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アラブ連盟のシリアに対するアプローチは唯一理にかなったものだ

2023年5月7日(日)、シリアのアラブ連盟への参加資格が回復された。(ファイル/AFP)
2023年5月7日(日)、シリアのアラブ連盟への参加資格が回復された。(ファイル/AFP)
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11 May 2023 01:05:21 GMT9
11 May 2023 01:05:21 GMT9

水面下の外交が1年以上続いた末に、最近の一方的なイニシアティブに後押しされて、シリアは7日、ついにアラブ連盟に復帰した。12年前にシリアの危機が勃発して以来人々を大きく二分してきた問題に関して、アラブ諸国の外相らがコンセンサスに達したのだ。そして、2015年のロシア軍による介入以前の一時期には崩壊の瀬戸際にあったバッシャール・アサド大統領の体制にとって、これが大きな外交的勝利であることは疑いない。

複雑なシリア危機を解決するためのアラブ諸国によるこの新たなアプローチは数多くの要因に基づいている。この残酷な内戦の終結に向けた政治的解決を見出そうとする試みは10年以上失敗し続け、国の一部は体制支配下、その他の地域は直接的あるいは間接的に外国の占領や影響力のもとにあるという、完全な膠着状態となっている。シリア内戦は勃発とほぼ同時に国内危機ではなくなった。地域や外部の主体が関与し、様々な反体制派組織を政治的あるいは軍事的に支援し始めたからだ。

忘れてはならないのは、シリアに忍び込んで原理主義的非合法組織に加わった外国の過激主義者らにまつわる暗いエピソードの数々だ。これらの組織は体制が残した空白を埋め、忌まわしいディストピア的社会を作り上げた。同様に、体制が行った(化学兵器使用を含む)残虐行為の記録は、今後も調査、説明責任、最終的な報いの正当な理由となるだろう。

2月の大地震の後の惨状で強調されたように、シリアの膠着状態は国内のあらゆる部分における人道的危機を悪化させた。そのうえ、地域と世界の地政学的変動は、シリア危機に対する最善のアプローチに関する見方を変えた。アラブ諸国の指導者らの大半が意見を同じくした点は、優先事項、ニーズ、課題が変わりつつある中、現在の「現状維持の政治」は持続不可能だということだった。

シリア体制はアラブ諸国のイニシアティブに対するもったいぶった反応をやめ、自らの立場を早く明らかにするべきだ

オサマ・アル・シャリフ

ここで言っておくべき重要なことは、シリア体制をアラブ世界に復帰させるプロセスはまだ始まったばかりだということだ。この一歩ずつのアプローチにはまだ結論が出ておらず、シリアの悲劇の真の終結を実現するまでには何年もかかるだろう。一方、この新たなアプローチの核心は、シリアに関する国連決議、そしてジュネーヴやアスタナなどにおける合意や枠組みを遵守しつつ国家の和解を実現できるような、アラブの処方箋を見出すことに基づいている。それは難題であり、紛争解決におけるアラブ連盟の実績は良く言っても異論があるものだ。

ここで一つ言っておくべきことは、シリアの領土的一体性と主権を維持しつつシリアの危機を解決するための真のアプローチ(政治改革の実行、難民・避難民の帰還、麻薬密輸ネットワークの解体、シリア領内における外国のプレゼンスの終結など)は、相互的な方法に基づいたものでなければならないということだ。すなわち、シリア体制はアラブ諸国のイニシアティブに対するもったいぶった反応をやめ、それらの問題に対する自らの立場を早く明らかにするべきだ。

この点はアラブ諸国の多くが条件としたことだ。そして多少の違いはあれど、EUや米国など他の主要プレイヤーの公的な立場でもある。

アラブ諸国の新たなアプローチに命綱を与えようと思うなら、シリア体制が上述の諸問題に対する自らの立場を説明することが極めて重要である。アサド大統領がイランの同盟者らを切り捨てる可能性は低いが、非国家主体の存在に関して象徴的な意思表示を行う可能性はある。しかし、シリア新憲法の起草や反体制派との対話のような重要な問題に関して同大統領が何らかの譲歩のシグナルを送るまでには長い時間がかかりそうだ。反体制派との対話については視界から消えているようにさえ見える。クルド系シリア人についても、彼らからの自治要求や、彼らの地域における米軍の存在などの問題がある。

アラブ諸国による新たな機運は、サウジアラビアとイランの歴史的和解という観点から見る必要がある

オサマ・アル・シャリフ

この最新の外交的ブレイクスルーに対する米国の反応は、これまでのところ実利的かつ控えめなものだ。米国は、シリアにはアラブ連盟に復帰する権利をまだ獲得していないとしながらも、アラブの同盟諸国がやろうとしていること(シリアに関する政治的解決を活性化させること)は理解すると言っている。サウジアラビア、エジプト、ヨルダン、イラク、UAEなど、アラブ地域における米国の主要なパートナー諸国がシリアの政治的復帰を支持しているという事実は、米国の対シリア政策は失敗して今や無効になっているという強いメッセージを米国に送っている。

アラブ諸国による新たな機運は、サウジアラビアとイランの歴史的和解、およびそれがイエメン、イラク、シリア、レバノンを含む地域全体に与える影響という観点から見る必要がある。より幅広い観点には、シリアとトルコの不和を終わらせるようにとのロシアからの高まる圧力が含まれるはずだ。そして、それは来週のトルコの大統領選挙の結果によって決まる可能性がある。

シリアの隣国であるアラブ諸国、すなわちヨルダン、レバノン、イラクは、7日にシリアがアラブ連盟に復帰したことを、より自国の問題として受け取るだろう。例えばヨルダンは、360kmにわたるシリアとの国境を経由したカプタゴン密輸を国家安全保障上の脅威と見ている。ヨルダン空軍が8日朝にダルアーの麻薬工場に対して激しい空爆を行って、その過程で最重要指名手配犯だったシリアの麻薬密輸団首領を殺害した兆候がある。この事件は、(様々な報告によればアサド一族のメンバーが関与している)この種の脅威に対処するうえでのヨルダンの新たな戦略を示すものだ。ヨルダンとレバノンは、数十万人のシリア難民の自発的帰還を可能にする解決策を何としても見出したいと思っている。

一方イラクとヨルダンは、密輸を取り締まるために、また両国に脅威を与え続けているダーイシュの資金源を断つために、シリアとの国境の安全を確保することを望んでいる。

山積する問題の解決に向けてシリア体制との対話を行うことは、二国間ベースであれアラブ連盟の委員会を通してであれ容易ではないだろう。同体制の存続には相当なコストがかかっており、同国にはアサド大統領が渋々譲歩することを困難にするであろう新たな現実が存在している。しかし他に選択肢がない以上、現在の路線が唯一理にかなった路線であるように思われる。同体制がアラブ連盟への復帰のメリットを維持することに意味を見出し、シリアに染み付いた政治的行き詰まりを終わらせるために役割を果たすことに期待したい。

  • オサマ・アル・シャリフ氏はアンマンを拠点とするジャーナリスト・政治評論家。ツイッター: @plato010
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