この地域は何年も再建状況にある。そのすべてが生き残りと変革を求めて戦っており、イラン政府はこの変化の要因のひとつだ。あるいはむしろ破壊のつるはしといえる。イランのサウジアラビア東部への攻撃は紛争をより危険なレベルへとエスカレートさせており、我々はその全容を見る必要がある。この記事は、私がこの地域で耳にしてきた日々の議論や話し合いの一部である。
サウジアラビア石油施設への攻撃は、新たな戦線を開くのか? 攻撃はイランの宣戦布告であったが、米国政府がイランの攻撃を防ぐための防衛軍を送る公約や、あるいは犠牲を抑えるという公約など、もし必要な抑止バランスが保証されていれば、それは必ずしも新たな戦線とはならない。問題は、軍事技術的なものだ。ハイテク攻撃を監視して防ぐことができるのかという。
イランは今、前線を変化させている。これまでイランは、イエメンのフーシ派を通して遠くから戦っていた。リヤド、ジッダ、ターイフ、ジーザーン、ナジュラーンその他の地域を標的としたミサイルやドローンでサウジアラビアに行動を強いることには失敗し、そのほとんどは迎撃された。しかしアブカイクとフライスへの攻撃は、イランのサウジアラビアおよび地域全体に対する新たなレベルの攻撃と危険な国際的火遊びを示した。よって、うまくいけば望ましいバランスは、石油施設の破壊とタンカーのハイジャックによって敵方の石油を剥奪するというイラン政府の戦略を封じ込めることである。
イランの攻撃に対するサウジアラビアの報復は遅いのか? 我々はこれまでの危機がどのように対処されてきたかを思い起こしている。サダム・フセインが1990年8月にクウェートに侵攻した後、その報復は翌年の1月になってやっと実行された。国際法を確保して軍事同盟を構築するのに5カ月かかった。プレッシャーがあっても意思決定者たちは、すべての可能性を考慮しつつ最低限のコストで強力な報復を確保できるのでなければ、性急に決断を下したくはないのだ。イランは失うものがほとんどない。石油生産国としてイランはその全貯蓄額を、戦争国家を構築するために使ってきた。湾岸6カ国は、自国の産業、サービス業界、現代都市を懸念し、自衛のために余儀なくされるのでない限り軍事衝突は控える。
ロシアを名指しして、ロシアがイランの攻撃を支援したのだという者がいる。ロシアはそれによる利益があるからと。その説は理に適っているか? イランが過去に攻撃をしたことがなかったのであれば、非難を向けるべき扇動者を探すのは理に適っていたことだろう。実際のところ、ロシアはイランの攻撃による恩恵を受けていない。サウジアラビアは2、3日でなんとか石油の不足分を埋め合わせ、世界市場から石油の主要供給源を剥奪して石油価格を吊り上げようとするイランの目的を阻止した。
3日間生産を止めたことによるロシアや他の石油生産諸国への恩恵は最小限だった。懐疑主義者たちは、ロシア政府は米国政府が従来その影響力を及ぼしてきた湾岸などの領域で米国を困らせたいのだと見るかも知れず、これは2勢力の紛争の理に適った動機にも見える。しかし詳細に見れば、その反対が見えてくる。
イランの攻撃は、サウジアラビア政府と米国政府を緊密にさせており、その反対ではない。サウジアラビア政府と仲の良くない共和党リーダーのリンゼー・グラム上院議員でさえ、サウジアラビアに歩調を合わせてイランへの軍事攻撃を要求した。ロシア政府は、少なくとも今の段階ではイランの攻撃により恩恵を受けておらず、イランの攻撃はロシアがうまく立ち回る余地を縮小させている。
米国政府についてはどうか?米国が、湾岸で懸念領域を拡大して自国の武器を売ろうとする企みになんらかの関わりをもっているということはあり得るか? 陰謀論はよく単純なロジックを「くすぐる」ものだ。米国政府は、サウジアラビアの石油生産の半分を麻痺させる攻撃の支援には興味はない。物価を吊り上げ、米国経済を弱体化し、ドナルド・トランプ大統領の再選のチャンスを危うくするだけだからだ。
実際のところ、石油価格を吊り上げ、競合国を市場から締め出し、トランプ大統領に米国の禁輸措置を撤廃させたいのはイランだ。さらに、米国のサウジアラビアへの武器販売は、議会におけるトランプ政権への反対のために合意よりもはるかに少ない。米国政府が試みてきたのはサウジアラビア王国の武器を削減することであり、倍増させることではない。
サウジアラビア政府が被ることになる、トランプ大統領が言及している新たな対立の経費についてはどうか? まあ、「ただ」の戦争というものはなく、新旧の軍事同盟のほとんどが支払いをしてきた。アラブ諸国のパートナーたちでさえ、経済的な補償を期待している。しかし金銭的なことは依然として、戦争の最も安価な代償といえる。
アブドラフマン・アルラシェドはベテランのコラムニストである。彼はアル=アラビーア・ニュースチャンネルの元本部長であり、アッシャルクル・アウサト新聞社の元編集長である。
Twitter:@aalrashed