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シリアでのイランの存在は同盟国には重荷

ダマスカスを標的としたイスラエルのミサイルとシリア国営メディアが報じた攻撃に対抗する、シリア軍の対空砲火。 (ファイル/ AFP)
ダマスカスを標的としたイスラエルのミサイルとシリア国営メディアが報じた攻撃に対抗する、シリア軍の対空砲火。 (ファイル/ AFP)
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20 Feb 2020 02:02:47 GMT9

もしイスラエルがシリア内のイラン軍拠点に対する爆撃を続ければ、最終的にはイランは撤退し、この弱く荒廃した国に対する擬似占領状態を終わらせざるを得なくなるだろう。イラン軍と民兵組織はイスラエルの攻撃に反撃を見せておらず、イランの重要な同盟国であるロシアからの反応は、メディアを通した不満の表明にとどまっている。ロシア政府は、事態の悪化はダマスカスとその周辺の民間人を危険にさらすものであり、イスラエルの攻撃でイランの民間航空機が危うく撃墜されるケースもあった、と批判した。

「予防的措置から、イランのシリアからの撤退を保証する唯一の手段、攻撃的措置へと我々は移行します」と、イスラエルのナフタリ・ベネット新国防大臣は語った。 「我々は彼ら(イラン)に対し、我々はシリアをイランにとってのベトナムに変えるだろう、イラン兵が一人残らずシリアの領土を去るまで流血は続くだろう、という警告を与えているのです。」

今起きていることは、通常の意味での戦争ではなく、質を重視した空爆と、ターゲットの継続的な追跡だ。

イスラエルによる攻撃の激化は、シリアにおける米国の攻撃、シリアの幾つかの抵抗組織の再武装、また特にシリア政権の所有するヘリコプター2機がミサイルにより撃墜されたこと、といった要素と切り離して考えることは出来ない。

シリア政府もロシアも、イランを同盟国として守ろうとしているようには見えない。

アブドルラハマーン・アル・ラーシド

米国とイスラエルが行っている作戦は、イランをシリアから追い出しイラクでは抑え込むための、両国の共同行動の一部であると思われる。イラン革命防衛隊・ゴドス部隊の司令官であり、シリアでのイラン軍事作戦の指揮を執っていたガーセム・ソレイマーニー将軍の暗殺は、こうした、イランをシリアから追い出そうとする流れの中で実行された。

しかしながら、このストーリーにはいくつか分からないところがある。シリア政府の動きはその兆候さえ見られず、トルコとの北部国境での衝突がそれと関係しているのどうかもわからない。

シリア政府もロシアも、イランを同盟国として守ろうとしているようには見えない。イランは孤立し、単独で戦う状況になっている。トルコ国境付近での戦闘は、複数の課題(政権の最終的な危機解決策、難民、武装組織、トルコ人とイラン人の追放など)に関するシリアの状況の最終プロセスの一部分だ。一方、この地域の多くの国々、また米国とイスラエルにとって、最も重要な部分は、イランを追い出すことである。イランがさらなる流血なしにシリアから撤退することはないだろうが、イランの撤退はシリア危機の最終的な解決策を見つけるプロセスを促進するだろう。

シリアとロシアからすれば、イランの役目は終わっている ― 戦争に資金を提供し、アサド政権を完全崩壊から守るために戦ってはきたが、イランは今では同盟国の重荷になってしまった。シリアにおいてのロシアとイランの存在意義の違いは、ロシアはシリア政府を地域での自らの存在の一部にしたがっているのに対して、イランは、地域内の影響力をめぐる対立の中、イラクにおけるイランの存在確保にシリアを利用することに加えて、シリアを新たなレバノン ― 衛星国家またイスラエルに対抗するための軍用プラットフォーム ― に変えるというより大きな目的を持っていることだ。

イランがシリアから撤退すれば、それは非常に重要な政治的かつ軍事的な成果になるだろう。イラクとレバノン両国へのイランの影響も急速に弱まるからだ。撤退は戦略的な目標だが、実現には紆余曲折が予想される。

アブドルラハマーン・アル・ラーシドはベテランのコラムニスト。国際ニュース放送局・アル・アラビーヤの元ゼネラルマネージャー、アッシャルクル・アウサト紙の元編集主幹を歴任。 ツイッター@aalrashed

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