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アブドゥルアジズ王子、循環型低酸素経済への道を語る

サウジアラビアエネルギー相アブドゥルアジズ・ビン・サルマン王子、リヤドで開催された「未来投資イニシアチブ」でメディアを前に語る。 (ロイター)
サウジアラビアエネルギー相アブドゥルアジズ・ビン・サルマン王子、リヤドで開催された「未来投資イニシアチブ」でメディアを前に語る。 (ロイター)
29 Oct 2019 10:10:09 GMT9

「未来投資イニシアチブ(FII)」におけるサウジアラビアエネルギー相アブドゥルアジズ・ビン・サルマン王子のスピーチはこの会議の重要な瞬間の一つだった。大臣は気候変動により世界が直面している難題、それに対する取り組みにおけるサウジの役割について率直に語り、さらにサウジが来年のG20開催にあたって何を重要な柱としていくのかについても語った。

このスピーチで大臣は、サステナビリティと経済成長のバランスを見出すためにサウジが取るべき道について語った。これは経済的繁栄を確保しつつ気候変動に関する野心的目標も同時に達成しようとする場合に全世界が直面する難問である。

サウジアラビアは中東をリードする経済大国であり、地域を代表してG20に参加する2か国のうちの一つである。同時にサウジはOPECの古くからのメンバーであり、現在1日当たりおよそ1000万バレルの石油を生産している。その石油埋蔵量は2億6700万バレル、天然ガス埋蔵量は9兆㎥に達する。

大臣はスピーチで循環型低酸素経済に関する自らの見解を述べた。循環型低酸素経済とは炭素サイクルのバランス構築を目指す閉鎖円環システムのことである。この枠組みが目標とするのは温室効果ガスの減少、再利用、除去である。

アブドゥルアジズ王子は、化石燃料は今も世界経済の継続的維持に重要な役割を果たしているとの認識を示しつつ、グローバルなエネルギーミックスにおいては再生可能資源の果たすべき役割が急速に拡大していると述べた。彼は他の多くの国と同様サウジも経済、環境両面の難題に対処するため国のエネルギーミックスを見直しているところであると語った。

大臣はこのような考え方はサウジにとって目新しいものではなく、サウジはすでに1980年代に天然ガスの焼却処分を止め、発電所や海水淡水化プラントでの天然ガス利用を進めてきたと語った。天然ガスはサウジにおける石油化学産業の確立においても不可欠な役割を果たした。大臣は天然ガスの有効利用によって減った二酸化炭素排出量はすでに合計2.8ギガトンに達すると述べた。

アブドゥルアジズ王子は循環型低炭素経済の実現における研究と開発の重要性を強調した。王子はまたエネルギー有効利用政策や省エネルギー政策の果たす役割を強調し、この分野でのサウジの近年の実績を多数挙げた。特に目覚ましい実績とされたのはエアコンが排出する二酸化炭素が57%削減されたことである。将来的なことで言えば、王子はサウジは2030年までに国内のエネルギー消費量を石油換算で200万bpd (バレル/日) 減らせるだろうと予測している。

このスピーチは、世界的気候変動に関する議論にサウジが大きな役割を果たす立場にあることを示し、さらにサウジが開催国となる来年のG20での建設的議論のベースを設定したという意味で重要なものであった。

この問題についての議論へのエネルギー生産国の参加は絶対に必要である。この問題は現在、相互的な対話がほとんどない2つの世界で別々に議論されている。一方には気候変動対策を擁護する人々やグループがいる。熱心さの度合いは様々であるが、各種会議や議論の場が持たれたり世界規模の抗議運動 (例えば気候変動をめぐる学生生徒たちの学校ストライキやエクスティンクション・レベリオンなど) が展開されたりしている。若者たちは特に気候変動活動家グレタ・トゥーンベリさんによって活気づいている。地球を引き継ぐのは若者なのだから彼らの行動には一理ある。気候変動をめぐる活動は世界規模の重要な運動となり、多くの政治家もこれに関心を寄せている。多くの経済協力組織や先進国で選挙に勝ちたい者にとって環境問題における実績は重要なポイントになっている。

そしてもう一方には雇用を生み出す産業界があり、こちらの重要課題は経済成長である。こちら側の人々はリアリストであり、実現不可能な理想は追わない。

これら2つの立場での議論は、相互的な対話がほとんどない別々の泡の中で行われている。片方ではサステナブルファイナンスについて議論されている。サステナブルファイナンスはサステナビリティと投資家の収益性についての関心を結び付けることによってそれ自体の力で急速にメジャーなアセットクラスを形成するようになりつつある。もし私たちが地球の福祉と経済的繁栄を同時に追求したいのなら、気候変動分野での重要目標達成を目指すグループと産業に仕える人々のグループの間の相互的対話の推進は絶対に必要である。

G20はこのような協議や対話を進めるのに良い場であり、循環型低炭素経済のコンセプトはG20に向かっての旅を始めるのに良い枠組みである。

コーネリア・マイヤーはビジネスコンサルタント、マクロ経済学者、エネルギーの専門家である。 ツイッター: @MeyerResources

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