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シリア内戦はウクライナ紛争にどのような影響を及ぼすのか

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19 Mar 2022 06:03:16 GMT9
19 Mar 2022 06:03:16 GMT9

この1世紀で世界が「一つの国」になった。そして現在、一つの国家の危機は国際社会全体にとって重大な関心事となる。ロシアのウクライナ侵攻が、欧州の安全保障秩序を揺るがし、地域の均衡を脅かすだけでなく、他の地域の紛争にも影響を及ぼすことは、その初日から明らかであった。

シリア内戦は、死と破壊と大量の避難民をもたらし、同国を複雑かつ重層的な危機に陥れた。内戦開始から11年経った今でも、シリア反体制派は依然として分断されており、その代表者の正当性はシリア国内外から広く疑問視されている。一方、アラブ諸国はアサド政権との関係を正常化し始めている。アサド政権は、現在ウクライナ侵攻を推進している人物、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の大規模な支援により、反対派に奪われていた領土の大半を取り戻したのである。2015年のロシアによるシリアへの軍事介入は、モスクワにとって数十年ぶりの中東への重要な関与であり、現地の勢力バランスを、政権に有利なものに変えた。

東欧での戦争は、大陸を隔て、数百キロメートル離れたシリアの地にさらに影響を及ぼしている。体制派、反体制派がウクライナにおいて、それぞれが敵と戦う準備をしているのだ。ロシアはウクライナで戦うためにシリア人を採用し始めた。ウクライナ防衛側とともに戦うと述べている、他のシリア人もいる。北西部の反体制派地域にいるシリア人は、ウクライナは同じ敵を相手にしていると考えており、同国の抵抗を注視している。シリア内戦開始から11年目を迎えたイドリブのデモでは、ウクライナの国旗も見受けられた。ウクライナ国民との連帯を表明する横断幕が掲げられ、デモ参加者は「ウクライナのためにロシアと戦いたい」と語っている。

しかし、近年はシリアの反体制勢力の影響力は弱まっている。イランとロシアがシリアのアサド大統領を断固として支持しているためだ。彼らが現地での軍事的展開に影響を与えることができるのは、トルコとの国境沿いの地域に限られている。

このようにロシアとアサド政権が緊密に連携していることは、ロシアと欧米が対峙(たいじ)する舞台の1つであるシリアが、モスクワにとって依然として優先度の高い国であることを示している。

シネム・センギス

反体制派統一組織のシリア国民連合がアンカラの事務所を閉鎖したと報じられた。同連合はシリアの内戦が始まった1年後にカタールで設立され、本部はイスタンブールにあった。反体制派の情報によると、閉鎖は「一時的なもの」であり、トルコ政府からの要請との見方を否定した。また、シリア反体制派の約80人が2月上旬、ドーハで会合を開いた。反体制派を再編し、国際レベルでより効果的に活動できるようにする方法を話し合った。

このようにシリア反体制派にとっては厳しい状況が続いている。その中で、ロシアの数少ない同盟国であるアサド政権は、ロシアのウクライナ侵攻を非難する国連総会決議において、圧倒的多数の国々が賛成票を投じるなか、当然のことながら反対票を投じた。2月、侵攻開始の数日前、シリアのファイサル・アル・ミクダッド外相はモスクワでロシアのラブロフ外相と会談した。その席でシリアは、ロシアの侵攻を予感させるウクライナ東部の2つの独立「共和国」に対するロシアの承認への支持を表明している。2月24日の侵攻当日、プーチン氏はアサド氏と電話で会談し、アサド氏は混乱の原因を欧米にあると非難した。これでシリア政権はロシアへの外交的な借りを返したように見える。

このようにロシアとアサド政権が緊密に連携していることは、ロシアと欧米が対峙(たいじ)する舞台の1つであるシリアが、モスクワにとって依然として優先度の高い国であることを示している。しかし、シリア人が自国の戦争でどちらの側にいようと、ウクライナ紛争にどちらかの側で参加する恐れが高まっており、一部はシリア内戦の再来となる可能性がある。この2つの紛争は、どちらも主役であるロシアが関与している。シリア危機の行方は、ロシアが短期的にウクライナでの主目的を達成できるかどうかにかかっているように思われる。しかし、政権や反対派の姿勢、あるいは現時点でのモスクワの戦略がどうであれ、シリアは東欧での戦争がもたらす経済的・安全保障的な影響の両方に直面することになりそうだ。

  • シネム・センギス氏はトルコと中東の関係性を専門とするトルコの政治アナリストである。 Twitter: @SinemCngz

 

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