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イランの米国・サウジアラビアに対する敵対心は遺恨によって焚き付けられている

イランのイスラム革命を指導した故アヤトラ・ルホラ・ホメイニ師。(Shutterstock)
イランのイスラム革命を指導した故アヤトラ・ルホラ・ホメイニ師。(Shutterstock)
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22 Dec 2021 02:12:29 GMT9

イランの政治体制は内政と外交で対応が異なる基本原理のもとに成り立っている。

国内において政権は超大国から独立した体制であることを強調し「西でなく東でなくイスラム共和国である」をスローガンに掲げている。これに加えて政権は現体制以前に同国を統治していたパフラヴィー(パーレビ)朝への反対姿勢を常に明確にしている。

中東においても世界においても、イランの政権は海外ではほとんどの国家に対して敵対的もしくはけんか腰で臨んでいる。その憎悪が同じ型で表現されることはほとんどなく、対中東諸国とその他の諸外国への対応の違いは明らかである。端的に述べると、政略的な敵対心と観念上の敵対心があるのだ。政略的敵対心はイラン政権の支持者が中東全域で繰り返し「アメリカに死を」「イスラエルに死を」などと組織的に連呼することで表現されているものである。

イランと関係を持つイエメンのフーシ派民兵が連呼する「アメリカに死を、ユダヤ教徒に天罰を、イスラムに勝利を」などのように、こうしたスローガンの変形もみられる。

このタイプの敵対心が政略的・修辞的な側面に限定される理由はいくつかある。何よりもまずその第一はイランおよびその同盟者らは、そうすることで西側諸国の植民地主義による破滅的な影響を何世紀にもわたって体験してきたムスリム世界において共感が得られることを認知した上で、主に西側諸国のグローバルな帝国主義に対する防波堤を自認していることである。

中東ではパレスチナの民衆に対する数十年間続く不当な仕打ちと、西側諸国がこの危機的状況に対する公正な解決策を見出せないこと、そして占領者イスラエルを犠牲者パレスチナよりも明らかに優遇することについての恨みが蔓延しており、イラン政権はその恨みを利用している。こうした当然の恨み・怒りをイランの現政権は米国およびイスラエルに対する自身の憎悪・敵意の喧伝に利用する。

故アヤトラ・ホメイニ師は遺言において米国について17回言及しており「大悪魔」とのレッテルを同国に貼っていたことは有名である。「テロ国家アメリカに対する敵対心に我々は誇りを持っている」と題された文書において同師は「犯罪的で不吉な目標を達成するためにはいかなる犯罪・違反を犯すことについても何も感じない」アメリカ人を「けだもの」と呼んだ。アメリカ人は「テロ国家アメリカ」とその同盟者である国際シオニズムの「覇権的で卑劣な野望」を達成し世界中を紛争の渦に巻き込むためには友人と敵の区別をしない、と同師は断言した。

米国・イスラエル・西側諸国に向けられたこうした政略的敵対心は、主にサウジアラビアに対して向けられる観念的・地政学的な要因を持つイランの観念的敵対心とは異なるものだ。1989年の発言でホメイニ師は「サダム・フセインを許すこと、アル・クドゥス(エルサレムのアラビア語名)に固執しないこと、米国の犯罪を無視することなどが可能であったとしても、サウジアラビアを許すことは決してない」と述べた。

ホメイニ師の遺言を読むものは皆、同師が最も敵対心を持っていたのはサウジアラビアであることにすぐに気づく。イランの憲法では同国最大の目標としてまず北はレバノンから南はイエメンまでの中東への「革命の輸出」を唱えている。ホメイニ式観念に基づくと、イランの原理的な教義・観念上の義務は「隠されたイマーム」の再来への道筋をたてることにある。

イスラム教は法理学的・宗派的に多様であるにもかかわらず、イランの最高指導者は全イスラム教徒に対する指導権を自認し、イランはムスリム世界の指導的立場にあると考えている。メッカとメディナというイスラム教の二大聖地がサウジアラビアに位置しておりイラン政府の支配が及ばないため、イランの野望は失敗に終わった。そのためイランは直接的もしくは間接的に「二聖モスク」を支配下に収めることができるようサウジアラビアの弱体化・不安定化を望んでいる。

こうしたイランの野望の兆候は多くある。「サウジアラビアは二聖モスクを管理するに値しない」と唱える会議・討論会・デモをイラン指導部は世界中で開催もしくはその資金を援助している。二聖モスクの管理をイスラム共同体のもとに委ねることをイランは幾度となく明白に要求してきた。

イランの外交政策は敵対心および攻撃性の政略と観念をもとにしているとみなされるべきである。イラン政府の領土拡張計画や政情を大きく不安定化させる「革命の輸出」という方針に対抗する国家に対しては特にこの傾向が強い。

モハメッド・アル・スラミ博士

加えてイランはモハンマド・ジャヴァード・ラーリージャーニー氏が1980年代に初めて考案した「ウンム・アル・クラー理論」を唱えている。この理論の本質は「イスラム共和国」と呼ばれる主体は単に数多くあるムスリム国家の内の1国家なのではなく、実際は「ウンム・アル・クラー(イスラム教の家)」であり、イランの勝利または敗北はイスラム教の勝利または敗北を意味する、というものだ。

この理論はイランがイスラム世界の指導者であると定めており、「ウンム・アル・クラー」となることを目指す国家は承認された地理的な国境を超えた支配権を持つ、と断定する。「ウンム・アル・クラー」はいかなる国家の絶対的な生得権でもない。つまり特定の時期においては特定の国家が「ウンム・アル・クラー」の旗手となりえる。イスラム革命が成功を収めたのち、イランが「ウンム・アル・クラー」つまりイスラム教の家になった、というのだ。

過去にはサウジアラビアが非合法的にメッカおよびメディナを占領しているとまで主張したことのあるイラン指導部に対して、この理論はイランの強硬的シーア派教義の中心地であるコムをメッカと並ぶ聖地とすることを提唱する都合の良い口実を提供している。この理論によるとメッカはサウジアラビアの占領下にあるという。この理論は盛んに布教されたにもかかわらず現実的にはイスラム教国家においてまったく受け入れられていない。

この理論の失敗によりイランはシーア派地政学を重要視することになった。サウジアラビアを含む中東地域の不安定化のために少数派のシーア派がかりだされ、訓練・支援を受けている。このようにしてイランはヒズボラを作り出し、その構成員に訓練を施し、資金・武器を送り込み、サウジアラビア国内でテロ活動に従事させている。現在イランはイエメンのフーシ派民兵を用いてサウジアラビアを標的としている。イラン・イラク戦争中にホメイニ師が唱えたスローガン「エルサレムへの道はカルバラーを通る」の変形であるスローガン「エルサレムへの道はメッカを通る」をフーシ派民兵は連呼する。

これらの明白な事実は遠くの「他者」=米国に対しては政略的に持つ敵対心、近くの「他者」=サウジアラビアに対しては政略的および観念的に持つ敵対心の上にイラン政権が成り立っていることを示す。このことでまたイランがアルカイダなどのテロ組織を支援し、それらの指導者をテヘランに招く理由の説明もつき、またそれは米国とサウジアラビアの関係を悪化させるために9・11テロ事件に関わっていた疑いのある人物たちの国内通過を助けたことの説明ともなる。

よってイランの外交政策は敵対心および攻撃性の政略と観念をもとにしているとみなされるべきである。イラン政府の領土拡張計画や政情を大きく不安定化させる「革命の輸出」という方針に対抗する国家に対しては特にこの傾向が強い。イラン政府の戦略目標達成を阻止することが可能な主要勢力にはサウジアラビア政府と米国政府が挙げられる。

結論としてホメイニ師の遺言の言葉を思い出さなければならない。これらの言葉は抽象ではなく指令の表現である。同師は「今は米国およびソビエト連邦、そして聖なる大モスクの裏切り者であるサウード家(神・天使・預言者の祟りが彼らに加えられますことを)を含むそのすべての迎合政権の手によってイスラム社会が抑圧されている時代である。不敬者どもを呪い、心から非難し、この問題に言及せずにはいられないのである」と述べたのだ。

  • モハメッド・アル・スラミ博士はラサナー(Rasanah)国際イラン研究所の所長を務める。ツイッター: @mohalsulami
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