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今は併合ではなく、真の交渉をすべき時だ

イスラエルの主権をヨルダン渓谷と死海北部地域にまで拡大することを提案するベンヤミン・ネタニヤフ氏=2019年9月10日、ラマト・ガンにて。(AFP)
イスラエルの主権をヨルダン渓谷と死海北部地域にまで拡大することを提案するベンヤミン・ネタニヤフ氏=2019年9月10日、ラマト・ガンにて。(AFP)
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08 May 2020 03:05:25 GMT9
08 May 2020 03:05:25 GMT9

今週イギリスの情報源から著しい介入行為が三回もあったということは、イギリスとイスラエルの長きに渡る関係と、イスラエル国への支持が差し迫る最大の試練に直面していることを示唆している。

7月1日以降、ヨルダン川西岸地区の領土を併合するという方針を実施し、国際的には占領地と見なされている既存の入植地にイスラエルの法を適用するという意思をイスラエル連立政権が宣言し、それに注意を促す書簡に、あらゆる党派の議員および無所属の議員の合わせて約130名が署名した。議員らはイスラエルによるこの行動をロシアによるクリミアの接収と比較し、そのような行動が容易に容認されるという、クリミアの件の模倣のような本件がもたらす結果について警告し、ボリス・ジョンソン首相には、懸念だけでなく、制裁を視野に入れた行動を起こす準備をするよう促した。

おそらくもっと衝撃的だったのは、元保守党の会計担当者であり、イスラエルへ多大な寄付を行い、ユダヤ人リーダーシップ評議会の会長でもあるミック・デイヴィス卿による、Jewish Newsに掲載された長文の記事である。イスラエルの「機能不全の政治システム」を強く批判する記事の中で、彼は「ディアスポラとの関係には実存的な課題」があると書いていた。また彼は、「イスラエルに対する実存的脅威について語るとき、併合が本物の記事になる」と付け加えている。

そして国連では、フランス、ドイツ、その他のEU諸国がイギリスと協力して、イスラエルに対する強力かつ統一された警告を発している。またイギリスの代表者は、「ヨルダン川西岸地区の一部地域の併合に向けたイスラエルの一方的な行動は、和平交渉の再開への取り組みを妨害し、国際法にも違反するだろう」と述べている。

これは無視できることではない。1948年以降、イギリスでのイスラエル国の存在への支持が揺らぐことはなく、それは先週のイギリス中東大臣ジェームズ・クレバリー、イスラエル大使マーク・リージェフの二人による温かい記事が象徴していた。二人は、70年に渡る外交関係と、各国の貿易、技術、安全保障協会の幅広い性質を正しく祝った。しかし、現在のイスラエル政府との政策の相違は拡大し続けており、それを隠すことはより難しくなりつつある。

私たちは一人ではない。米国では、親イスラエルグループの著名なユダヤ人指導者の149人が併合についての懸念を表明した。そして、これについては外部からの注目を甘く見ているか、見当違いの注意を払っていると思われるかもしれないが、一方的な併合に反対する公共広告に署名した220人の退役したイスラエルの上級治安担当者たちは、そのような状況には陥っていない。総じて、イスラエル政府は、取り払われうる海外からの不満の呟きではなく、イスラエル国とその強力な擁護者の多くとの重要な関係を損なうことになりかねない、潜在的な反対の津波に直面している。デヴィッド・ペトレイアスの有名な一言、「これがどのように終わるのか教えてください」が適切だ。

このようである必要はない。イギリスはイスラエルについて理解を示し、公的にも私的にも、イスラエルを脅かす勢力に反対する立場にあった。国境でミサイルに直面していること、ヒズボラがレバノンで武装していること、占領下のゴラン高原が他の誰かの手に渡る可能性は低いことを、私たちは知っている。イスラエルとは関係がない多くの理由で和平協定が行き詰まり、過去には平和のための土地提供が実現しなかったため、私たちは長年に渡って不満を共有してきた。私たちは長年に渡るパレスチナのリーダーシップの失敗を理解しているが、それは重要なことではない。

現在のイスラエル政府との政策の相違は拡大し続けており、それを隠すことはより難しくなりつつある。

アリステア・バート

しかし、これらのどれも、多くの人が「取り返しのつかない一歩」と呼ぶような差し迫ったリスクを正当化するものではない。これは、「取引」を成立させようとした米国が処理した非交渉のプロセスの結果であり、この試みはパレスチナの声を排除し、一連の一方的な宣言に終わり、イスラエルと米国の友人たちを不可能な立場に追い込んだのである。それは、イスラエルの存在を受け入れはしていたが、パレスチナの経済と安全が全体として中東の経済に組み込まれた公正な二つの国家の未来を待ち望んでいたパレスチナ人とアラブ諸国、特にエジプトとヨルダンの立場を危うくした。イスラエルとパレスチナの人々の友人、それはほとんど同じ人たちであるが、彼らは過去の不満にも関わらず、真の交渉を復活したいと考えている。彼らは、別の使い古された言い回しだが、これが本当に最後のチャンスであるかもしれないと恐れている。ワシントンの発表後のレトリックの最終的な結果に関わらず、多くの人は、すべての勢力が再挑戦するために真の準備を整えることを懇願しており、そうする決意のために、自分自身を探す必要があるだろう。もしそうであれば、彼らは一人ではないだろう。

国連特使ニコライ・ムラデノフ氏は、この重要な時期にこの地域が確実に取り除かれ、生存、安全、正義というすべての人の正当な権利に対処できるようにするための彼の努力に全面的な支援を受けるべきである。新型コロナウイルスは、国境や政治無しに私たちの弱さと脆さを思い出させ、結果無くしては進んでいけない行動の隠れ蓑として、または、現在イスラエルやラマッラー、そしてガザとの間で経験されている、基本的だが本物の協力から構築するための架け橋として機能するだろう。

私はイギリスが望むものをよく知っている。

アリステア・バート、元イギリス国会議員。2010年から2013年までは国務次官として、2017年から2019年までは中東担当大臣として、外務・英連邦省の閣僚職を二度務める。Twitter: @AlistairBurtUK

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