Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

見上げるな・・・軍拡競争は宇宙へ

ボーイングのCST-100スターライナー宇宙船を搭載したユナイテッドローンチアライアンスアトラスVロケットが、フロリダのケープカナベラル空軍基地のスペースローンチコンプレックス41から打ち上げられる。2019年12月20日金曜日(AFP)
ボーイングのCST-100スターライナー宇宙船を搭載したユナイテッドローンチアライアンスアトラスVロケットが、フロリダのケープカナベラル空軍基地のスペースローンチコンプレックス41から打ち上げられる。2019年12月20日金曜日(AFP)
Short Url:
29 Dec 2019 06:12:38 GMT9
29 Dec 2019 06:12:38 GMT9

米軍の「6番目の独立軍」が最初に提案されたとき、それは、不祥事に見舞われ追い詰められたホワイトハウスから注意をそらすために放たれたものとして酷評された。トランプ大統領は今月、空軍の下で独立した軍となる宇宙軍を創設する国防権限法案に署名し公にした。

従来の考えは常に、科学的な調査、探究、発見の領域に宇宙を委ねてきた。しかし、これは、ソビエト連邦が1957年にスプートニクを軌道に送り込まなければ、米国の宇宙計画がなかったという歴史的事実を無視することになる。

それに応じて米国は、衛星が軍事および国家安全保障の優先事項を果たすための要となる、宇宙での数十年にわたるアメリカ支配の基礎を築き始めた。その結果、宇宙は常に汚染されてきた。宇宙は事実、発見の最後の未開拓地あるが、ただ軍事的優位性を示す手段なだけである。

確かに、宇宙計画は、通信の促進から数多くの躍進をもたらした最先端の研究まで、多くの利益を生み出した。地球軌道、月、そして最終的には火星への有人ミッションを持つという国際的名声もある。現在、80か国以上で何らかの宇宙計画が実施されている。

世界中の何百ものスタートアップ企業も、新しい打ち上げ機能、小型/マイクロ衛星のメガコンステレーションによる新しいサービス、および宇宙資産から収集したデータからの革新的分析を提供しようとしている。

理想的な世界では、軍から商業へのそうした移行は歓迎されるだろう。宇宙計画は費用が掛かり、リスクが発生しやすい。月の接近と過去の有人ミッションの成功にもかかわらず、回帰は緊迫していない。

しかし、宇宙を支配し、それを戦場として再分類するというトランプ政権の野心は、その進歩を覆すだろう。 1992年のプロジェクト921の立ち上げ以来、中国が宇宙のマイルストーンを積極的に追求していることに加えて、トランプの宇宙軍は、民間の商業的利益に比例した宇宙での軍事的占有面積の減少とはまるで対照的である。さらに悪いことには、冷戦時代の核備蓄よりもはるかに大きな規模で軍拡競争をさらに拡大させる。

これは特に、2007年に四川省から発射された弾道ミサイルが800 km上空の中国の気象衛星に向かって飛んでいくのを目撃した、シャイアン・マウンテン空軍基地の高級将校とアナリストにとって必然だった。国が所有する宇宙資産を破壊することは珍しいことではないが、この特別な打ち上げにより、時速18,000キロメートルで移動するデブリのベルトが生まれ、所有者または登録国に関係なく、地球低軌道衛星を破壊することができる。

言い換えれば、それは中国やロシアなどの国が精密な宇宙ハードウェアを簡単に標的にし、軌道を荒らし、1967年の宇宙条約で成文化された処分する権利を盾にすることである。専門家は、これを新設された米国宇宙軍が防御することを望んでいるが、問題がある。

議会はまた、国防総省が宇宙条約で想定されている紛争のないグローバル・コモンズに武器を配置することを伴う宇宙ベースのミサイル防衛システムの開発を要求している。こうした要求は、これが通常の地政学的および地理経済的争いとは異なり、宇宙を軍事化する単なる競争ではないことを明らかにしている。これは軍拡競争の延長である。

ロシアには、原子力で武装した無人の水中ドローンであるポセイドンなどの新しい戦略兵器を保有する。ブレヴェスニクの原子力武装巡航ミサイルの射程距離は無限である。ドローンに対する防御のためのレーザー兵器、そして空中発射弾道ミサイルと強化された極超音速能力を持つ。中国は10月の70周年記念式典で同様の致死能力を示した。

朝鮮半島では、平壌の長距離弾道ミサイル計画が以前考えられていたよりも進んでいると、専門家は警告する。中東では、イランはその転覆に対する影響をほとんど受けておらず、核能力ミサイル開発を開始して、独自の核抑止力を生み出した。中東および南ヨーロッパ全域のターゲットに到達できる先進の固体燃料多段式弾道ミサイルの研究が継続されている。

テヘランの従来兵器のいくつかは、フーシの民兵のもとに流れ、イエメンの紛争を悪化させ、湾岸の重要な石油インフラと海運業を脅かしている。サウジアラビアは、アメリカの誘導ミサイルの共同開発と製造に署名した。ヨーロッパでは、フランス大統領が、ロシアの脅威の高まりに対抗するためだけに、アメリカの不在に悩まされているNATOとは別に、欧州の集団防衛軍の構想を浮かび上がらせた。

つまり、世界は見慣れた場所に戻っている。将来の武力戦争に備えた不必要で費用のかかる武器の開発である。現在ところ、「相互確証破壊」原理は核兵器の使用を抑止している。

ハフェド・アル=グウェル

しかし、国家は気まぐれに、ますます複雑化する戦争兵器を開発したり、突然新しい軍を創設するために数十億ドルを確保したりすることはない。彼らの創作は使用を正当化する—戦争は単にそうする機会にすぎない。

ハフェド・アル=グウェルはハフェド・アル=グウェルは、ジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院の外交政策研究所で外部シニアフェローを務める傍ら、国際的な経済コンサルタント会社の「マックスウェル・スタンプ」と地政学的リスクコンサルティング・調査会社「オックスフォード・アナリティカ」でシニアアドバイザーを務めており、ワシントンDCの「ストラテジック・アドバイザリー・ソリューションズ・インターナショナル・グループ」のメンバーで、「世界銀行グループ」理事会の元顧問である。Twitter: @HafedAlGhwell

 

特に人気
オススメ

return to top