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インタビュー:ソフトバンク・ヴィジョンファンドはサウジアラビアと肩を並べて立っている — ラジーブ・ミスラCEO

ラジーブ・ミスラ氏(イラスト:ルイス・グラニェーナ)
ラジーブ・ミスラ氏(イラスト:ルイス・グラニェーナ)
24 Jul 2019 02:07:27 GMT9
  • 「私たちは今後数年にわたり、サウジアラビアにおいてハイテク関連雇用数万人分の創出を支援したい」

ラジーブ・ミスラ氏はデスクの椅子の背にもたれて電子タバコJUULをふかしながら、自らが最高経営責任者を務める企業ソフトバンク・ヴィジョンファンドとサウジアラビア王国との間の関係性について意見を述べた。「私たちの利害は一致しています。私たちは彼らの横で肩を並べて立っています」と、同氏は言う。

その利害の一致が、石油依存経済からの転換を探るサウジアラビアに対し、大きな経済的メリットをもたらすことになる。「私たちのコミットメントは、今後数年にわたりサウジアラビアにおいて、ブルーカラーではなくハイテク関連雇用数万人分の創出を支援することです」と、ミスラ氏は付け加えた。

世界で過去最大規模のこの投資ファンドと王国が共有するヴィジョンに関して、ミスラ氏はこれまで明確にできずにいたが、ファンドの発展における重要なこの時期に断定的な主張となって現れた。

近いうちに同ファンドは、2年前に調達した960億ドル(3,600億サウジアラビアリヤル)のほとんどを投資する予定だ。また、世界中の最先端の破壊的なテクノロジーに投資する新たなファンドの立ち上げも目指す。

それを実行するため、ミスラ氏は再びサウジアラビアの公的投資ファンド(PIF)と、UAEのムバダラ社に目を向けている。ヴィジョンファンドの孫正義会長が経営する日本のソフトバンクと合わせ、これら3つの組織は1号ファンドに巨額の財源を投入した。

孫氏とミスラ氏が世界の投資シーンを変えるとするそのミッションを実現させるには、サウジと首長国連邦からのより多くの支援が必要になる。2号ファンドの準備は最終段階にあるが、その規模が1号ファンド(PIFから450億ドル、ムバダラから150億ドル)と同じくらい巨額になるかどうかはまだ交渉中である。

しかしヴィジョンファンド側にとってみれば、中東との関係性がその野心にとって極めて重要と見なされているのは疑いない。

メイファ地区は、ロンドンを取り巻くブレグジットの混乱にも関わらず未だにこの都市のプライベートエクイティのおしゃれな中心地である。そのメイファにあるヴィジョンファンドの本部で矢継ぎ早に行われたインタビューの中で、ミスラ氏は中東との関係と、立ち上げから2年ほどの間のファンド運営の進展状況について説明すると共に、テック分野でのガバナンスと投資先評価における自らの実績に対する批判に答えた。どれも興味深い話ばかりだった。

同氏は石油に依存するサウジ経済の多様化を進める「ヴィジョン2030」戦略の支援と強化を、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が約束したことを明らかにした。この約束の実現は、新たなビジネスに投資と成長のエコシステムを作り出すことを目指す、ヴィジョンファンドの「ユニークな」ビジネスモデルの適用に左右される。「ヴィジョンファンドはユニークな存在です。多数の投資家を持つファンドではありません。資本の90%は3人の投資家から拠出されています。現在投資を行っている企業は世界中で81社に上ります。ミドルステージからレイトステージまでのそれらの企業は、データサイエンス、テクノロジー、および人工知能(AI)を使ってビジネスを行う手法において、地球上のあらゆる産業を破壊しようとしています」と、同氏は述べた。

「私たちは今後5~10年における富の創造と世界経済へのインパクトを信じています。AIやデータサイエンスが、過去20年間にわたってインターネットがもたらしてきたインパクトさえも凌ぐ、大規模なインパクトをもたらすためです」と、ミスラ氏は付け加えた。

ヴィジョンファンドはテック専門の投資家として高く評価されているが、実際には自動車駐車場からオフィス空間管理や医療、その他の分野まで、デジタル技術によって破壊・変革が可能と同ファンドが考えるあらゆる分野に投資している。

「AIやデータサイエンスは車の売り方、ホテル、保険や家の販売方法、医療や銀行や貿易金融など、あらゆる産業にインパクトを与えます」と、ミスラ氏は言う。

通常は20~50%程度行われる最初の資金注入は、ポートフォリオ企業に対するヴィジョンファンドの関与の始まりに過ぎない。「私たちの仕事は単なる投資ではありません。ポートフォリオ企業を支援し、その成長を手伝うことです」

ヴィジョンファンドはポートフォリオ企業に対するこの支援を、多くの方法で提供する。成長や人材獲得、地理的拡張を仕事とする経験豊富な熟練の専門家集団である社内「オペレーティンググループ」が、そのサービスを投資プロセスとは別に提供するのだ。

ミスラ氏は投資の数が増えるに従って、それらの専門家スタッフはすぐに100名以上になると予想する。また、ポートフォリオ全体のシナジーを開発・強化することで、大きなメリットが得られるとも考えている。投資先の企業には互いのリソースを活用する共通のニーズが存在するのだ。

「私たちは80社以上に上るポートフォリオ企業が互いに協力し合うのを助けます。それは非常に強力なツールです。ファンドのエコシステムはポートフォリオ企業やファンドにとって成長を生み出す素晴らしい仕組みになりました」とミスラ氏は述べ、すでに連携のチャンスを見つけた、あるいはそのチャンスを探っている企業の名前をスラスラと挙げた。

金融面に関して、同ファンドは「非常に好調」とミスラ氏は言う。資産評価額は20%増加しており、すでに5件の新規株式公開を果たしている。これには今年これまでに行われたウーバーの大型IPO(新規株式公開または株式市場上場)が含まれる。これについてミスラ氏は「歴史の浅いファンドとしては悪くありません」と述べ、さらに約束した。

「市場環境さえ良ければ2021年の始めまでにIPOを計画している企業を多数抱えています」とミスラ氏は述べ、今年中のIPOを検討している「もう3~4社」については「規制上の理由」から公表できないとした。

規制当局の話から、ガバナンスに関する話になった。ヴィジョンファンドは、そのガバナンス手続きにおける弱点と認識されていることに関し、批判に耐えてきた。その批判とは、魅力的な孫氏の指揮下にあるソフトバンクが、投資する企業の選定に口を挟み過ぎているというものだ。また、ファンドのコントロールが少数の投資担当幹部に過剰に委ねられているとも示唆されている。彼らの大部分が、元・ドイツ銀行の金融マンおよびトレーダーだったミスラ氏と共通のバックグラウンドを持つ。

この話題の時に初めて、ミスラ氏の気さくな態度が後退し、少しイライラしているように見えた。「私たちは投資銀行や資産運用マネージャー、テック企業など、幅広いバックグラウンドから人材を雇いました。その多くが、以前に一緒に働いたことのある人たちでした。投資は信用がものを言うビジネスです。もし誰かに自分の資金を投資させるなら、その人を信用したということです。その人の判断、誠実さ、実績に対する信用です。どんな金融ビジネスにおいても、顔見知りで信用できる人を雇うものです」と、同氏は述べた。

同ファンドに在籍する元・ドイツ銀行の幹部たちに関してミスラ氏は、「彼らはとびきり優秀な人たちです。私は当社の上級幹部の多くと、もう何十年も一緒に仕事をしてきました」と付け加えた。

ガバナンスのその他の分野についてミスラ氏は、ファンドが最初の2年間で数百億ドルの投資を行ってきたものの、上手く行くというどんな見込みに対しても単純にお金を投じることはなかったという事実を指摘しようと苦心する。「ファンドではこれまで2,000件の投資機会に注目し、そのうち投資を行ったのは80件です。従って、非常に厳格な投資プロセスと言えます」

最終的な投資判断は自分と孫氏によって行われ、投資を進めるには二人の合意が必要だったとミスラ氏は言う。しかし、投資判断に大きな発言権を持つ正式な投資・査定委員会の他、諮問委員会も存在する。委員会の過半数はPIFとムバダラの代表者が占めており、ファンドとソフトバンクの間の利益相反を避けるように設計されている。

また同ファンドは、米証券取引委員会や英国の金融行動監督機構、およびビジネスを行う世界中の場所の規制機関の規制も受けている。

現在準備中の2号ファンドも、そのガバナンス哲学は変えない。ヴィジョンファンドの持つ巨額の財源が、特にテック分野におけるベンチャーキャピタルビジネスの価値を過剰に増幅したという批判に対するミスラ氏の見解は、富の創造は何ら間違ったことではないというものだ。

もし全てが計画通りに進めば、サウジアラビアはその価値創造から恩恵を受ける主要な受益者となる立場にいる。PIFや他の投資家たちがかなりの利益(ファンドの幹部たちが「概念実証」と呼ぶ、今年末までに合計150億ドルに及ぶ可能性のある払戻金)を得るだけでなく、王国内の雇用創出、知識移転、および経済への刺激ももたらされるだろう。

ミスラ氏はすでに王国内に設立されたインドのホテルグループ「オヨ(OYO)」やカリフォルニアの建設グループ「カテラ(Katera)」などのポートフォリオ企業を強調し、それらの企業は外国からサウジアラビアへの投資の波の始まりに過ぎないと保証した。

「私たちのポートフォリオ企業はNEOM(紅海北岸に開発中のハイテク都市)で大きな存在感を持ちます。また、今後6ヶ月で多くの企業が王国内で存在感を示すことを願っています」と、ミスラ氏は述べた。

目標は、2030年までにサウジアラビアでファンドのポートフォリオ企業を50社持ち、リヤド(すでにファンドの抱える企業が6社存在する。)をデジタル技術のための地域ハブにすることだ。同氏は「ファミリー」という言葉を何度か使ってサウジアラビアとの関係性を説明した。ミスラ氏がファミリーを何よりも大切に考えていることは明らかだ。

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