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東京証券取引所、サウジアラムコの海外IPOを誘致

ニューヨークには法律上の問題が、ロンドンではブレクジットの混乱が起きている最中、東京証券取引所がサウジアラムコにとって海外上場の最有力候補となっている。(ロイター)
ニューヨークには法律上の問題が、ロンドンではブレクジットの混乱が起きている最中、東京証券取引所がサウジアラムコにとって海外上場の最有力候補となっている。(ロイター)
29 Sep 2019 03:09:30 GMT9

東京発――東京証券取引所 (TSE) はサウジアラムコが近々予定する海外での新規株式公開 (IPO) について、日本での上場を誘致するための魅力攻勢を計画している。

先日の東京での会合において、東京証券取引所で海外上場の責任者を務める永田秀俊氏はアラブニュースの取材に対し、日本側の職員とアラムコでIPO計画を担当する上級管理者たちとの間で「数回」の会合がすでに行われており、さらなる会合の準備も進められていると語った。

永田氏は「私たちは同社との話し合いを数回行った。現在は次回の会合について検討するべく、サウジアラムコとの交渉を再び始めるところだ」と述べた。永田氏は、アラムコの最高責任者であるアミーン・ナーセル氏と東証幹部が最近ではないものの、過去に会ったことがあると述べた。また、アラムコのIPOを担当する経営陣と日本市場側の職員との間でも話し合いが持たれているとも語った。アラムコ側はコメントを拒否した。

永田氏は、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が近日、天皇の即位礼正殿の儀に出席するために訪日する機会を東証は利用できると述べた。この訪日では、王族とともにサウジアラビアの上級政策決定者らが東京へやって来ることが予想されている。また、東証側は今月末にリヤドで開催される「未来投資イニシアチブ」 にも出席する予定だ。

永田氏は次のように述べた。「サウジアラムコの株価は石油価格の影響を受けるため、サウジアラビアの石油会社にとってはアジアの市場に上場することはメリットとなるだろう。東証への上場は、彼らが24時間の石油取引で常に適正な価格を実現できることを意味する」

サウジアラビアと日本とのビジネスや金融面でのつながりはますます深まっている。日本の原油輸入の40%近くはサウジアラムコによるものだ。一方、サウジアラビアの日本からの輸入品目の中では、特に電化製品や自動車といった製品が大口の取引となっている。

サウジアラビアの公的投資基金は日本の投資家であるソフトバンクの孫正義氏が立ち上げた最初の「ビジョン・ファンド」に450億ドルを投じている。孫氏はサウジアラビアの上級政策決定者と緊密な関係を築いている。

「東京はアラムコの海外上場にとって最良の選択肢だと考えられているかもしれない」との憶測が金融界で高まってきている。ニューヨークには法律や規制上の問題があり、ロンドンはブレグジットを巡る政治的混乱のせいで魅力を失っている。そして、かつてはアジアの最有力候補と見なされていた香港も現地でのデモによって苦境に立たされている。

永田氏は、東京には安定的で低リスクな投資環境があるとともに、アラムコの高水準が期待される配当金に魅力を感じるであろう富裕層の個人投資家も多数いると述べた。 

このIPOの計画は株式上場の第1ステージに選ばれた投資銀行家らの会合によって加速されている。この第1ステージには、サウジ証券取引所で今後数週間のうちに発行されるアラムコの全株式のうち、少なくとも1% (最大で200億ドルの価値) が含まれると予想されている。

報道によると、10行を超える欧米の銀行がこのIPOでさまざまな業務を果たすために雇われたという。これは史上最大級のものとなり得るだろう。ロイターの報道によれば、SMBC日興証券 (大手の三井住友ファイナンシャルグループの投資銀行会社) がこのIPOプロセスにおける最初の日本の銀行に選ばれた。アラムコ側はコメントを拒否した。

東京のとある金融機関の話から、このIPOで業務を獲得しようと売り込みを行っている日本の金融機関は他にもいくつか存在すると考えられる。この情報元はプロセスに関与していることを理由に匿名を要求している。

永田氏は、ここ数年で外国企業が東京証券取引所で減少していると語った。また、東証に上場している外国株式は200社近くという数を誇っていた1900年代から、現在ではわずか4社にまでなっていると述べたうえで、その主な理由としてインターネット取引の増加に伴って外国企業が東京に物理的に存在する必要性が無くなった点を挙げた。

永田氏は次のように述べた。「外国企業に対する要件は日本企業に対するものと同じであるため、難しいものではない」永田氏はそれに付け加えて、外国企業は株主や規制当局と日本語でやり取りをしなければならないものの、アラムコの上場にとってハードルとなるような新株発行レベルに関する最低要件は存在しないと述べた。

しかし、永田氏はアラムコが東証に上場可能となるには、まずサウジ証券取引所に上場していなければならない点は明確にした。永田氏は、「すでに上場されていれば、最低要件は存在しないため、日本にアラムコにとっての問題は存在しないだろう」と述べた。

東京証券取引所はニューヨークの2つの取引所 (ニューヨーク証券取引所とナスダック) に次ぐ、世界第3位の証券取引所だ。1878年に設立された東証は2013年に大阪取引所と合併し、日本取引所グループとなった。

昨年12月、同取引所はソフトバンクグループの携帯電話会社による210億ドルの上場という史上最大級のIPOを実施した。

ドバイを拠点として日本の金融機関で幹部を務めているある人物が匿名を条件として次のように語った。「過去20年間にわたる外国企業の大流出に苦しむ市場にとって、東証での上場は最高の戦略になるはずだ。日本が天然資源に乏しいことを考えれば、株式上場によって国内の投資家らは世界首位の石油会社の一部を所有するチャンスを得られると言えるだろう」

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