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イノベーションとデジタル技術を通じた農業食品システム変革に向かうアジア太平洋諸国

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26 Feb 2022 07:02:00 GMT9
26 Feb 2022 07:02:00 GMT9

アジア・太平洋地域の栄養事情は、現在、地域全体で厳しい状況だ。住民の約40%が健康的な食生活を送ることができず、飢餓との闘いは前進するどころか悪化している地域もある。新型コロナウイルスの大流行により、命と暮らしに大きな打撃を受けたことで、貧困撲滅(SDGs目標1)と飢餓撲滅(SDGs目標2)という持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた前進は軌道から外れている。

しかし、幸いなことに、状況は暗いばかりではなく、楽観と活力の兆しもある。この地域の農業食品システムの進歩は、食糧の持続可能な生産、販売、消費のあり方を変えつつある。この変化は、アジア太平洋地域の生産者の意識の高まりと、より健康的で栄養価の高い食品を求める消費者の需要の高まりを反映している。

農畜産物生産者や漁業者、牧畜業者、その他の生産者や小売業者などが、規模の大小を問わず、革新的なアイデアやデジタル技術をうまく利用している。このような生産と持続可能な資源管理の改善により、彼らの懐にはより多くの収益が入り、同時に環境悪化の抑制にも貢献している。

こうしたすべての動きによって、世界の他の地域でも進みつつあるパラダイムシフトが生まれている。アジア太平洋地域では、農業食品のバリューチェーン全体でイノベーションとデジタル化を目指す動きが明確に発展している。

小売の食料品や食品購入はその重要な例だ。これは先進国だけの現象ではなく、食品や食料品のオンライン購入の売上の5分の4をアジア太平洋地域が占めている。

これは、西アジアから、南アジア全域や東南アジア、東アジア、太平洋島嶼国まで、アジア太平洋地域中の国々を急速に変貌させつつある農業食品システムの見直しの一側面に過ぎない。

太平洋の小島嶼開発途上国(SIDS)では、草の根の起業家たちがどんどんと前進している。彼らの革新的なスマートフォンアプリは、生産者と消費者が十分な情報を得た上で、栄養価の高い食品を選択するのに役立っている。また、民間部門と開発部門は、一層利用可能なデータを活用し、農産物の市場へのサプライチェーンをより効率的かつタイムリーにし、また、異常気象に脆弱な地域をマッピングしている。これらのイノベーションのいくつかは、2021年8月に国際連合食糧農業機関(FAO)とフィジー政府が共同開催した、隔年開催イベント「SIDSソリューションフォーラム」の第1回で紹介された。

フンガトンガ・フンガハアパイ火山の噴火でトンガの海底通信ケーブルが切断されたように、オンデマンドで中断なくデータにアクセスすることにはまだ課題がある。しかし、このような挫折は、それを乗り越えるために必要な新しいアイデアを生み出すだろう!

FAOでは、アジア太平洋地域のメンバーとともに、より効率的で包括的、強靭で持続可能な農業食品システムを構築し、すべての人々の利益となるよう取り組んでいる。また、「ハンドインハンド・イニシアチブ」を通じて、2030年までにSDGsの目標を達成するために、政策立案者がデータ、テクノロジー、イノベーションをさらに活用する計画を支援している。

私たちは、FAOの「1,000デジタル・ビレッジ・イニシアチブ」の一環として、地域全体のデジタル・ビレッジの把握と支援を積極的に行っている。私たちは、国主導のSIDSソリューションと「ハンドインハンド・イニシアチブ」の育成と推進を続けている。これには、気候事象の緩和と適応に関する助言、パンデミックと気候危機による命や生活への被害克服を支援することが含まれる。

これらは、3月8日から11日までバングラデシュのダッカで開催される第36回FAOアジア太平洋地域総会で議論されるトピックの一つである。この地域のFAO加盟国計46カ国は、「国連食料システムサミット2021」の勧告に加えて、「FAO戦略的フレームワーク2022-31」の下で、変革のアジェンダと行動を構築するために一堂に会する。

FAOは、サミットのフォローアップとして最近設立された調整ハブを主導し、各国の優先順位に沿う農業食品システム変革に向けた国の道筋のさらなる開発と実施を支援する。

私たちは、アジア太平洋地域のメンバーとともに、より良い再建のための世界的な取り組みへのコミットメントの一環として、女性や若者を含めた学術研究機関、市民社会組織、組合、国会議員、民間セクターとのより強力なパートナーシップを構築していく。

FAOは、この地域が大局的に考え、具体的に行動できるよう支援している。私たちは建設的な支援を行っているが、私たちの共同目標に到達するためには、さらに多くの支援が必要だ。より良い世界と子供たちのより良い未来のために、私たちはより良い生産、より良い栄養、より良い環境、そして誰一人取り残さない、全ての人のためのより良い生活を必要としている。

そのためには、強い政治的意思と、効率的で効果的かつ首尾一貫した多国間の行動が必要だ。

  • 屈冬玉氏は、国連食糧農業機関(FAO)の事務局長を務めている
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