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日本では新天皇陛下のご即位を受けて新たな時代に期待が高まる

2019年10月22日、東京の皇居で即位礼正殿の儀に臨まれる今上天皇徳仁陛下(左)と雅子皇后陛下。(AFP)
2019年10月22日、東京の皇居で即位礼正殿の儀に臨まれる今上天皇徳仁陛下(左)と雅子皇后陛下。(AFP)
22 Oct 2019 01:10:06 GMT9

日本は、その歴史を伝承し生かし続けながら、21世紀のチャンスを捉えることができるだろうか。令和という新たな時代の幕開けを告げる多くの儀式の1つである、今上天皇徳仁陛下の即位礼正殿の儀が行われている今週、日本では多くの人々がこの問題を問うことになる。日本がアジアで、そして世界で政治的にも経済的にも大国の地位を確たるものにしようとする中、日本の黄金期はもう終わってしまったのではないだろうかとの懸念が払拭しきれず、不安な空気が垂れこめ続けている。新たな天皇陛下がいかに、一方ではこれまでの時代との連続性を象徴しつつ、他方では公衆関与にフレッシュなアプローチを促進できるかに注目すれば、そこには日本がどれだけ21世紀をスムーズに舵取りできるか、21世紀にいかなる希望を抱いているかが見て取れるかもしれない。

今上天皇徳仁陛下は、世界でも最も古い王家の1つを継承されたことになり、日本国内で大きな尊敬を集めておいでだ。立憲君主として、天皇陛下は一切の政治的な力をお持ちではなく、皇室は伝統と同じくらい規制によって厳しく統制されている。しかし、天皇陛下はすでに型破りな一面もお見せだ。皇位継承自体、今回は異例の経緯をたどった。天皇陛下のご尊父に当たる明仁上皇陛下は、在位30年の後譲位されたのだが、譲位自体200年近く行われていなかった。さらに型破りな一面として、ハーバード大学とオックスフォード大学で学ばれたキャリア組の外交官でいらした旧姓小和田雅子現皇后陛下の知性やキャリアの展望に臆することなく結婚されたことが挙げられる。日本は、世界経済フォーラムの男女平等ランキングでは底辺を彷徨い続けており、2018年には110位であった。大学進学に関しては男女の差がなく、女性の方が学問では良い成果を上げることが多いにも関わらず、女性の企業経営者や政治リーダーはまだまだごく少ないのが現状だ。

さらに、今上天皇徳仁陛下と雅子皇后陛下が不妊に悩まれ、両陛下の間にはご息女の愛子内親王が1人いらっしゃるだけで、女性の愛子内親王は皇位を継承できないことも指摘しなければならない。そのことで、皇后陛下は大変心を痛められ、過去20年にわたってあまり公には姿をお見せになっていない。

簡潔に言えば、皇室は確かに特権的な存在ではあるものの、皇室も困難に直面しており、今上天皇徳仁陛下の在位中に日本が取り組まなければならない重要な問題に立ち向かえるのかという疑問が現在沸いている。天皇陛下は、学生でいらっしゃった時代から、水資源を含む環境問題に強い関心をお示しになってこられた。この点は、日本政府が推し進めている気候変動対策の政策ともうまく適合するだろう。そのため環境問題は確実に、日本から見ても、対策を進めても政治的に安全な問題となるだろう。

しかし、皇室からの支援を受ければプラスになるだろう同様に喫緊の問題には、政治的により繊細なものもある。明仁上皇陛下は、20世紀前半の日本による他国の侵略に関して、一切ためらうことなくより和解的なアプローチを選択された。上皇陛下は、日本の天皇としては初めて、1992年に中国を訪問され、日本による統治時代と第二次世界大戦中の日本による敵対的行為に関してご自身の「深い自責の念」を表明された。戦時中に在位されていた裕仁天皇陛下のご子息に当たる上皇陛下は、タカ派寄りの安倍晋三総理が政権を舵取りする中でも、ためらわずに日本が統治していたアジア地域全体での平和と和解を希望されていることをお示しになられた。今上天皇徳仁陛下は、上皇陛下のご態度を継承され、過去の敵国同士でさらなる相互理解と対話を呼びかけようとお考えかもしれない。現在日本政府と韓国政府の間では緊張が高まっているが、それに関わらず韓国の李洛淵首相が即位礼正殿の儀に参加予定であることも、天皇陛下が外交関係でも素晴らしい役割をお果たしになることを窺わせる幸先のいい兆候だ。

言うまでもなく、伝統と礼儀を尊重することに関しては、皇室に敬意を払うことは最重要である。逆に最高の敬意を払って申し入れをすれば、日本は諸問題に関して天皇陛下のご賛同を得ることができる。雅子皇后陛下自身が職業外交官としての訓練をお受けになっていたことに鑑みれば、新たな天皇皇后両陛下はおそらく明仁上皇陛下の御功績を引き継いでさらに推し進められ、世界中で歴史的記憶の政治問題化が激しさを増す今日において、和解の仲介者としての役割を果たそうとされるだろう。しかし、日本内外には、多くのハードルが待ち受けているのも事実だ。それには、日本政府自体からの反対の声も確実に含まれてくる。また、日本の戦時中の過去にこだわられすぎるあまり、日本の人々からの賛同が得られなくなる可能性もあり、近隣のアジア諸国からの抗議と板挟みになる懸念もある。

新しい天皇陛下が雅子皇后陛下とともに取り組むことがおできになるであろうもう1つの喫緊の問題として、女性の地位向上が挙げられる。皇位は直系男子にしか継承されないため、両陛下のご息女の愛子内親王は皇位を継承できず、この状況では日本が男女平等を促進する助けには全くならない。女性の皇族による皇位継承を可能にするための憲法改正の議論もあったが、徳仁陛下のご令弟に当たる秋篠宮文仁親王のご子息悠仁親王がお生まれになったことを受けて、そうした議論は白紙に戻された。これほど政治色の濃い問題に取り組むことは避けられるにしても、天皇皇后両陛下は公職にある女性の功績を取り上げられることで、もっと多くの女性に全ての分野でリーダー職につくよう促進されることなら可能ではないだろうか。

急速に変化する世界と格闘中の日本において、皇室は問題の特定と優先順序づけの役割を積極的に担っていくことができる。今上天皇徳仁陛下と雅子皇后陛下なら、両陛下のお力なしでは無視されるような人々や場所にも、そこに関わられたり出向かれるだけで注目を集めることがおできになるに違いない。天皇皇后両陛下にこれから求められるのは、高度に儀式化された宮中行事やご公務を超えて、両陛下なりの方法で日本の人々と繋がりを持たれ、日本が世界とよりよく繋がっていくことができるように取り計らわれることになるだろう。

後藤志保子は、ワシントンDCに拠点を置くシンクタンクのウィルソンセンターのアジア部門で地経済学担当副主任と北東アジア担当上級研究員を務めている。

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