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パニックするのも無理はない

中国中央部の湖北省武漢の協和医院で2020年3月7日、新型コロナウイルスに感染した妊婦のために用意された婦人科・産科隔離病棟で帝王切開後に生まれた新生児をウイルス感染者の母親に見せる医療スタッフ(R)。(AFP)
中国中央部の湖北省武漢の協和医院で2020年3月7日、新型コロナウイルスに感染した妊婦のために用意された婦人科・産科隔離病棟で帝王切開後に生まれた新生児をウイルス感染者の母親に見せる医療スタッフ(R)。(AFP)
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09 Mar 2020 09:03:57 GMT9

まるで世界の終わりを目撃しているかのようだ。スタジアム、市場、劇場、映画館は空っぽ。空港や陸路による出入国は減少した。観光もしかり。会議や祝典はキャンセルとなり、あらゆる宗教の祈りの場が閉鎖された。

それにも関わらず、コロナウイルスによる新たな死亡や感染の出ない日は1日としてない。感染者数は世界中で10万人を超えた。そしてその数はまもなく100万人に達するかもしれない。6週間前の感染国は1か国にすぎなかっのに、それ以来、自国民が感染したと発表した国は約90か国に上る。

現在のウイルスの急速な拡散、そして先行き不透明感により、世界中がパニックに陥り、現代史上前例をみない行動を取るようになった。こうしたパニックについて、もっともなこととして正当化してよいだろうか? ソーシャルメディアや陰謀説、政治家のせいにするのか?

実際のところ、状況は深刻であり、この状況は今後さらに深刻化するのではないかと考えられる。医学関係者の見方も、年末までにワクチンや治療法が利用できるようになる可能性は薄いのではないかという点で意見を一致させている。リスクは急速に増加の一途をたどる感染症にある。そのため、各国政府は年末までにウイルスの拡大を可能な限り抑える必要がある。そうしながら解毒剤や感染拡大抑止の方法が発見されるのを待つしかないのだ。

各国政府は協力し合わなければならない。政府間がいかに対立していようとだ。それしか選択肢はないからだ。サウジアラビア政府がイラン当局に対し、イランに入国したりイランから出国したサウジアラビア人について知らせるように要請したのはそのためなのだ。イラン当局では、サウジアラビア国民がイランへ入国する場合、そのパスポートにスタンプを押さないことにしている。両国間に政治関係がなく、サウジ国民のイラン渡航は禁止されているからだ。だが、サウジ王国の望みはこうしたサウジ国民に説明責任を持たせることではない。ウイルス感染の可能性という、より危険な状況が待ち受けているからだ。

実際のところ、状況は深刻であり、この状況は今後さらに深刻化するのではないかと考えられる。

アブドゥルラハマン・アル–ラシード

そのためサウジ政府は、イランに滞在していた、あるいはまだ滞在している自国民がそのことを直ちに明らかにすれば、いかなる罰則適用も免除する、と発表した。ウイルス感染拡大が進む国からサウジアラビアにウイルスを運ぶことに比べれば、旅行法違反の罪は軽いと考えられるからだ。イランから戻った人が知らないうちにウイルスを運んでしまい、地域社会全体を脅かす可能性があるのだ。イランが政治的な違いをひとまず置いて、この点で協力してくれることを願うばかりだ。

私たちは、この困難な危機を管理する責任者たちが大変な状況にあることを理解する必要がある。一方では、こうした責任者たちは予防活動を加速させたいと考えている。死者数が数十万、あるいは数百万人にまで増えてしまった場合、最終的には世界中で都市や近隣地域を隔離しなければならない段階に達する可能性も出てくるからだ。

だがその一方で、当局者たちは、パニック回避の観点から、人々の不安を高めたくもないのだ。混乱が広がり、街頭や都市が戦場に変わり、略奪、犯罪など、カオスや集団恐怖によって引き起こされる事件が広がるかもしれないからだ。

評価に値する興味深いモデルが1つある。 米国の選挙で競い合う2つの政党が、政党間に大きな違いがあるにもかかわらず、協力してウイルスに取り組んできたのだ。

ドナルド・トランプ大統領は、議会に25億ドルのコロナウイルス研究および治療薬開発の緊急支援予算案を提案した。

民主党の議会議員はこの要請を支持し、金額を85億ドルに引き上げることに同意した。この協力には、危機感と責任感が同時に反映されている。確かなことは、この差し迫った危険を止めるためには、世界中が協力し合う必要がある、ということだ。

  • アブドゥルラハマン・アル–ラシードは、アル=アラビーヤ・ニュースチャンネルのゼネラルマネージャーや『アッシャルクル・アウサト』紙編集長を務めたこともある、ベテランコラムニスト。ツイッター: @aalrashed
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