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エルドアンと地域におけるリーダーシップの野望

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25 Dec 2019 11:12:21 GMT9

トルコ政府はこれまでにリビアへ軍隊を派遣していないが、それでも同国の内戦に日々関与している。首都トリポリをかろうじて守っている、国際的に承認された国民合意政府を支持しているからだ。

8年前に勃発したリビア内戦において主要な協力者としての役割を保ってきたトルコが、リビアに対する関心の根拠とするのは、2011年の崩壊までムアンマル・カダフィ政権に注いだ莫大な投資だ。

先週、新型潜水艦の進水式でトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はリビアに「手を伸ばす」可能性を警告したが、その後すぐにリビアは自国の海岸近くでトルコ籍の船舶を拘束しようとした。エルドアンがあちらこちらで戦おうとするのには、実はもう一つ理由があり、それは個人的なものだ。中東において自身がリーダーとなり、トルコを中心勢力にするという野望である。

エルドアン氏が大統領に就任して以来、トルコは地域における最大勢力になることを目指してきたが、それには功績よりも失敗の方が多い。最大の挫折は、味方であったエジプトのムハンマド・モルシ前大統領の滅亡と、「ムスリム同胞団」がたった1年で衰退したことだ。

最近では、スーダンにおける同盟者オマル・バシールの失脚と、それに伴った30年間に及ぶムスリム同胞団による支配の終わりが最大の挫折だ。スーダンの国民によって確立された新政権はトルコとの軍事協定を解除し、またエジプトに近いサウジアラビア沖での圧力を示すためにトルコが軍事基地にしようと計画した紅海のスアキン島の貸与を取りやめた。

アラビア湾 周辺では、トルコはカタールを拠点に5,000人規模の軍事力を持っているが、空軍の活動は禁じられている。同じくカタールに2か所の軍事基地を持つ米軍が空域を占領しているからだ。そのためイラン危機におけるトルコ軍の役割は周縁化されローカルの陸上部隊に留められた。

トルコ軍はシリアにも侵攻しているが、これはトルコにとってむしろ砂地獄となった。軍事作戦「オリーブの枝」を展開した当初は、トルコ政府最大の敵であるクルド人民兵組織が活発な地域を統制することだったが、これによりエルドアンはロシア、イラン、シリアに軍隊を置くためだけに、これらの政府と様々な協定を結び、折り合いを付けなければいけなくなった。

エルドアンは現在トルコに避難している100万人以上のシリア人を移動するという危険な計画を進めると発表し、さらに状況を複雑にさせた。これらの難民はクルド人勢力が囲む地域に強制的に移動させられる。つまり、クルド人分離主義組織からの攻撃からトルコを守る盾として利用されるのだ。

エルドアンは難民受け入れのため、10か所のシリア人地区と140の村を割り当てる計画を発表したが、多くの難民は危険な生活環境に移ることを拒否している。トルコ軍はアフガニスタンにも進出しており、米軍とともに2001年の侵攻に加勢し、現在もタリバンと戦っている。

アフガニスタンからリビアまでに広がる軍事展開は、トルコを本当の地域大国にしているのだろうか。この動きは権力を欲する個人的な動機による可能性が高く、最終的にはエルドアンの失脚もしくは彼の政権に対する外国からの資金援助停止という結末となる可能性が高い。

実に、エルドアンはこれまでにもオスマン帝国の歴史を誇りとしてきており、オスマン帝国の君主に関する映画に資金を出し、人気テレビドラマ「The Ertugrul Resurrection」の俳優らとともに旅行したり、撮影会に出席したり、また地域そしてイスラム圏における自身のリーダーシップという構想を広めたりしている。

イランの多くの政治家やイラクのサダム・フセインなども抱いたこのような野望が、求めた通りに達成されることはない。エルドアン自身、まだ一つも勝利した戦いはなく、国際的な活動においては主にカタールなど外国の資金に依存している。カタールからの資金が切られれば、トルコの軍事活動もおそらく終わるだろう。

トルコは100年前のバルカン戦争以来、大きな戦いをしていないにも関わらず、エルドアンは同国を、明るい経済的展望を持つ平和な国から、軍事力拡大プロジェクトへと導いた。

エルドアンはエジプト、サウジアラビア、リビア、ロシアに非難の矛先を向けるが、彼の本当の相手はイスタンブールとアンカラ、自身の政党内、そして支持者や党首らの中にいる。彼らの多くはすでにエルドアンを見捨て、次期選挙で彼を追放しようと考えている。だが、最も深刻な敵は、エルドアンの個人的な決断が招いたリラの大暴落と経済の衰退で財産をほとんど失ったトルコ国民だ。

アブドゥルラハマン・アル-ラシードは、Al Arabiyaニュースチャンネルのゼネラルマネージャー、Asharq Al-Awsat紙編集長を務めたことのアルベテランコラムニスト。ツイッター: @aalrashed

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