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良い社会は起業家を育て、起業家が経済を育てる

真の起業家は、自己更新のプロセスとして、オリジナルのアイデアを体験し切って、売り払い、新たなアイデアに移行するものだ。(Shutterstock)
真の起業家は、自己更新のプロセスとして、オリジナルのアイデアを体験し切って、売り払い、新たなアイデアに移行するものだ。(Shutterstock)
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26 Mar 2022 09:03:38 GMT9
26 Mar 2022 09:03:38 GMT9

今月末に開催されるリヤド・グローバル・アントレプレナーシップ・コングレスは、リスクを恐れないサウジアラビアの優秀な起業家たちに出会う機会だ。シュンペーター派の経済学者たちは常に起業家精神をイノベーションと見なしてきた。新しい機会を開拓しリスクをとる能力のある者が既存の資源を組み合わせてより大きな利益を得る斬新な方法だ。

世界中の知識集約型経済では、そして最近ではサウジアラビアの「ビジョン2030」の一部として、従来のエネルギー主導の基盤から離脱し、情報技術による国際化した世界経済に参加するために、このような経済モデルが奨励されてきている。

その土地に根づいた起業精神に溢れたエコシステムを発展させていくことは簡単ではなく、協調的な政策と多面的な取り組みが必要となる。アイルランドやシンガポール、フィンランドなどの国々は、財政的なインセンティブの集中的な活用と、さらに重要となる人的資源の活用によって競争力を高めてきた。これらの国の経済に共通する特徴は、テクノロジーや知的資本に支えられているところだ。そのため、成功と失敗を分けるのは、起業家精神の本質である創造性と革新性となる。正しく実行されれば、民間企業セクターと中小企業が経済を率いていくことになるだろう。製造業や輸出を基盤とした経済から、異なる部分に重点を置いた知識経済への移行に成功した社会もある。

一般的なアントレプレナーシップのビジネスモデルをテンプレートとしてコピーして、特定の国らしさを付け足すという考えは時に魅力的だ。だが、経済的な道筋を描く際には、家族や環境のダイナミクスのような社会学的な要因にも目を向けなくてはならない。その他にも、計画性や組織性、リーダーシップに重点を置くことなど、経営者としてのスキルが成功の鍵を握っているのだ。夢を持つのはいいことだが、それを現実にするのはまた別の話だ。

雇用創出、イノベーション、生産性において起業家や中小企業が果たす役割は、公共政策上重要な意味を持つ。

モハメド・ラマディ博士 

起業したビジネスを実際に軌道に乗せるには資金管理が重要な要素であり、ベンチャーキャピタルが必要だ。起業のアイデアは偶然の産物ではなく、新しいアイデアを求めてビジネス環境を精査していく体系的なプロセスから生まれる。

中小企業にとっては、起業から数年間は事業を継続することが大きな野望となる。そして、若い企業はしばしば国からの資金援助や、学びを与えてくれるロールモデルを必要とする。しかし最終的には、特に意欲に溢れた湾岸諸国では、リスクに対する正しい姿勢と優れた教育、情報へのアクセスに注意を向ければ、供給側の起業家を育てていくことができるだろう。この数年間はサウジアラビアにとって変容の時期で、民間部門に力を与えるための改革が相次ぎ、現状が一変した。法律や経済における動きは、起業の機会を生み出すのに役立っている。

雇用創出、イノベーション、生産性において起業家や中小企業が果たす役割は、公共政策上重要な意味を持つ。

リスクを恐れないというこの新しい姿勢なしでは、大企業の支配は強まる一方で、より硬直化した産業構造が蔓延することになるだろう。それが、湾岸諸国の現状だ。一部の大企業は、ほぼ独占的な外国代理店権や販売契約を所有してきたことにより、現在のステータスを享受している。

起業家は、特にトレーニングの取り組みや、新規ビジネスのための技術、経営面での専門知識などにおいて、政府の支援を求めている。また、地域の教育制度も重要だ。技術面、経営面、両方のスキルが混ざり合うことで起業文化が育まれる。これは、中等教育から始める必要がある。将来を見据えた教育システムには、小中学校から大学までしっかりとし企業活動に関する学習が必要なのだ。

また、アイデアを商業的な可能性に結びつけるために、産業と教育との協力関係を強目る必要がある。サウジアラビアの一部の大学では、大規模な地元の企業や多国籍企業と共同でビジネステクノバレー、またはハブを設立することで、この課題とうまく取り組んでいる。これらのセンターでは、業界の専門家を招き、学生向けの講義を開催している。内容は起業の経験や、もっと重要なのは、ビジネスを創業者の手に委ね続けておくことのメリットとデメリットについての洞察などだ。

真の起業家は、自己更新のプロセスとして、オリジナルのアイデアを体験し切って、売り払い、新たなアイデアに移行するものだ。3月27日から30日まで開催されるリヤド・グローバル・アントレプレナーシップ・コングレスでは、そのような意欲的な若いビジネスの才能が一挙に集結する。

  • モハメド・ラマディ博士は元シニアバンカーで、現在はダーランのキング・ファハド石油鉱物資源大学で金融・経済学の教授を務めている。
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