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イランは報復として核を保有する恐れがある

イランのムハンマド・ジャヴァド・ザリフ外相。(ロイター)
イランのムハンマド・ジャヴァド・ザリフ外相。(ロイター)
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30 Jan 2020 08:01:52 GMT9

トランプ米大統領は、「No thanks(いや、結構だ)」という言葉をツイッターに載せ、イランのムハンマド・ジャヴァド・ザリフ外相の最近の提案に返事をした。ザリフ外相は先週、ドイツのデア・シュピーゲル 紙とのインタビューで、イランは米国がイランへの制裁を解除すれば対話を再開する用意があると述べていた。同氏は、交渉の場を去ったのはイランではなく米国だと付け加えた。しかし、ザリフ外相のアプローチは少し奇妙だ。これはイランの以前の提案でもあり、米国はこれを拒否した。米国の立場の変化を期待していたのか、それとも単に注意をそらすためのものだったのだろうか。

背後にあるさまざまな要素を関連付けて捉えるべきだ。カセム・ソレイマニ司令官が狙われて殺害された後、イランは目立たないようにしている。最高指導者のアリ・ハメネイ師がトランプ氏を「ピエロ」と侮辱した例を除き、イランは好戦的な話法をトーンダウンしている。このような静けさは、アラブ蜂起が始まって以来、自国の工作員が地域全体に大混乱を引き起こしているイランにとっては異例のことだ。日曜のバグダッドの米国大使館へのロケット攻撃は、重大な負傷者を出すことはなかった。イランはまるで米国を挑発したくないかのようだ。抑え込められたのか。ソレイマニ司令官は不可欠な存在であり、彼の役割は代わりがきかないものだったので、これは終わりなのだろうか。この地域におけるイランの役割は徐々に縮小していくのだろうか。これは多くの人の希望的観測だが、そうではないかもしれない。イランは報復の準備をしているかもしれない。ハッサン・ナスララ師が殺害されたソレイマニ司令官への弔辞で述べたように、新たな「時代」を準備しているのかもしれない。

注目すべきは、イランが、現在、2015年の核合意以前よりも多くのウランを濃縮していると述べている点である。11月初め、イランはウラン濃縮量を10倍に増やしたと発表していたが、ソレイマニ司令官の殺害により、取引条件からの離脱が早まった。

イラン側が比較的静かなのは、敗北を認めたと理解すべきではない。

ダニア・コレイラト・ハティブ博士

イラン側が比較的静かなのは、敗北を認めたからだと理解すべきではない。米国は、イランに最大の経済的圧力をかけるという政策について、かつてないほど強硬なようであり、イランの地域活動の主要な立案者がいなくなったいま、勇気づけられていると感じている。しかし、イランには目を光らせなければならない。イランは準備をしている可能性が高いが、何のために準備しているのだろうか。ナスララ師は、米軍をこの地域から追放すると約束した。イランは外相を通じて、交渉に対し前向きなシグナルを送っているのだろうか。それともより強力な報復の準備をしているのだろうか。イランがソレイマニ司令官の暗殺の報復として2つの軍事基地を爆撃した際、事前に攻撃の詳細がイラク側に伝えられ、イラクがその情報を米国側に伝えたと広く報じられている。イランは、米国を報復に駆り立てるような死傷者を出すことは避けたかった。これは仕組まれた報復、つまり茶番劇だとされたが、注意をそらすためのものだった可能性もある。ザリフ外相は報復が完了したと発表したが、イランは真の報復の準備をしているだけかもしれない。

1つの可能性としては、イランが米国との交渉で有利な立場を得るために核を所有することを計画していることだ。その好例が北朝鮮だ。米国が北朝鮮から具体的な譲歩を得ることができなかったのは、北朝鮮がすでに核爆弾を保有しており、そのため手が出せなかったからである。今日、核を持ったイランに爆弾攻撃を行うということは、1980年代にイスラエルがイラクのオシラクを攻撃したこととは異なる。また、イランの行動の傾向として、一方の面で譲歩すれば、もう一方の面で補うということがある。それは、自分の信条を放棄しているか、弱い立場にあるかのように見えないようにするためである。

イランの地域作戦を計画する人物がいなくなり、代わりのイスマイル・ガアニ新司令官は同等の力量がないため、イランはその立場を強化するために核計画を利用するかもしれない。ガアニ新司令官にはソレイマニ前司令官のような経験もコネもない。報道によると、ガアニ新司令官はアラビア語を話さず、これまで関与した経験があるのはアフガニスタンのみで、他の領域での経験はない。ガアニ新司令官の任務はますます困難になっている。イラクとレバノンの国民は、イランと同盟を結んでいる自国政府に抗議している。ベイルートで発足したばかりの親イラン内閣は、国民の広範な拒否に直面しているが、国際社会はこれに対処することに消極的だ。発足時にすでに死んでいると判断されている。

代理国や同盟国を通じたイランの影響力が揺らいでいることから、核開発は十分な補償となる可能性がある。これは米国に圧力をかける最善の方法かもしれないし、イランが、自国には手を出せない状態を維持しつつ、ソレイマニ司令官の死に対する報復を行うことさえ可能にするかもしれない。

ダニア・コレイラト・ハティブ博士はロビー活動を中心としたアメリカ-アラブ関係の専門家である。エクセター大学で政治学博士号を取得。ベイルート・アメリカン大学のイッサム・ファレス公共政策・国際情勢研究所と提携して研究を行う研究者である。

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