもしれない。それはスーダンの未来にとって良いことではない可能性がある。両者がともに踏みとどまる状況は、国を弱体化させ、さらに重要なことに、枠組み合意の施行を危うくするだろう。

  • オサマ・アル・シャリフ氏はアンマンを拠点とするジャーナリストで政治評論家。ツイッター:@plato010
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