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石油市場は「パーフェクトストーム」をしのぐ必要がある

2019年9月20日、サウジアラムコのアブカイク石油処理プラントの全体図。(AFP)
2019年9月20日、サウジアラムコのアブカイク石油処理プラントの全体図。(AFP)
11 Aug 2019 02:08:52 GMT9

石油業界が忘れ去ってしまいたい一週間だったが、エネルギー政策立案者にはそのようなことはほぼ許されない。予見できる将来において、世界の原油指標に負の力の「パーフェクトストーム」が吹き続けることが定まったように見える。

来週、世界最大の石油輸出企業サウジアラムコが、同社初の投資家説明会を開催する。議題は、2019年上半期の業績、長く待ち望まれた新規株式公開(IPO)の見通し、サウジ基礎産業公社(SABIC)とのトランスフォーメーショナルな合併の進捗状況などだ。

だが、参加者の考えでは、原油価格の急落とそれを止めるためにアラムコがどのような対策をとれるかが、おそらく第一の質問になるだろう。

ほとんどの領域でアラムコからは良いニュースが紹介されるだろう。最高経営責任者アミン・ナセルは、エネルギー業界が荒れ狂う時期にあっても、このサウジ石油巨大企業がどれだけの利益を挙げられるかを冷徹な数字で証明できるだろうし、IPOに向けた重要なステップとなる、SABICとの統合がほぼ完了している事実を強調することだろう。

だが、原油価格はナセルですら制御できるものではない。原油価格は7月半ば以来およそ20パーセント下落しており、昨日のブレント原油は1バレル57ドル(CH)だった。業界で見られる最も弱気な表明のいくつかではさらなる下落が予想されており、バンクオブアメリカ・メリルリンチのアナリストに至っては、最悪のシナリオでは30ドルまで下落するとしている。

主たる理由は地政学だ。米中貿易戦争の最新の応酬では、アメリカ政府はよりいっそうの制裁を課し、中国政府は外国為替市場で自国通貨がさらに下落するのを許容したが、これが石油市場を縮みあがらせたのには正当な理由がある。

この世界貿易への最新の脅威は世界経済の成長にとって大きなマイナス要因だ、とトレーダーは見ている。2年に及ぶ米中の対立が世界の成長見通しに影響を及ぼしている重要な兆候が既に認められるし、鉱工業生産の悪化は石油の需要が減少することを意味する。

国際エネルギー機関は2019年中の予測を引き下げたが、需要減少の見通しは最近の原油価格下落の背後に存在する大きな要因となっている。

現時点で米中対立は二国間貿易における関税の集中砲火にほぼ限定されているが、これが外国為替市場に波及する可能性があるという恐怖が、原油市場をとりわけ脅えさせている。人民元が弱くなることはドルが強くなることを意味するが、ドル高は伝統的にドル建て原油価格の下押し圧力として作用してきた。

湾岸地域の緊張の高まりも大きな役割を果たしてきた。通常、この地域の安全保障へのどのような脅威も原油価格を引き上げる。トレーダーがホルムズ海峡経由での供給の安定に懸念を示し始めるためだ。

だが、今回は世界市場に原油がだぶついており、湾岸地域の航路でのイラン人によるさらなる攻撃的行動に価格は反応しなかった。実際、中国がアメリカの制裁を無視し、イラン産原油の購入量を増やして米国との対立をエスカレートさせる可能性が、もう一つの大きな下押し圧力になっていた。

現状で、世界には望むだけ量の石油が存在している。既に米国を自給可能な主要輸出国に変えたアメリカのシェール業界に、減速の兆しは見られない。一部の専門家が、最終的に財務的あるいは地質学的な壁にぶつかるに違いないと考えているにもかかわらずだ。

経済的懸念、地政学的懸念、供給面での懸念というこのパーフェクトストームに直面するいずれかの産油国にとっても、選択肢は限られている。サウジアラビアのような大産油国にしてもだ。 

OPEC最大の輸出国であるサウジアラビア王国は、既にそのシェアよりも高い比率で供給量を減らしており、また、世界最大の産油国であるロシアと連携して、生産量を減らし続けている。

だが、これ以上の一方的な減産は、多角化戦略にもかかわらずいまだにエネルギー収入が他を圧倒するサウジの国内経済を、ほぼすべての湾岸諸国の経済同様に、悪化させる。

したがって、原油市場の見通しは厳しい。サウジアラビアとロシアが率いる大産油諸国はおそらく、世界経済と地政学の嵐が弱まる時まで笑ってこらえなければならないだろう。

問題は、それがすぐに起こるだろうとは誰も確信できないことだ。

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