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トルコ野党にとっての外交政策上の課題

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06 Mar 2022 03:03:14 GMT9
06 Mar 2022 03:03:14 GMT9

数ヶ月にわたり連携を行っているトルコの6つの野党の党首は、選挙法と制度の抜本的な改革を行い、約20年にわたるレジェップ・タイップ・エルドアン大統領の政権を終わらせることを目指し、歴史的な協定を結んだ。これは、エルドアン氏に対抗するために連携を模索してきた野党党首らがこれまでに行った取り組みの中で、最も重要な出来事と言える。また、政党連合が公約を発表するのはトルコ政治史上初めてのことである。

各党の政治的・思想的背景が大きく異なるにもかかわらず、この連合は来年の重要な選挙でエルドガン氏に対抗する最も強大な政治勢力である。同協定は、1923年から2017年まで施行されていた議会制への復帰を求めるほか、女性の権利、政治倫理、社会政策、環境、報道の権利と自由などにも取り組む。これらは全体として、野党連合が共有する理念であり、政権を握ったあかつきに何をするかという意思表示だ。

しかし、外交政策については重点を置かれていない。従って、この連合が外交戦略において共通の政策で合意に達せられるのか否かを判断するために、6人の野党党首の姿勢を明らかにすることが重要だ。ただでさえさまざまな政治的・経済的問題に直面しているトルコで、このような軋轢のある連合に外交政策のかじとりができるのだろうか。

野党6党はいずれも、冒険主義やポピュリズムに代わり、外交や善隣友好を重視した新たな外交政策を行うことを公約に掲げている。しかし、どの政党が政権に就くにしても、世界的・地域的な動態の変化の中で、将来のトルコ政府も現政権と同様の構造的な問題に直面する可能性が高い。

地域レベルでは、シリア内戦がトルコの安全保障を脅かす状況が続きそうだ。共和人民党(CHP)のケマル・クチダルオール党首は、政府のシリア政策批判の急先鋒である。CHPが政権をとった際には、アサド政権との関係を正常化し、トルコ国内にいるシリア難民を2年以内に帰国させ、「悲劇」を終わらせると公約している。

エルドアン政権の下、トルコの外交政策は根底から変わり、独自路線を進んだ。

シネム・センギス

野党連合で唯一の女性で、右派・IYI党を率いるメラル・アクシェネル氏も、国民の大きな不満の種となっているシリア難民の本国送還を公約に掲げる。イスラーム主義政党の福祉党(現在は消滅)を起源にもつ至福党のTemel Karamollaoğlu党首も、政府の中東政策全般、特にシリア政策を批判している。

とはいえ、アサド政権との関係正常化は、野党連合内で衝突しやすい問題である。未来党のアフメト・ダウトオール党首は、外相時代にトルコのシリア政策の指揮をとった人物で、アサド政権批判の急先鋒として自身の外交政策の理念を貫いている。シリア以外にも、トルコのリビアへの介入、エジプトやイスラエルとの関係、湾岸諸国との和解プロセスなどは、野党連合の間で意見が一致する部分もあれば、相違する部分もある分野だ。

EUとの関係も重要な問題だ。クチダルオール氏は、長らく停滞しているトルコの正式な加盟に向けた交渉を再開するようEUに要請したうえ、先日アンカラでEU大使と会談し、選挙公約を説明した。欧米諸国からの支持獲得を狙ったと見られるが、同党の最近の外交戦略も反映された動きだと言える。

2002年から2007年に経済大臣を務め、2009年まで外務大臣を務めたDEVA党のアリ・ババジャン党首も、トルコ・EU関係の回復を支持している。ババジャン氏はさらに、エルドアン氏によりトルコのEU加盟交渉担当責任者に任命されている。外交政策のほか、ババジャン氏が5年間担当した経済も国民の不満の種になっている。

まとめると、変わりゆく国際情勢の中でトルコの外交政策を転換することは、誰が政権の座についたとしても容易なことではない。異なる政治的背景を持つ野党党首らにとっては、なおさらだ。ババジャン氏とダウトオール氏はともにAKP(公正発展党)の高官を務めた経歴があるが、その政策やイデオロギーの傾向は大きく異なる。また、他の4人の野党党首にとって、外交戦略を一致させまとめることは大変な仕事ではあるだろうが、不可能ではない。

エルドアン政権下でトルコの外交政策は根底から変わり、独自路線を進んだ。外交政策決定における機関の役割を再確立することは、未来のトルコ政府にとって最も重要な課題である。

  • シネム・センギス氏は、トルコと中東の関係を専門とするトルコの政治アナリスト。Twitter: @SinemCngz
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