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ロックダウン中にも芸術文化を楽しもう

メトロポリタンオペラのコンサートマスター、デイビッド・チャン(右)と音楽監督のヤニック・ネギ=セギーン、2020年4月25日のアットホームガラより。(スクリーンショット)
メトロポリタンオペラのコンサートマスター、デイビッド・チャン(右)と音楽監督のヤニック・ネギ=セギーン、2020年4月25日のアットホームガラより。(スクリーンショット)
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08 May 2020 11:05:18 GMT9
08 May 2020 11:05:18 GMT9

夏が近づくごとに、刺激的な環境で家族や友人と芸術文化を楽しんでいたあの熱狂的な日々を思い出し始めているのではないだろうか。艶やかなピンクと紫の紫陽花に彩られたヴィクトリア&アルバート博物館の中庭や、美しい花々でいっぱいのハンプトンコートプレイスガーデンフェスティバル。レーンズボローホテルでうっとりするようなピアノの演奏を聴きながらアフタヌーンティーを楽しんだり、1797年創業の書店であるハッチャーズでおもしろい本を探してさまよったり、そんな毎年恒例の文化的なお祭りを思い出させる夏の楽しい思い出が、私にはたくさんある。美術館はおもしろい展覧会やアーティストを紹介し、劇場は魅惑的な散文と音楽を織り交ぜたショーを上演し、アートギャラリーはさまざまな時代の美しい作品の数々を展示していた。私にとっての夏は、こうした数々の貴重な文化経験で彩られている。

悲しいことに、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが続いている。ソーシャルディスタンシング措置により、私たちが愛する美術館やアートギャラリー、図書館や劇場が休業に追い込まれ、活動を中止せざるをえなくなった。しかし、文化事業従事者は、デジタル革命を通じて観衆と接する新たな方法を探るきっかけをこのロックダウンから得たのだ。過去数週間で、有名な文化機関や企業がデジタルコンテンツをシェアするのを私たちは目撃してきた。この非常にストレスが溜まる時期においては特に、芸術と文化はメンタルヘルスとウェルビーングにとってよい刺激となるだろう。こうした試みは束の間の急速を与えるありがたいものだった。

ロンドンの「What Works Centre for Wellbeing」は、視覚芸術がメンタルヘルスに与える影響に関する調査結果を2018年に発表した。調査結果によると、芸術に触れた人はそれによって鬱や不安のレベルが下がり、自尊心が向上し、他社との社会的なつながりを楽しむことができ、アイデンティティーの感覚を得ることができたそうだ。同じく2018年に、ウェールズ芸術評議会が医療現場における芸術の利点に関するレポートを発表している。このレポートでは芸術が癒しの手法として役立つことへの証拠を提示されている。それによると、芸術活動を行うように勧められた患者は、ストレスレベルの低下、社会的関与の増加、対処メカニズムの発達、痛みの感覚の減少、入院期間の短縮を経験し、また治療には協力的になったそうだ。

COVID-19によるロックダウン下でも、芸術ファンは文化的なデジタルエリートになることができる。デジタルのクラウド内をさまよい、携帯電話やパソコンをタップすれば、バーチャルミュージアムツアー、オンラインオペラ、無料のデジタルブックとオーディオブック、ライブストリーミングコンサートなどの幅広い芸術的・文化的体験を楽しむことができるのだ。さらに、アーティストや文化的クリエイターたちは、ライブで行うグループレクチャー、ポッドキャスト、ブログを通じて視聴者とつながる斬新な方法を模索している。

ありがたいことに、Google Arts & Cultureは世界中の貴重な作品をデジタルで紹介するため、2,000を超える主要な美術館やアーカイブと連携してくれている。Google Arts & Cultureでは、いつでも好きな時にロンドンの大英博物館、アムステルダムのアムステルダム国立美術館、パリのオルセー美術館、フィレンツェのウフィツィ美術館、ワシントンのナショナルギャラリーなどのバーチャルツアーに出かけることが可能だ。Google Arts & Cultureは、視聴者は絵画や歴史的遺物、文書などの美術館のコレクションを探索する機会を提供している。

ニューヨークのメトロポリタンオペラは、過去8週間にわたって毎晩の公演をストリーミング配信している。これまでに配信された作品はジャコモ・プッチーニの「ラ・ボエーム」、トーマス・アデスの「テンペスト」、ジュゼッペ・ヴェルディの「アイーダ」、シャルル・グノーの「ロミオとジュリエット」、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」などで、こうした最高の作品をオペラ愛好家たちは楽しむことができた。メトロポリタンオペラはまた、各作品のあらすじをキャッチーに紹介したビギナー向けの短いガイドも用意している。愛好家向けには、これらの傑作をさらに掘り下げた記事やインタビュー、ポッドキャストの数々が用意されている。

文学ファン向けには、AmazonのオーディオブックサービスであるAudibleをご紹介しよう。Audibleには、学習用としても娯楽用としても楽しめる無料のオーディオブックが何百冊も揃っている。作品は利用者層ごとにまとめられており、小さな子供は「くまのプーさん」や「ピーターラビット」を楽しむことができるが、小学生は「赤毛のアン」や「秘密の庭」、「不思議の国のアリス」、「オズの魔法使い」などの100を超えるタイトルから選ぶことができる。また一方で、「ジェーン・エア」、「フランケンシュタイン」、「ジャングルブック」、「プライドと偏見」などの古典文学も視聴可能だ。なお、「ハリーポッターと賢者の石」は6ヶ国語で用意されている。

この非常にストレスが溜まる時期においては特に、芸術と文化はメンタルヘルスとウェルビーングにとってよい刺激となるだろう。

サラ・アル=ムッラー

数々のアーティストがソーシャルメディアを利用してクリエイティブな旅をシェアしている。たとえば、アメリカの写真家ジェイミー・ベックは、インスタグラムで#IsolationCreationというキャンペーンを始めた。彼女はオリジナルの作品を毎日1つ制作し、その手法について解説している。また、オリジナルのアート作品を制作してコミュニティでシェアすることをフォロワーに勧めている。このシリーズから得られた収益の10%が、ロックダウンでイベントが中止になったせいで収入を失ったアーティストのための現代芸術財団緊急救援基金に寄付される。一方でフランスのパティシエドミニク・アンセルは、毎週土曜日にベーキングのクラスを開催しており、そこで彼は自身の作り方について説明している。彼はまたフォロワーの作品をInstagramにシェアすることもしている。カナダのアーティストシェイダ・キャンベルは、Youtubeチャンネルで水彩画のチュートリアルをシェアしており、50万人以上のチャンネル登録者数を誇っている。

このロックダウン下においても、デジタルテクノロジーと、世界をより美しい場所にし続けている熱意ある人々のおかげで、芸術と文化の世界はいまだ活気に満ちている。

  • サラ・アル=ムッラー、人間開発政策と児童文学に関心を持つアラブ首長国連邦公務員。
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