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世界環境デー:コロナウイルスは世界が気候変動を食い止めるチャンスになる

2020年3月23日、ドイツのフランクフルトでは、COVID-19の流行で航空交通が影響を受けたため、ルフトハンザの飛行機はフランクフルト空港に止められている。(ロイター)
2020年3月23日、ドイツのフランクフルトでは、COVID-19の流行で航空交通が影響を受けたため、ルフトハンザの飛行機はフランクフルト空港に止められている。(ロイター)
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06 Jun 2020 01:06:40 GMT9

新型コロナウイルスのパンデミックはありとあらゆる方面で深刻な問題となっているが、ある一点においては間違いなく良い影響を及ぼしている。それは、人類の気候変動との戦いである。

ほとんどの人々にとってパンデミックの最近の3か月は、人生の中で最も破壊的な経験だった(そして今後も続く可能性が高い)。経済が行き詰まり、失業のスパイラルに陥り、社会生活が引き裂かれてスクラップになり、公衆衛生が崩壊に近づき、国境が閉鎖されるのを、私たちは見てきた。個人の幸福と肉体的な安全性が非常に不安定になっていると感じる。危機の中で私たちは快適なものや楽観的になれるものを探さなければならない。たとえば、家族と過ごす時間を増やしたり、消費をより明確にし自制したりする必要がある。

しかし金曜日の世界環境デーには、過去3か月間で、環境に関わる最も有害な長期的傾向のいくつかが中断されたことを心に留めることもできる。(さもなければその傾向は多くの将来世代の生活に危険を及ぼすだろう。)

ネイチャー誌に掲載された最近の研究によると、飛行機の移動や地上の輸送、経済活動やエネルギー消費がウイルスのため激減したことで、4月初旬までの世界中の二酸化炭素排出量が昨年同時期と比較して17%減少したと推定されている。大都市に住んでいる人のほとんどは、空気がはるかにきれいに見えるので、すでにこのことを感じ取っている。私が住んでいるインドではロックダウンによって、1年間の経済成長の遅れ(良くない傾向)と再生可能資源を使ったクリーンエネルギーの急成長(良い傾向)が完了した。これによりインドの過去40年間の会計年度で初めて、二酸化炭素排出量が前年比で減少した。

これらの統計を大局的に見てみよう。過去10年間、気候変動が世界的な議題の中心になったにもかかわらず、現場で有意な変化はほとんどなかった。世界の二酸化炭素排出量は年に約1%ずつ増加し続けている(つまり私たちはこの問題への解決に近づいていたわけではなく、不可避な事態を遅らせていただけだ)。

現在、今世紀初めて気候変動が一時的に全人類の直面する最も差し迫った課題ではなくなったと同時に、コロナウイルスの危機により、気候変動の最大の原因となっていた活動が世界中で劇的に減少した。それはまるで全世界がある朝目覚めて、グレタ・ツンベルグに耳を傾けようと決めたかのようだ。

しかし、この変化のほとんどは自発的なものではないため、はたして持続するのだろうか? おそらくしないだろう。ただし、パンデミックによって確かに私たちは自分の生活について厳しく問いかけるようになった。また、地球の気温上昇が摂氏1.5度までになるよう気候変動を抑制しなければならない時には、一種の長期的な変化が必要となる。そういう変化に直結しうる実践を、私たちはパンデミックから学んだ。たとえば、排出量に大きく貢献する航空および地上輸送が、パンデミック前のレベルに戻るには何年もかかると考えることは不合理ではない。人類はまた、不要な消費を大幅に削減するだろう。

そして、これは政府にとってある意味恩恵である。なぜなら、パンデミックによって、政府は気候変動との闘いに必要な厳しい政策決定を開始する手間が省けたからだ。しかも世界的な合意を必要とせずに、人類の活動は普遍的かつ同時に変化した。社会の全構成員に影響を与える悲惨なショックは、人々が協力しあう余地も生み出している。

ロックダウンから少しずつ解放される中で、私たちは新たな意識を持って活動を再開する。生活は以前ほど社会的ではないが、私たちの視点ははるかに社会的になっている。個々の安全はすべての人が共有し順守すべき責任に基づいている、という共通の意識があるため、他人よりも自分を守るためにマスクを着用しないでいると、すぐに周りの人々に拘束される。これもまた気候変動との戦いには必要なことだ。

したがって政府と政策立案者にとっての課題は、この予期しない需要ショックと行動の変容を意味のある構造変化に変換することだ。ただ、経済が不況に陥り失業率が急激に上昇している中で、政府はパンデミック以前の時代に作られた気候変動目標への責任を放棄することに誘惑されるかもしれない、というリスクはある。一部の政府は国益を理由にして、トランプ米大統領が世界保健機関に対し行っているように、国際機関との関係を断ち、気候変動に関するパリ協定のような国際協定を拒否する可能性がある。

社会の全構成員に影響を与える悲惨なショックは、人々が協力しあう余地も生み出している。Chandrahas Choudhury

特に、大気および環境汚染の主な原因である天然資源の掘削を増やすことで、政府は経済を一気に好転させ、外国からの投資を誘致しようとする可能性がある。インドは先月の景気刺激策の一環としてすでにそのような一歩を踏み出しており、石炭生産部門への外国投資を呼び込み、2024年までに石炭生産を倍増するという目標を設定し、石炭輸送インフラを改良する巨額の投資に取り組んでいる。これらの目標が実現した場合、インドは実際には今後数十年間、より危険な道をたどるだろう。すべてはパンデミックのプレッシャーの下で決定を下した結果である。そして他の国も同じ道をたどるかもしれない。

地球規模のパンデミックが、気候変動につながる活動の規模を突然変化させることは誰も予測できなかった。私たちはこのウイルスを打ち負かそうとしているとしても、世界環境デーではウイルスがもたらしたこの機会を生かし、これまでと異なる生活や協力のやり方を考えることを誓わなければならない。将来の世代がこの素晴らしい惑星の、すべての喜びを享受できるように。

Chandrahas Choudhuryはニューデリーを拠点とする小説家兼作家。彼の作品はウォールストリートジャーナル、ワシントンポスト、ナショナルにも掲載されている。Twitter: @Hashestweets

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