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「自由な世界」のための新たなリーダー求む

テキサス州ダラスで行われた選挙決起大会で演説する米国のドナルド・トランプ大統領、2019年10月17日。(AFP通信)
テキサス州ダラスで行われた選挙決起大会で演説する米国のドナルド・トランプ大統領、2019年10月17日。(AFP通信)
25 Sep 2019 10:09:33 GMT9

かつて私は米国のドナルド・トランプ大統領に大きな期待を寄せていた。私は彼の度量の大きさ、前向きな態度、ビジネスの才覚を高く評価していた。大統領に就任した当初、彼はイランの侵略行為に対する「重大な守護者」になることを約束し、中東からテロを一掃すると誓うことで、サウジアラビア、UAE、エジプトの指導者たちから歓心を得ようとした。私はトランプ大統領に大きな期待を寄せていたのだが、残念なことに、その期待は完全に打ち砕かれてしまった。

彼は私たちの住む世界を危うくしている。同盟国同士を争わせ、敵対国を完全な敵に変えることによって、そして過去に何百万という命を犠牲にした罪業から私たちを守るために作られた信頼できる真の同盟、すなわち国連やNATOという第二次世界大戦後の組織への資金援助を打ち切ると脅すことによってである。国際秩序を乱す彼の外交政策のおかげで、終末時計の針は午前0時にますます近づいている。

トランプは脅しと約束を突然変化させる達人だ。政策を180度転換させる、事実とフィクションを区別できない、米国がさまざまな問題に対して抱える責任から手を引く、そういった彼の振る舞いが深刻な警鐘となっている。 

彼は当初、「反戦の指導者」を自称し、米軍を中東の紛争地帯から本国へ撤退させることを約束していた。米軍は残留している。米軍基地は増加した。そして、大統領執務室の椅子に腰を落ち着けてからというもの、彼は他国の指導者たちが自分の要求に黙って従うだろうという思い込みのもと、そのような人々を怒らせ続けてきた。その中には核兵器の発射ボタンを押せるものもいる。その思い込みは彼にとって一体何の役に立っているのだろうか? 

貿易戦争において、中国の習近平国家主席は降参する様子を見せていない。それどころか、習主席は殴られたら殴り返す形で米国の関税に対抗している。

北朝鮮の金正恩総書記がトランプ大の甘言を弄するやり方に心を動かされていないのは明らかだ。金総書記は新たに直接会談を行う前提として、制裁緩和という形で行動することを要求している。

ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は彼をすげ替えようとするトランプ政権の遠大な企てにもかかわらず、その座にしがみついている。

イランのハサン・ロウハーニー大統領は対イラン制裁が続く限りは、核合意を再交渉するための協議を再開することも、米国の大統領と会談することも拒否した。トランプはイランを消し去ると威嚇している。現在、イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣は、サウジの石油施設2か所に対する空爆に関与したという疑いのもとでイランが攻撃を受けるならば、全面戦争を実行すると脅している。

これほど一貫性のない人物をどうすれば信用できるのだろうか? 彼は国々を敵対せざるを得ない状況に追い込んだ上で、傍観を決め込むかもしれないし、最悪の場合のシナリオでは、私たちの敵を利する決定を下す可能性もある。

「重大な守護者」は無礼にも、友好国の首脳を自分の命令に従うためだけに存在する手下であるかのように扱う。彼が侮辱的なツイートの標的にしている人物が記者会見の場で彼の前にひれ伏しているような状況も見られる。

トランプがドアを叩くもの全てに発するメッセージは「あり金を出せ、さもなくば容赦しないぞ」 である。トランプのホワイトハウスでは、金が一番ものを言う。最も恥ずべき人物でさえも、数十億ドル相当の投資や武器の購入を提示すれば彼の好意を得られる。彼らは誰が最高の餌を用意できるかで競い合っている。彼の存在が「ただより高いものはない」ということわざのもつ意味を深めている。

トランプは物腰の柔らかいデンマークのメッテ・フレデリクセン首相に対して冷たい態度を取った。トランプの示したグリーンランド購入の意向について、彼女が「ばかげている」と発言したというだけの理由からだ。トランプは彼女には「悪意がある」と非難し、近く行われる予定だったコペンハーゲンへの公式訪問をキャンセルした。

カナダのジャスティン・トルドー首相に対しては、「非常に不誠実で弱い」と名指しで攻撃した。また、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が欧州連合軍の設置を求めたことに対して、トランプはマクロンの低い支持率とフランスの高い失業率をはっきりと述べるツイートで彼に反論した。

イギリスのテレサ・メイ前首相については「愚かだ」と言い放ち、イギリスの前駐米大使は「横柄な愚か者」とけなした。ドイツのアンゲラ・メルケル首相もまた、彼の痛烈な非難の矢面にさらされてきた。

率直に言って、アメリカ合衆国憲法に記された揺るぎない価値観と法の支配のもとに建国された世界最大の民主主義国にとって、トランプの振る舞いはほとんどメリットがない。

例外も存在する。この「アメリカファースト」を標榜する大統領は、友人である金総書記やロシアのウラジーミル・プーチン大統領といった人々のために、魅力攻勢を行っている。前者は弾道ミサイルの発射実験をする一方でトランプ大統領に「美しい手紙」を送っており、後者は米国の諜報機関が2016年の大統領選挙に干渉したとして非難している。トランプ大統領は、かつてテロに資金提供していると非難したこともあるカタールのシャイフ・タミーム・ビン・ハマド・アール=サーニー首長をべた褒めしている。トランプ大統領は自著の中で、数十億ドルが転がり込み続ける限りは気遣うと述べている。それが理由だろう。

また、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相も含まれる。彼は米国大統領からの最も壮大な贈り物として、イェルサレムと占領中のゴラン高原を受け取った。そして、もしもネタニヤフが再選していたならば、彼はヨルダン渓谷、死海の一部、ヨルダン川西岸地区内のユダヤ人植民地全ての併合について、トランプから承認を得ていたことだろう。しかし、トランプは敗者を嫌悪する。自分の仲間が3つの汚職事件に直面して無残に失敗した場合、この米国大統領がその人物を助けることはないだろう。

トランプの無礼な振る舞いは外国からの訪問者だけに向けられているわけではない。そういったふるまいはトランプ自身の顧問やスタッフにまで及んでいる。トランプ大統領の在任中、政権の離職率がこれまでにないほど高くなっている状況を世界中が目撃している。適切なチームメンバーを選ぶ洞察力が欠如しているか、彼の感情が制御不能なほどに爆発しているか、あるいは恐れずに反対の声を上げた全員に解雇通知が出されているかのどれかだ。

連邦議会はトランプの活動に対して弾劾を視野に入れた徹底的な調査を開始した。それが成功する可能性はほとんどない。関係者の多くにとって、頼みの綱はアメリカの善良な人々が来年の選挙で彼に投票しないことだ。

ハラフ・アフマド・アル・ハブトゥールはUAEの著名なビジネスマン、公人である。彼はその国際政治に対する見解、慈善活動、平和を推進する取り組みで名高い。海外で長らくUAEの非公式大使としての役目を果たしている。Twitter: @KhalafAlHabtoor

 

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