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なぜ今年はG20にとって重要な年になりえるのか

サウジアラビアのサルマン国王は、G20首脳による臨時会議の司会を務めた。全代表がテレビ会議で極限まで距離を置き、世界中から話をする。(SPA)
サウジアラビアのサルマン国王は、G20首脳による臨時会議の司会を務めた。全代表がテレビ会議で極限まで距離を置き、世界中から話をする。(SPA)
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29 Mar 2020 11:03:19 GMT9
29 Mar 2020 11:03:19 GMT9

新型コロナウイルスが世界中に広がっているため、2020年はG20にとって2008~09年の国際金融危機以来、最も重要な年になるかもしれない。当時G20は、国際経済協力とグローバル・ガバナンスについて議論するための最も重要な場所の座をG7から奪ったと広く思われていた。

それは先週のテレビ会議に反映された。米国、中国、ドイツ、インド、日本、インドネシア、オーストラリア、ロシア、ブラジル、英国、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、フランス、イタリア、ドイツ、カナダ、韓国、アルゼンチン、メキシコ、EU、世界のGDPの約90%、世界貿易の80%、世界人口の66%を占める地域の首脳らがログインした。

首脳らは、新型コロナウイルスによってもたらされる社会的・経済的損害を最小限に抑え、感染拡大への準備におけるギャップを評価し、過去にG20が積極的な関心を見せた分野であるワクチンや医薬品の研究開発のための資金を増加させるためには「どんなことでも」すると約束した。

首脳らは、多国間機関への資金の増額を必要に応じて検討することでも合意し、中央銀行総裁と各国財務相に行動計画の策定を要請した。彼らは一致団結して対応し、感染拡大による経済的・社会的損害を最小限に抑えるために利用可能なあらゆる政策手段を講じると主張した。

このように結束していたにもかかわらず、緊張があった。例えば、中国の習近平国家主席は、感染の発生源を巡り、国際世論のためにトランプ米大統領と争いを繰り広げている。トランプ氏は新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼び、マイク・ポンペオ米国務長官は「武漢ウイルス」と呼んでいる。習氏は、成長への最善の道筋として、中国国内の財政刺激よりも米国の貿易障壁に焦点を合わせて発言し、国際貿易を可能にするよう首脳らに求めた。

G20はまだ期待の一部に応えていないが、先週開かれた会合で示されたように、参加国にとって大事な公開討論の場であり続けている。

アンドリュー・ハモンド

26日に合意された事項がどれだけ容易に履行できるのかも懸念される。声明には、世界銀行や国際通貨基金(IMF)が求めている最貧国の債務返済延期など、具体的な公約は盛り込まれなかった。このことは、国際金融危機のさなかにG20が掲げた野望を完全には実現できていないことを明確に示している。その理由の一部は、G20には世界の首脳らによって結ばれた協定の実効性を確保するための正式な仕組みがないことにある。

G20以外の国の一部は、G20の構成に懸念を抱いてきた。参加国は名目上、人口やGDPなどの基準に従って選ばれたが、「アフリカの巨人」と呼ばれるナイジェリアの人口は南アフリカの3倍だ。

ノルウェーのヨーナス・ガール・ストーレ元外相は、国連の普遍的な多国間主義の感覚を損ねるとして、G20を第二次世界大戦以来、最大級の失敗とまで言っている。このことを反映して、国連総会は2009年、G20に対抗し、代わりとなる「世界金融経済危機に関する国連会議」を開催した。この問題は、ゴードン・ブラウン元英首相によっても取り上げられた。彼は、G20と国連がより緊密に協力して新型コロナウイルスの感染拡大に対応するよう求めた。

G20はまだ期待の一部に応えられていないが、先週開かれた会合で示されたように、参加国にとって大事な公開討論の場であり続けている。今年のG20は、新型コロナウイルスの急速な感染拡大を考えると、特に重要になるかもしれない。最適な対応を世界規模で展開するためには、主要国、とりわけ米国と中国がよりいっそう協働する必要がある。

*アンドリュー・ハモンド氏はロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のLSE IDEASのアソシエイトである

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