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我々に – 特に Gulf において – 望まれている WeWork の IPO の成功

ニューヨーク市内の WeWork オフィス(AFP)
ニューヨーク市内の WeWork オフィス(AFP)
23 Aug 2019 02:08:14 GMT9

「世界の意識の向上」をミッションとする米国のワークスペースカンパニー「WeWork」は、数週間以内に米国株式市場への上場が予定されています。その評価額は数十億ドルとされ、それに伴い多大な責任も課せられます。

予定されている IPO(Initial Public Offering:新規株式公開)に対してすでに多数の意見や分析がなされていますが、その一部は非常に否定的で、誹謗とも言えるものです。先週の IPO 目論見書の公開以降、同社のビジネスモデル、所有権の構造、評価額が酷評されており、これにより当面の世界の金融市場の健全性が左右される可能性があります。

この IPO とその評価は、サウジアラビアと、その優先投資パートナーであるソフトバンクと巨大なビジョン・ファンド投資事業体を牽引する孫正義氏にとって大きな分岐点となります。

WeWork は基本的にハイテク分野の起業家や操業開始の会社などにとってレンタルスペースでなければ高額になり過ぎることが多い商業地区のオフィススペースを貸し出しを行っています。同社のアダム・ニューマン氏は極めて冷静なアイディアマンであり商業不動産セクターの Uber や Airbnb と同様の事業として見られることを望んでいます。

ニューマン氏は、同社の最大の外部投資家である孫氏と彼のビジョン・ファンド 1 を良いパートナーであると考えています。また、サウジアラビアの PIF(Public Investment Fund:公的投資基金)はビジョン・ファンドの最大の投資者です。

ソフトバンクとビジョン・ファンドは、WeWork のミッションでビジネスに出資を行う際に高い評価額で株を買いました。今年これまでに 100 億ドルもの額の投入には躊躇したものの約 60 億ドル(22 億 5 千サウジアラビア・リヤル)を投資しており、これは 2010 年の設立以降に同社が調達した金額の半額近い額です。それでも、これはサウジアラビア連合にとっては相当大きな投資です。

タイミングと IPO の結果だけがこの投資の成否を決定づけるものとなります。一部のアナリストはこれが失敗に終わるであろう理由を多数見出しています。

評論家らは慎重を期すべき理由として、470 億ドルの支払いが必要な WeWork の長期リースにおける契約を挙げています。ほかにも、ニューマン氏が提案している CEO とその共同経営者に当面の実権を与えことになる複雑な議決権の不統一行使の構造によって外部投資家に会社の運営や今後の経営陣に対して発言権がほとんどなくなることが指摘されています。

普通の株主民主主義を警戒させる新しいタイプの起業家とはどういうものでしょうか? Facebook のマーク・ザッカーバーグ氏は、ソーシャル・メディア・サイトの株式公開に際してこれに似た議決権付き株式と議決権のない株式の組合わせを採用しました。さらに先見性に優れていることで定評のあるマイクロソフトのビル・ゲイツ氏はこれを不要と考えています。

ほかの懐疑派たちは、WeWork 自体がそのように見られることを望んでいる起業家のテクノロジー関連株としてすでに市場の大きな評価が置かれていて、世界経済の見通しが懸念されている昨今にもかかわらずこの数か月で上場来高値をマークしていることを指摘しています。

投資家らは、市場で IPO が開始される際にこれらすべての要因を慎重に検討します。最も重要なビジョン・ファンドの大口投資家でもあったサウジアラビアと UAE(アラブ首長国連邦)にとっては、ほかにも考慮すべき事項があります。

ソフトバンクは先般、1080 億ドルを保証した第一のビジョン・ファンドよりもさらに大きい第二のビジョン・ファンドを発表し、来年の終了までに PIF と UAE がそのベンチャーに参加する見込みであることを明らかにしました。ビジョン・ファンド 2 への Gulf の関与度合については交渉中です。

アラビア人投資家にこのファンドへの資金援助を促すためには、以前の投資に対して大きな利益が得られたかどうかが鍵になる可能性があります。彼らは今年すでに Uber の IPO で失敗しているため、WeWork に対するマーケットの反応が良いことを願わずにはいられません。

この地域の投資家が WeWork の成功を望む理由はほかにもあります。ニューマン氏はすでに UAE の首都のアブダビで Hub71 テクノロジー・ベンチャーのオフィスをオープンしており、またこの地域のほかのサイトでもオープンを検討しています。

ビジョン・ファンドは、その投資先企業の一部をサウジアラビアの Vision 2030 という改革プランの一部として設立することで非石油セクターの事業の創出を進めています。WeWork は当然ながらリヤドのハイテク・ハブのフラッグシップ・テナントになると考えられます。

海外の投資家にとってもローカルの投資家にとっても WeWork IPO の結果の影響は非常に大きく、良い結果が望まれることも当然なのです。

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