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コロナウイルス対応が、G7にとってターニングポイントとなる可能性

昨年、フランスのディナールでG7諸国の外相たちが会合。(ロイター通信)
昨年、フランスのディナールでG7諸国の外相たちが会合。(ロイター通信)
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27 Mar 2020 10:03:50 GMT9
27 Mar 2020 10:03:50 GMT9

マイク・ポンペオ米国務長官が水曜日に、高まるコロナウイルス危機のなか、初めてテレビ会議による主要7カ国(G7 )外相会議を招集した。会議のなかでは意見の相違も浮上し、G7は健康危機問題を扱うのに相応しい機関ではないように思われるかも知れないが、時の一大事に対処する当たり、同機関は常にベストな取り組みを見せてきた。

G7は、米国が金本位制から離脱した後の地政学的・経済的ショックに影響を受けて1975年に発足したが、その事実こそがG7は混乱時のために設計されたものであることを物語っている。当時、リチャード・ニクソン大統領が辞任し、確実かつ差し迫った通貨戦争の危機があった。G7は最重要な為替レートの管理において主要な役割を果たし、その目的に相応しい働きができることを証明した。G7はまた、日本を西側の政策決定諸国に加えたが、我々は現在それに似た広い視野に立った取り組み方を必要としている。

G7の行動力を示す別の例としては、1990年代にバルト三国から赤軍の残党を撤退させることをロシア人に説得するなかで重要な役割を果たした。ただこれは正式な議論スケジュール上にあった問題ではない。この活動は、G7が1970年代から80年代にかけて当時のソビエト連邦に対する西側諸国の戦略を調整するなかで、G7が果たした歯止め機能としての一環であった。

このようにG7は、必要とあらば進んで問題に取り組んできた実績があり、今回のパンデミックに対する国際的対応をまとめるのに重要な役割を果たす可能性を秘めている。これは、G7が欧州諸国により、特に現在の健康危機の中心国であるイタリア、フランス、ドイツにより構成されていることを考えれば、尚更そうであると言える。

今週の外相会議、そして火曜日にも同様に開かれたG7財務相・中央銀行総裁会議と同じく、ドナルド・トランプ大統領は4月と5月にテレビ電話会議を通してG7首脳会議を開催することになるが、6月にキャンプ・デービッドで開催されるはずであった対面式のG7サミットもテレビ会議に切り替えた。つまり、今後何週間かで協調的な活動が講じられるという明確な道が開けたのだ。

今週の外相会議では、パンデミックを「武漢ウイルス」と呼ぶべきとするポンペオ外相の主張に対する他の外相たちの不賛成はあったものの、合意を得た主要な活動としては、先週に各国首脳陣が「緊密な協力と協調的取り組みの強化を通して、強力な国際的対応を高めるために必要なことをすべてする」と確約した結果を強調するものであった。

それはパンデミックへの国際的な対応を調整するうえで重要な役割を果たす可能性を秘めている。

アンドリュー・ハモンド

前に進める活動は4つの部分からなる。1つ目は、コロナウイルス危機にさらされた人々を守る公衆衛生的手段について連携して取り組むこと。2つ目は、自信と成長を回復させ、職を守ること。3つ目が、国際的な貿易と投資を支援すること。そして4つ目は、科学、研究、テクノロジー分野の協力を推奨することだ。

1つ目と4つ目を例にとれば、国際的な公衆衛生システムを強化する取り組みを増進し、疾病流行時や非常事態において主導的立場をとる世界保健機関の国際的権限を育成すべく同機関と共同で取り組み、また、戦略的準備対応計画のような国際的取り組みを補佐する民間企業とも協業することで合意した。また、国際的な「伝染病に対する準備における革新の為の連合」への支援など、共同研究活動を増進させる取り組みもある。

2つ目の分野としては、G7は、最も大きな影響を被る労働者や企業や産業を支援するための金融措置や財政措置を実施する。同時に中央銀行が連携して、経済的・財政的な安定を支援し、回復と成長を促すための金融措置を実行する。このためG7の財務相は今後、アジェンダの調整を図りながら実行させていくために毎週連絡を取り合うことになる。

国際的な組織にも当然役割がある。そのためG7は、新興経済国や発展途上国を含む各国がコロナウイルスパンデミックによる健康的・経済的打撃に対処できるよう国際的な財政援助を計画して速やかに実行に移すといった協調的な国際対応を支援すべく、国際通貨基金や世界銀行その他の組織とも協力して取り組んでいる。

3つ目の領域については、「パンデミック以前に期待されていた成長レベルを回復させるのみならず、より強力な将来的成長の基礎を構築すべく」国際的な貿易や投資を促進させるワークストリームを進行させている。G7の首脳陣が認めるように、この取り組みを支援・拡大させるには、G7のみならずG20 諸国の協力が必要となる。

これは大規模なアジェンダであり、G7には、昨今の分断、特に(これだけに留まらないが)トランプ大統領と他の6名の首脳たちとの隔たりを脇へ置くことが望まれる。これは2018年のカナダサミットで最悪に達したが、敵対関係は未だに存在する。

コロナウイルスの混乱は、G7が、元通りに収まる重要な一歩を踏み出し、西側諸国が直面する大きな戦略的問題に再び焦点を向けようとするきっかけとなる。短期的にはコロナウイルスに勝る大問題は他にない。発展途上国のなかには、G7、もっと言えばG20 にすら、このような国際的問題に取り組むために国際連合がもつような正当性はなく、G7が中国やインドのような新たな大国を人為的に台頭させたのだと主張する国々もあるが、もし西側諸国の首脳陣がこれをなし得るのであれば、その主張を鎮める助けにもなるだろう。

アンドルー・ハモンドは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスLSE IDEASの準会員である。

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