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NATO内の対立は同盟内でのトルコの将来にとって何を意味するのか?

トルコ大統領レジェップ・タイップ・エルドアンがNATO首脳サミットに参加。ワトフォード、ロンドン(ロイター)
トルコ大統領レジェップ・タイップ・エルドアンがNATO首脳サミットに参加。ワトフォード、ロンドン(ロイター)
07 Dec 2019 12:12:35 GMT9

1940年代後半から50年代前半にかけて、トルコがソ連をそこまで脅威とみなしていなかったら、西側ブロックに参加しただろうか?その場合、国際社会におけるこの国の立ち位置はどのようになっていただろうか?

北大西洋条約機構(NATO)は、ソ連に対するアメリカ合衆国と西ヨーロッパの安全保障問題における直接的な結果であった。トルコがこの機構に参加した動機は、ソ連による深刻な脅威である。アンカラのNATO参加の動きはトルコの安全保障政策だけでなく、トルコと世界中の国々との関係を形成した。当時トルコは西洋化と近代化に進んでいた。物質的な要因はさておき、西側諸国に与することで刺激されたイデオロギー的側面は、トルコをNATOの重要なメンバーとすることとなった。

この機構の70周年を祝うため、メンバーである29か国の首脳が今週ロンドンに集まった。軍事同盟の信ぴょう性を疑わせるような一部の主要国間での非常に公的ないざこざの下での開催であった。アメリカ大統領ドナルド・トランプはNATOは時代遅れと表現し、一方フランス大統領エマニュエル・マクロンは「脳死」状態と発言、このコメントは他同盟国のリアクションを引き出した。

さらに、このサミットではシリアに対するトルコとフランスの意見の相違も目立った。後者は前者のクルド民兵を標的としたシリア北東部への越境攻勢を非難し、この勢力に対するアンカラの姿勢はシリアとイラクに展開しているNATO同盟国の努力を阻害するものであると述べた。

この論争中一貫してトルコの立ち位置は明確であり、トランプはトルコのカウンターパートであるレジェップ・タイップ・エルドアンへの支持を表明した。マクロンのNATOについてのコメントに対するトルコの返答を引き合いに出し、「トルコは彼が脳死状態だと応酬した。面白い。」マクロンのコメントに対しては「これは様々な職務を行っている者に対する侮辱だと思う。NATOの運営にとてもいい仕事をしていいる男も含めて。」と発言。

東西世界の終焉を告げたベルリンの壁崩壊の30周年式典からわずか数週間後には、NATO内でのアイデンティティ危機は加盟国の首脳による非難の応酬にまで発展した。これはまるで外的脅威が消え去ってしまったかのように、加盟国は互いに別の方向を向きつつある。

しかし、外的脅威は未だ健在であり各国も認識していることは、サミットでの共同宣言でも明らかである。「ロシアの攻撃的な行動はNATOへの脅威となる;あらゆる形態のテロや示威行為は依然、全加盟国に対する根強い脅威だ」

サミット後、NATO事務総長イェンス・ストルテンベルグは、トルコによるロシア製S-400ミサイル防御システムの購入は、同盟国にとって到底受け入れられるものではないと説明した。

トルコの戦略的位置は東西どちらも無視できないところにある。トルコはNATO参加国で唯一シリア、イラン、イラクと接している国であり、ヨーロッパから中東への一番の近道でもある。ボスポラス海峡とマルマラ海、そして地中海に通ずる黒海とエーゲ海間のダーダネルス海峡を支配下に置いている。これらすべてのおかげで、トルコはアクセスと安全保障の意味において西側諸国にとって戦略的価値がある。さらに重要なことに、その軍事力とロシアへの地理的な近さ、そして黒海がトルコをロシアに対するNATOの主要プレイヤー国としている。

トルコは同盟設立以来NATOには多大な貢献をしてきた。1950年から53年までの朝鮮戦争では、トルコ軍はアメリカ軍と一緒に戦い、国土へのアメリカ軍基地設置を許可した。1999年にはセルビアでのアライド・フォース作戦に参加。ボスニアとコソボでNATO平和維持軍にも参加した。最近ではISISを目標としたNATO加盟国による作戦に参加した。

これらの全てにも関わらず、トルコは西側同盟諸国と同等には扱われず、そしてそのことがアンカラに調和を乱させ、特にシリアにおいてロシアへの独自のアプローチを決断させることとなった。アスタナ和平プロセスが良い例である。

国家間の同盟は共通の目的や共通の脅威への対抗のために設立される。近年グローバルな脅威とバランスは特に中東において変化している。トルコの自国の安全保障を優先する決断は、NATOから排除する有効な理由にはもちろんならない。しかし、NATOと国連が時代遅れの組織という批評家の提言は、もはや密室のささやきではなく公然とした共通認識となっている。

エルドアンは何度も「世界は5か国だけじゃない」と言っている。これはアメリカ、ロシア、中国、イギリス、そしてフランスの国連安全保障理事会の常任理事国のことを指している。言い換えれば、世界はこれらの国々のみの決断によって形成されるべきではない-他国も参加すべきだ-ということである。

これは国際システムの安定化を模索する中、世界中で次第に声が上がっている世論の批判である。

  • シネム・センギスはトルコと中東の関係を専門とするトルコ出身の政治アナリストTwitter: @SinemCngz
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