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インタビュー:核戦争と平和—日本の視点

笹川平和財団の田中伸男会長(イラストLuis Grañena)
笹川平和財団の田中伸男会長(イラストLuis Grañena)
22 Sep 2019 02:09:24 GMT9
  • 国際エネルギー機関(IEA)の元事務局長、田中伸男氏は、イランとの対立は、サウジアラビアの核エネルギーの平和的開発への野望を困難にしていると語る。

ドバイ:田中伸男氏が話すと、人々は耳を傾ける。経済、貿易、エネルギーの世界的な政策立案の幹部として50年近く携わってきた過程で、彼は、世界で最も差し迫ったいくつかの問題、たいていは極めて重要な世界的なエネルギー事業ついて、政府や多国籍企業に助言を行ってきた。 

現在69歳となった日本の思想指導者が望むのは平和である。引退し田舎で過ごすという意味ではない。彼は、「人間社会の新しいガバナンスのあり方を追求する」という高い目標を掲げた、日本の名誉ある笹川平和財団の会長として平和を望んでいるのだ。

先週東京の街中にいた彼は、中東のことが気掛かりでならなかった。サウジアラビアの石油施設への攻撃が起きたほんの数日後であり、田中氏は、攻撃の標的となったサウジアラムコの上級幹部が率いるサウジアラビアと日本の石油精製エンジニアの集まりに出席したばかりだった。

この会議は、エネルギーにおける国際的なつながりを促進する、JCCP国際石油・ガス協力機関主催によりすでに予定されていたのだが、田中氏がアラムコの上級技師の観点からこの攻撃に対する同社の見解を評価する機会となった。

「供給が混乱するリスクは明らかで、これが湾岸における直接紛争へと発展した場合、深刻な結果が生じるでしょう」と彼は語った。しかし、彼は、世界の予備容量のおかげで、世界そして資源を大量に消費する日本はこのエネルギー危機を乗り切ることができるであろうと付け加えた。

この国には、中東で起こっていることに細心の注意を払う十分な理由がある、と田中氏は説明した。日本に輸入される石油の約85%はホルムズ海峡を経由しており、その約半分はアラムコの施設から来ているのだ。2009年以来、笹川平和財団は中東イスラム基金を設置し、日本の中東地域に関する知識を広げ、そこで行われる政策論議に貢献している。

「日本が中東にエネルギー関連の関心を持っているのは明らかですが、特に宗教問題や女性のエンパワーメントなどに関するあらゆる問題を理解しているとは思いません」と田中氏は語った。 彼自身は、「非常に良い友人」であるサウジアラビア王国の新しいエネルギー相、アブドゥルアジズ・ビン・サルマン王子との長年の関係、およびキングファイサル・イスラム研究所とのつながりを通し理解を深めてきた。

田中氏のエネルギーに関する専門知識とネットワークは、国際エネルギー機関(IEA)の事務局長としての4年間の任務によって増強された。在職中は、石油価格の乱高下を引き起こした金融危機の影響に対処するため、世界のエネルギーコミュニティーの対応管理を行った。

IEAでの任務が終了するころ、日本と田中氏のエネルギー世界に対する見方を変えるさらなる激変が起きた。2011年に起きた地震と津波、福島の原子炉の被害、そして言うまでもなく災害による18,000人もの犠牲者と大規模な避難により、原子力に対する国の政策の根本的な見直しに踏み切ることとなった。

2011年以前には、日本には50基以上の原子炉があり、原子力技術は化石燃料不足に代わる最良の選択肢と見なされていた。しかし、現在稼働している原子炉はたった9基となり、核に敏感な日本では、将来について幅広く議論が行われている。

「原子力は解決策と考えられていましたが、2011年以降は変わりました。現在、再生可能エネルギーよりもコストが高くなっています」と田中氏は述べる。「原子力は安価で、安全で、クリーンであるとみなされてきましたが、もはやそうではありません。日本は、IEAの監視下で核燃料の再処理と濃縮の全範囲を行う権利を有する、唯一の非核武装国なのです。」

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